「運営重視型PPP」に求められる3つの条件 (3)運営モニタリングこそが重要

 PPP事業では、当該事業の行政担当者がPPP事業を初めて経験することも多く、行政担当者が当該事業の事業化に多大なエネルギーを費やすケースも少なくありません。しかし、公民連携による事業の実現に労力を注ぎ過ぎるあまり、事業化そのものが目的化するというケースもしばしばあります。これでは本末転倒です。本来、公民連携は手段であって目的ではありません。「運営重視型PPP」においても、目的はあくまでも当初に設定された事業目的・政策目的の達成にあります。また、当該事業の事業目的・政策目的の達成は、運営段階において実現されます。

 そのため、行政がこの運営事業をモニタリングすることが極めて重要となります。ここで言うモニタリングとは、要求水準書や提案書に記載された内容の実施の有無をチェックすることだけではありません。限られた予算で事業目的を最大限に達成するために、「行政と事業者が運営期間を通じて知恵を出し合い、必要に応じて契約内容を見直す柔軟性も有しながら、モニタリングを進めていく」という共創型の取り組みを指しています。

 特に今回のコロナ禍のような事態への対応においては、単に対象施設を閉鎖して不可抗力に該当するリスク分担に則して処理をするだけでは不十分です。こうした不測の事態においても、いかにしてサービスを提供し続けるかといった柔軟な議論・対応があって然るべきであり、そのための体制を整えておくべきでしょう。

「運営重視型PPP」の今後の展望

 以上で概説した「運営重視型PPP」を実現していくためには、従前のPPP事業を事業化していくためのフローや力点、関係する事業主体との関わり方などを見直していく必要があると言えます。

運営重視型PPPの導入に向けたチェックリストの一例(資料:日本総合研究所)
運営重視型PPPの導入に向けたチェックリストの一例(資料:日本総合研究所)
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 まずは、「運営重視型PPP」と位置付けるべき、あるいはその可能性がある事業においては、事業のデザイン段階から事業主体となり得る事業者の関係者などが関与していく仕組みを構築していくことが肝要です。加えて、当該事業が事業目的・政策目的の達成に向けて付加価値を最大化するために、設計から運営に至るどのフェーズに力点を置くべきかを見定め、当該フェーズを担う事業者の創意工夫が十分に発揮される事業条件や事業スキームを構築する必要があります。

 そして最後に、運営段階こそ真に重視すべき公民連携であることを、行政と民間事業者の双方が共通認識として持つ必要があります。そうすることで、事業期間中に生じる様々な事象に行政と民間事業者が共創しながら取り組むことができます。「運営重視型PPPは公民共創で進める」という考え方が、一般化されていくことが望ましいと言えます。

 そのためには、先述した本質的な運営モニタリングの実施に加え、運営事業者が事業目的・政策目的の達成に対して積極的に取り組むインセンティブを付与し、そうした運営事業者の創意工夫を正当に評価する仕組みの導入が効果的だと言えます。例えば、独立採算事業におけるプロフィットシェアリングやサービス購入型の事業における成果連動型の報酬支払などです。こうした仕組みを取り入れることで 「運営重視型PPP」はさらに発展していくと言えるのです。

板垣 晋(いたがき・すすむ)
日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門地域・共創デザイングループ マネジャー
1976年生まれ。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科修士取得退学(地域研究修士)。2004年に建設コンサルタント会社に入社し、地方都市の都市計画等の上位計画の策定業務などに従事。その後、スマートシティ関連コンサルティング会社を経て、日本総研に入社。日本総研では、文教施設(美術館、ホール、大学等)や観光施設、都市公園といった集客性の高い公共施設を中心に、PPP事業の構想策定から事業者選定支援まで幅広い案件に従事。近年では、歴史的建造物のリノベーション・利活用事業の支援にも従事。内閣府のPPP/PFI専門家派遣の専門家として複数都市に派遣された他、京都大学公共政策大学院「地域活性化論」の講師として登壇(2019年度、2020年度)。技術士(建設部門/分野:都市及び地方計画)。