4. 愛知県新体育館の「運営重視型PPP」としてのポイント
①体育館としてのビジネスモデルをアリーナのビジネスモデルへ
従前のスタジアム・アリーナのビジネスは「貸館事業」中心でした。それにコンセッションを導入することにより、「貸館事業」に加え「非貸館事業」(VIPルームやプレミアムシートの提供、命名権・スポンサーシップの拡大など)の積極的な取り組みが行われるようになることを前提に、我が国にはまだない先進的なアリーナビジネスモデルとして設定しました。下図のように、非貸館事業を大きく増やすことで運営重視の抜本的なビジネスモデルの改革を促すという考え方です。
このモデルを決めるに際しては、海外(主として欧州)アリーナの収益構造を現地調査して参考としました。具体的には、次のようなステップを踏んで、「貸館」と「非貸館」の売上比率を決めていきました。
ステップ1
コンセッション手法により事業化されたフランスのアコーホテルズ・アリーナ(ベルシー体育館)、アンタレス(ルマン市体育館)、エクス・アン・プロヴァンス・アリーナの収支データを往訪・収集し、収入費目における「貸館事業収入」と「非貸館事業収入(主としてCOI*)」の比率を算出しました。
ステップ2
基本計画段階の収支想定(体育館モデル)に対し、上記の比率(先進的アリーナビジネスモデル)を適用し、目標とする事業収益モデルを設定しました。
上記試算のとおり、年間4億弱の事業収益が生み出されることから、30年間の収益総額は単純計算で120億円程度と想定されます。よって「この収益総額を原資とした運営権対価(コンセッションフィー)を設定したコンセッション手法の採択が十分可能となる」との仮定の下、BTコンセッションという事業手法(詳しくは後述)による事業化に踏み切ったわけです。
また、収支には反映させていませんが、「貸館」も従前の「待ちの姿勢」から、国内外のイベント・プロモーターをSPCに参画させることで、「主体的で攻めの姿勢(積極的なイベント誘致)」に変化し、売り上げ増となると設定しました。