5.おわりに

 本稿では主に愛知県新体育館の事例を紹介しましたが、この事業は愛知県が事業主体となったPFI事業であり、公共事業です。とはいえ性格は事業コンペに限りなく近いことがお分かりかと思います。

 大阪の万博記念公園のアリーナ(関連記事)や神戸港のアリーナ(新港突堤西地区(第2突堤)再開発事業)は事業コンペであり、事業主体は民間となっています。また現在首都圏でもいくつかの民間によるアリーナ整備計画が進みつつあります。

 体育館は公共事業としての性格が強いものですが、アリーナになると民間事業で成立する可能性が出てくるということです。もちろん市場性と複合開発余地が重要な要因となりますので、首都圏や関西圏、中部圏といった大都市圏が中心となると考えられますが、民間事業としてのアリーナは今後も生まれることでしょう。

 では、都市圏部以外の地域でどのようにアリーナを持つべきでしょうか。それは大きく次の2つではないかと考えています。

①愛知県方式(BTコンセッション)の地方展開

 自治体として準備できる予算にはもちろん上限があります。公共施設の場合重要となるのは整備費用よりもその後の管理運営費の負担です。多くの公共施設は指定管理料という名目で毎年の管理運営費を自治体が負担しています。愛知県方式では、イニシャルコストとランニングコストの区別はつけず、愛知県として負担可能な200億円を提示し、あとは民間事業者が創意工夫で30年間やり繰りすることが前提です。

 自治体の財政規模は様々なので一概には言えませんが、例えばアリーナで30年間の事業期間を想定した場合、指定管理料だけで数十億円規模になる施設はとても多いと推測されます。一方、起債との関係から自治体が施設整備費用を調達したほうが財政メリットは大きいことも背景にあり、「施設整備費」「管理運営費」を区別する慣習が残っています。

 とはいえ、「施設整備費」も「管理運営費」も、市民や県民にトップレベルのスポーツや最先端のエンタテインメントを提供するためのコストです。市民や県民目線ではそのような区別は意識されないのではないでしょうか。これらを1本化して後は民間に任せるというBTコンセッションのような事業手法は、シンプルかつ運営面を中心に民間活力を引き出しやすい事業手法として、これから自治体に普及させていく必要があると考えています。

②民間主導型PPP

 八戸市のアイスアリーナでは、市が約8億円で購入していた区画整理事業の保留地をゼビオの子会社であるクロススポーツマーケティングに無償で貸し付け、同社がアイスアリーナを整備し運営します。八戸市は開業後30年間にわたり年間1億円(消費税別)の利用料を支払うことにより、年2500時間の利用枠を得て、市民利用に供することができます。

 このように公共施設を民間が借りるという従来発想ではなく、民間施設を一定時間自治体が借りるという事業方式も今後一般化してくると考えられます。

様々なプレーヤーの登場

 収益は公共団体から得るという従来発想(極論言えば、何もしないことが一番の収益源になってしまう)になりがちな従来型の指定管理業務を行う事業者ではなく、そのアリーナで行われるスポーツやエンタテインメントのコンテンツを様々に活用して収益をあげようとするプレーヤーの参入が期待されます。実際、愛知県新体育館では供用開始後のSPCの代表企業はNTTドコモです。また神戸港のアリーナでの事業主体は、スマートバリューというIT企業になる予定です。

 我が国のプロ野球のオーナー企業の変遷を見てもわかるように、これまでとはビジネスモデルが変わってきている。そして、変えなければならない――。そんな前提で、自治体は様々な業態が参集できる条件を整備していくことも肝要だと思います。

東 一洋(あずま・かずひろ)
日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門地域・共創デザイングループ シニアマネジャー
1961年生まれ。神戸大学工学部建築学科卒業後、広告代理店勤務を経て、1989年の創立メンバーとして日本総研に入社。一貫して官民連携プロジェクトに関する計画業務・事業化支援業務などに従事。近年はスポーツ関連のプロジェクトに注力し、スポーツ庁「スタジアム・アリーナ整備に係る資金調達手法・民間資金活用検討会」構成員(2017年度)や日本サッカー協会施設委員会スタジアム部会員などを務める。そのほか、関西学院大学社会学部非常勤講師(2009年より5年間)、大阪市新たな地域コミュニティ支援事業選定会議審査委員(2014年度より)など。