公共施設としての観光施設とは?

 先に例示したように、公共施設としての観光施設には様々な施設タイプがありますが、共通して以下の要素を持っています。

  • 集客目的である。
  • 想定するターゲット層がある。
  • 有料サービスを提供する施設であり、売上が施設運営に大きく影響する。
  • 飲食・物販を伴うことが多い。

 同じように、観光施設には民設民営の民間施設もあり、施設数や施設の種別は公共施設としての観光施設よりもかなり多いと言えるでしょう。これら民間施設としての観光施設も上記の要素を持っていることから、これらの要素だけを見ると、民間施設は公共施設と何ら変わりないように見受けられます。しかしながら、各要素が持つミッションを両者で比較すると、全く性質の異なる施設であることが分かります。

■公共施設としての観光施設と民設民営の観光施設の比較
比較要素 公共施設としての観光施設 民間施設としての観光施設
ターゲット層 できるだけ幅広い層の住民、観光客 明確化された一部の客層
価格設定 住民も利用しやすい低廉な価格となる傾向がある 投資回収も含め必要な利益を得られる価格
品揃え/
取り扱いサービス
地域の特産品や地域情報の発信等、当該地域の観光振興を目的とした内容を提供 マーケティング結果に基づいた顧客が求める商品、サービスを提供
立地 公有地または行政が利用可能な土地(民有地の借地等) マーケティング結果に基づいた集客が見込める立地
まちづくり活動 積極的に実施 顧客ロイヤリティを高めるために、一定の利益が確保できる前提で実施することもあり得る
事業の撤退 業績が悪化しても住民・議会の理解が得られない限りは困難 事業が成り立たなくなった時点で撤退

 これらの比較から、両者はどちらも観光客をターゲットとした集客施設でありながら、その実は施設の管理運営/経営に必要なノウハウが大きく異なることが見て取れます。つまり、公共施設としての観光施設を管理運営するためには、行政の意向を確実に踏まえ、地域のため・住民のためのサービスを提供することが必須となります。また、低廉な価格帯や十分な集客に苦慮するような立地などにより、施設を独立採算で管理運営することが困難なケースも少なくありません。こうしたケースの施設については行政が当該施設を運営する事業者に委託費(指定管理料、サービス購入費など)を支払うこととなります(施設の売上だけでは赤字となるため、不足する管理運営費を行政が補填)。

 一方で、民間施設としての観光施設については、施設整備に必要な投資回収も含めた完全独立採算で施設を経営することが絶対条件となります。そのために、施設のコンセプトを設定する際に十分なマーケティング調査を実施した上で、それに基づいたターゲット層を明確に設定し、立地条件や価格設定などを綿密に練り上げます。また、事業の撤退基準が明確に設定され、それに達した場合は撤退することが大半となります。

 このように、両者は施設の管理運営/経営に必要なノウハウが異なることから、両者で活躍するプレーヤーも異なっているのが現状です。公共施設としての観光施設においては、行政が一定のコスト負担をしたうえで、公共施設の管理運営を専門・得意とする事業者が管理運営しているケースが多いと言えます。しかしながら昨今では、多くの地方自治体が人口減少等から財政難を抱えているため、行政負担により公共施設としての観光施設の管理運営を継続することが困難となってきています。また、PPP事業が普及・発展してきたことから、PPP事業を新たなビジネスチャンスととらえて、民間施設としての観光施設を専門としてきた事業者等が公共施設の管理運営に新規参入してくるケースも増えてきました。公共施設としての観光施設の公共性と事業性のバランスをうまく取りつつ、施設を独立採算、或いはそれに近い内容で経営するためには、極めて高度なノウハウが求められます。

 この両者のバランスの確保を実現させるために、求められる事業条件を調整したり、十分な運営・経営ノウハウを有する事業者の参画を促したりすることこそが、公共施設としての観光施設における「運営重視型PPP」であると言えます。

 そして、民間の力を活用して公共施設としての観光施設を「運営重視型PPP」とするためには、次の3つのポイントがあると考えられます。