ポイント1:構想段階から運営事業者を巻き込む

 本コラムの第1回の中でも述べた通り(「『運営重視型PPP』に求められる3つの条件(2)運営事業者の能力に重点を置く」)、「運営重視型PPP」においては、できるだけ早い段階から観光施設・商業施設の管理運営/経営を専門とする事業者を巻き込むことが重要となります。

 通常、公共施設としての観光施設を創設する際には、施設の基本構想を策定しますが、この基本構想策定業務はコンサルティング会社が担当することが多いのが現状です。基本構想では想定するターゲットや立地、サービス内容の方向性を決定することとなるため、この段階で可能な限り多くの関連事業者から意向や意見、アイデアなどをサウンディングすることが効果的です。この際、利益相反行為の防止の観点から、限られた特定の事業者の意向に偏り過ぎないようにすることに注意が必要です。

 また、あらかじめ立地が確定している事業については、対象地においてトライアル・サウンディング*や実証事業を実施して民間事業者の意見を聞くという方法も考えられます。トライアル・サウンディングや実証事業により、自治体側は対象地における観光事業の事業効果を想定でき、事業者側は対象地における事業ポテンシャルや事業リスクをあらかじめ把握することができます。この際の事業者は公募により選定することが望ましいでしょう。

 ただし、トライアル・サウンディングにおける事業実施期間については、これまでの実施例では検証期間が短く通年の事業検証ができないという課題がありました。当該観光事業におけるオフシーズンとオンシーズンの双方を検証することと、事業効果が発現されるまでの一定期間を確保することを勘案して、できれば1年以上の期間を設けることが望ましいでしょう。


* トライアル・サウンディングとは、利活用を検討している公共施設などで、暫定利用を希望する民間事業者を募集し、一定期間、実際に使用してもらう制度のこと。これにより行政機関は民間事業者の集客力、信用、施設との相性などが確認できる。各地で実施例が増えてきている(関連記事)。また、富山城址公園(富山市)のように、トライアル・サウンディング実施後に、その結果を踏まえた指定管理者の公募につなげて事業者を選定した例もある(このときはトライアルサウンディングに参加した事業者が選定された)。
「新・公民連携最前線」でも、富山城址公園(富山市)のトライアル・サウンディングについて取り上げている
「新・公民連携最前線」でも、富山城址公園(富山市)のトライアル・サウンディングについて取り上げている

ポイント2:立地重視で既存施設も積極的に活用

 公共施設としての観光施設を創設する際、施設の新設に拘ると対象地が公有地か行政が利用可能な用地(民有地の借地など)に限定されます。しかしながら、集客施設の経営は不動産事業であることから、独立採算で施設を経営し、集客・販売・サービス提供に十分な能力のある事業者の参画を促すためには、施設の立地は極めて重要です。そこで、公共施設としての観光施設を新たに設置する際には、立地を重視するために、施設を新設しないで街中や交通アクセスの良い立地にある既存の公共施設や空き家・空き店舗を活用するという方法を検討するべきです。

 近年では、既存施設をリノベーションしておしゃれな集客施設とした施設が人気を博している事例も増えていることからも、既存施設のリノベーションでも十分に集客力と住民満足を得ることは可能です。そのために、まずは立地条件を勘案して、街中や交通アクセスの良い立地、魅力的な観光資源(自然資源や観光地)に近接した立地にある公有財産または空き家・空き店舗等を棚卸しします。その上で、観光施設として好立地にある施設を選定し、改修費用や家賃等の条件から対象地・対象施設を設定することが考えられます。

■既存施設のリノベーションによる公共施設としての観光施設の例(舞鶴赤れんがパーク)
■既存施設のリノベーションによる公共施設としての観光施設の例(舞鶴赤れんがパーク)
■既存施設のリノベーションによる公共施設としての観光施設の例(舞鶴赤れんがパーク)
舞鶴市が明治~大正時代に建造された赤れんが倉庫をリノベーションし、展示施設や観光情報発信・飲食・物販等の観光施設として活用。また、敷地一帯を都市公園(赤れんがパーク)に指定。現在、赤れんがパーク一体の更なる利活用を目指してPark-PFIを活用した事業者を公募を行っており、11月下旬に公募設置等予定者を通知予定だ(写真:舞鶴赤れんがパーク)

ポイント3:行政から委託費を支払うケースではPFSを活用

 地域によっては、どのような方策を講じても独立採算で観光施設を経営することが難しいながらも、地域の活性化のためには観光施設の設置が必要となるケースも十分にあり得ます。こうした場合であっても、当該施設を管理運営する事業者に施設経営の観点から集客や売上に対するインセンティブを持っていただくための方策を講じておくことが重要です。

 その方策の一つとして、委託費(指定管理料/サービス購入費)を支払う条件にPFS(Pay For Success:成果連動型民間委託契約方式)を導入することが考えられます。この場合、事業者からの公共性と事業性のバランスと双方の向上に対するインセンティブを高める仕組みとすることが重要です。成果指標としては、利用者満足度や地域貢献といったアウトカム指標や、利用者数、購入者客単価、売上などのアウトプット指標を設定することになります。これまで国内のPFS事例は健康・福祉分野が中心でしたが、まちづくり分野にも広がりつつあり、観光分野とも相性の良いスキームではないかと思います。

 公共施設としての観光施設は、公共性と事業性の双方を重視する必要がある施設であり、その施設運営・経営は高度なノウハウが必要な施設です。そのことを十分に認識した上で事業デザインや事業化までのプロセスを踏むことで初めて、地域の観光振興とまちづくりの活性化に対して期待するような波及効果を生み出すと言えます。公共施設としての観光施設は、こうした施設づくりを通じて、「運営重視型PPP」へと発展していくことが特に求められる施設であると言えるでしょう。

板垣 晋(いたがき・すすむ)
日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 地域・共創デザイングループ シニアマネジャー
1976年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士取得退学(地域研究修士)。2004年に建設コンサルタント会社に入社し、地方都市の都市計画等の上位計画の策定業務などに従事。その後、スマートシティ関連コンサルティング会社を経て、日本総研に入社。日本総研では、文教施設(美術館、ホール、大学等)や観光施設、都市公園といった集客性の高い公共施設を中心に、PPP事業の構想策定から事業者選定支援まで幅広い案件に従事。近年では、歴史的建造物のリノベーション・利活用事業の支援にも従事。内閣府のPPP/PFI専門家派遣の専門家として複数都市に派遣された他、京都大学公共政策大学院「地域活性化論」の講師として登壇(2019年度、2020年度)。技術士(建設部門/分野:都市及び地方計画)。