事業デザイン(1):経緯~スキームの概要・解体負担の課題を解決

 大津びわこ競輪場は、戦後の競輪人気を受け、近江神宮外苑公園において、1950年に整備されたものです。故高松宮宣仁親王から御下賜された高松宮記念杯競輪等の開催場として、その収益金が大津市の教育や福祉、都市基盤の整備等のまちづくりに寄与するとともに、戦後の大津市の人口増、都市の成長に大きく貢献してきました。

 しかしながら、バブル景気崩壊後の長引く景気の低迷に加え、余暇の多様化、ファン層の高齢化等、競輪事業を取り巻く社会環境が悪化しました。車券売上は1997年度をピークに年々減少を続け、2004年度以降においては、赤字決算が常態化しました。その後、経営改善が困難と判断し、2010年度末をもって競輪事業を廃止しました。

 競輪事業廃止後、大津市としては、すぐにでも残存する競輪施設を解体撤去したいところでしたが、大津市の財政状況が厳しい中、施設の解体撤去には多額の経費を要する可能性があったことから、施設の解体撤去に着手できず、ずっと野ざらし状態となっていました。

 こういった状況の一方で、大津市では事態の解決に向け検討を重ね続け、その結果として、民間事業者の資金とノウハウを活用する方針を打ち出しました。約20億円とも言われていた多額にのぼる解体撤去費を精査すると同時に、この解体撤去費を負担してでも競輪場跡地の利活用をしたい民間事業者の存在を調査しました。競輪場跡地が都市公園として計画決定されている土地であり整備可能な施設規模や施設種別が限られることから、当初は調査が難航したものの、数次・幅広く意見を募った結果、土地賃料の負担能力が高い商業系を始めとした事業者については、跡地を利活用できる可能性があることが明らかとなりました。

 以上の調査を踏まえ、スキームを以下のとおりとしました。

① 競輪場跡地の借り手(代表企業)の資金により解体撤去するスキームとしました。そのためには、旧競輪場施設の所有権を市から代表企業に移転する必要があったため、施設を市から代表企業に対し無償譲渡しました。

事業スキーム
事業スキーム
(出所:日本総合研究所)
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② 解体撤去業務については、業務ボリュームが大きく、技術的難易度が高かったため、代表企業とともに、代表企業から解体撤去工事を請け負う企業(解体企業)の参画を求めたうえで、一定の実績要件を課しました。

応募資格
ア 代表企業
 代表企業は、平成18年度以降において、以下のいずれかの実績を有すること
  • a 公有地に対して定期借地権又は普通借地権を設定のうえ事業を実施した実績
  • b 公有地を購入のうえ事業を実施した実績
  • c 都市計画法第29条第1項に基づく許可を得て行った開発事業を実施した実績
イ 解体企業
 解体企業は、平成18年度以降において、延床面積1,500m2以上のRC造の施設に関する解体工事実績を有すること。
出所:大津びわこ競輪場跡地公募提案型貸付事業募集要項(大津市)

③ 多額と想定された解体撤去費を民間事業者負担とした中、民間事業者の採算性を確保するため、借地料については下限を、借地期間については上限を設定せず、民間事業者の自由提案としました。
④ 自由提案とはいえ、借地料はより高く、借地期間は短いことが望まれます。民間事業者の採算性に配慮しつつ、これらに対応するため、借地料と借地期間は、一定の算式のもと、その大小に応じて、加点評価することとしました。

定期借地料の評価方法
得点=提案価格(m2単価)÷全応募者中の最高提案価格(m2単価)×10点
定期借地期間の評価方法
得点=全応募者中の最短定期借地期間÷提案定期借地期間×10点
出所:大津びわこ競輪場跡地公募提案型貸付事業事業者選定基準(大津市)

 野ざらしの旧競輪場施設を確実に解体するためには、事業性を確保する必要がありました。そのため、民間事業者の採算性の確保と、公益性の最適なバランスを見極めつつ、スキームを設計することが求められました。