事業デザイン(2):魅力ある運営事業を導出するための事業者選定基準

 上述のとおり、財政上の課題解決が先行されていましたが、旧競輪場施設が都市計画決定された「近江神宮外苑公園」に所在すること、大津市の将来を考える上で重要な立地と広大な面積を有していること、長年地域の住民に迷惑をかける側面があった一方で地域の憩いの場ともなっていたことなどから、事業を進めるに当たり、まちづくりの視点も重要な課題でした。

 市場調査を踏まえると、施設種別を始めとした建築面の条件については、民間事業者の自由を認める必要があった一方で、施設整備後の施設運営面については、比較的柔軟な対応が可能であるとの感触を得ていました。例えば、周辺住民を始めとした地域住民との協調や、計画地が近江神宮外苑公園であるとともに土地の利活用が都市計画法上の開発行為に該当することから、計画地の一部を公園として活用することなどについては、民間事業者の理解を得られていました。

 そのため、旧競輪場施設の解体撤去費を民間事業者負担とする財政上の要請を事業条件とすることに加え、まちづくりの観点から、一定の条件を付すとともに、より望ましい提案を加点することで、地域に貢献する事業提案を導出することを目指しました。

① 計画地を、民間施設が整備される「利活用ゾーン」と、民間事業者の費用負担により都市公園として整備されたのち市に寄付される「提供ゾーン」に区分することを求めました。
② 「提供ゾーン」については、地域の要望を踏まえ、最低8,000m2整備することを求めたうえで、さらなる面積を整備する提案があった場合、加点評価することとしました。

提供ゾーン面積の評価方法
得点=提案面積÷全応募者中の最高提案面積×10点
出所:大津びわこ競輪場跡地公募提案型貸付事業事業者選定基準(大津市)

③ 公園を核としたまちづくり施設となることを導出するため、提供ゾーンについて、「市民の交流促進」に寄与する施設であることを求めることに加え、「地域との一体性」「地域のイメージアップ向上」を運営面において求めました。
④ このほか、旧競輪場がかつて地域の防災上重要な役割を果たしていたことから「防災機能の確保」を、まちづくり施設として地域へ経済効果を波及させることが望ましいことから「地域経済への寄与」についても、提案を求めました。

主な審査の視点
配点
市民の交流促進を考慮した整備概要
  • 現状の競輪場跡地の利用状況を踏まえた整備内容となっているか。
  • 市民の交流促進の場に資する整備内容となっているか。
10/130
運営における地域との一体性の確保
  • 運営期間において、周辺地域との一体性・連携に資するイベント等の取組が実施されているか。
5/130
地域のイメージアップ向上への寄与
  • 民間施設が周辺地域におけるにぎわい創出、活性化やイメージアップに寄与する提案となっているか。
10/130
防災機能の確保
  • 利活用前の旧競輪場跡地が有していた避難場所としての機能を理解したうえで、避難所としての機能確保等、防災機能確保に対して積極的な提案がなされているか。
  • 上記のほか、災害時の対応について、独自性が高く具体性をもった提案があるか。
10/130
地域経済への寄与
  • 地元雇用、地元企業の活用等、地域貢献に対する基本的な姿勢が明確になっているか。
  • 想定する地元雇用の人数、地元企業の活用数、地元への経済効果等が具体的に示されているとともに、地域貢献に資する提案となっているか。
10/130
出所:大津びわこ競輪場跡地公募提案型貸付事業事業者選定基準(大津市)

 大津びわこ競輪場跡地公募提案型貸付事業は、行政課題としては、旧競輪場施設の解体撤去と公園整備に対する重要度が高いものでしたが、全体の約4割超をまちづくりに関連する評価項目としました。

 選定された大和リースは、「公園の中の商業施設」を事業コンセプトに、公園を商業施設「ブランチ大津京」運営のための戦略的コンテンツと位置付けています。駐車場を敷地外縁部に配置し、敷地中央には店舗と公園を近接・配置することで、市民の交流促進に寄与する施設運営が実現しています。

当該地の空撮写真。広大な敷地に公園と商業施設が整備された。敷地面積(全体):6万4793.27m2(うちブランチ大津京:4万9602.16m2/うち近江神宮外苑公園:1万5191.11m2/延べ床面積(ブランチ大津京):2万5450m2・全9棟合計)(出所:大和リース)
当該地の空撮写真。広大な敷地に公園と商業施設が整備された。敷地面積(全体):6万4793.27m2(うちブランチ大津京:4万9602.16m2/うち近江神宮外苑公園:1万5191.11m2/延べ床面積(ブランチ大津京):2万5450m2・全9棟合計)(出所:大和リース)
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 また、バスケットボールの「3 on 3」や、アウトドアフィットネスといった地域スポーツの開催、ブランチ大津京内に拠点を置くNPO法人、まちづくりスポット大津をハブとした地域との交流などにより、地域との一体性の醸成や地域のイメージアップに貢献しています。加えて、母親が子どものそばで働ける託児機能付きオフィス「ママスクエア」などにより、地域の雇用にも貢献しています。

 公園の指定管理者については、施設オープンの約半年前、事業者募集が行われ、こちらも大和リースが選定されています。結果的にではありますが、大和リースが、商業施設を整備・運営することに加え、都市公園についても整備・運営することとなり、商業施設と都市公園の一体運営が実現しました。