事業デザイン(2):運営事業に重点を置いたコンソーシアムの組成

 日本総合研究所として筆者が基本計画の策定から事業者選定のアドバイザリーまでを務めた吉野町緑地周辺整備等PFI事業は、プロポーザル審査の結果、PFI事業者として、大手デベロッパーのスターツコーポレーションを代表企業とするSPC(特別目的会社)、弘前芸術創造が選定されました。SPCには、耐震改修工事は大林組東北支店、設計にはNTTファシリティーズと国内大手企業が参加するとともに、地元・弘前市の企業として南建設、西村組が参加し、運営企業には南條氏が代表を務めるアートディレクション事務所であるN&A(エヌ・アンド・エー)が名を連ねています。また、SPCには前森美術館館長である南條史生氏が総合アドバイザー、新進気鋭の建築家・田根剛氏がデザイン監修として参加しています。まさに、地域の内外、個と組織の力を組み合わせ、この事業のために組成したSPCといえるでしょう。

■弘前芸術創造株式会社 構成企業

[設計・監理]

  • スターツCAM、Atelier Tsuyoshi Tane Architects、NTTファシリティーズ、大林組、森村設計
[施工]
  • スターツCAM、大林組、南建設、西村組
[維持管理]
  • スターツファシリティーサービス、NTTファシリティーズ、NTTファシリティーズ東北
[運営]
  • エヌ・アンド・エー
[事業マネジメント]
  • スターツアセットマネジメント、スターツ総合研究所

(出所:スターツコーポレーション)

 2020年2月に「弘前れんが倉庫美術館」を竣工させ、この事業はスタート地点に立ちました。地域に愛され、地域の景観を形作ってきたれんが倉庫は、美術館として新たな役割を与えられ、これからの弘前の文化・芸術創造・発信の拠点としての歴史を刻むこととなります。

 同施設の運営を担う弘前芸術創造は、そのミッションとして「1. 建築の記憶の継承と、新たな空間体験の創出」「2.地域の新たな可能性の開発と歴史の再生」「3. 異なる価値観の共有と開かれた感性の育成」の3つを掲げています。これはまさに、2018年3月に文化庁が策定した第一期文化芸術推進計画で示されている「文化芸術により生み出される本質的価値及び社会的・経済的価値を文化芸術の継承,発展及び創造に『活用・好循環させる』こと」を弘前という地域において、実現することにもつながります。

■弘前れんが倉庫美術館 ミッション

弘前れんが倉庫美術館は、地域のクリエイティブ・ハブ(文化創造の拠点)となるために、活動の基盤として3つのミッション(使命)を設定します。

1. 建築の記憶の継承と、新たな空間体験の創出

  • 近代産業遺産である煉瓦倉庫の記憶を、未来へ継承
  • 建築と共振し人々の創造性を喚起する作品を通じて、新たな空間体験を創出

2. 地域の新たな可能性の開発と歴史の再生

  • 弘前および東北地域との対話を促し、その自然、文化、歴史を新たな視点から再生

3. 異なる価値観の共有と開かれた感性の育成

  • 先鋭的な技術や手法を用いた多様な表現活動を紹介
  • 異なる文化や世界との出会いや交流を生み出し、人々の開かれた感性を育む

(出所:弘前芸術創造)