欲しい未来の風景を自分たちで考え、実現する。

解説:提供される空間から、市民が自らデザインする空間へ

公共空間やサービスは、「市民参加」というかたちで、市民の意見を取り入れることはあったにせよ、主に政治家や行政が企画・整備し、市民に提供されてきた。ただし、提供された空間やサービスが、必ずしも多くの市民が望む形になっていないこともある。

議会制民主主義の手続きを経ているとはいえ、個別案件すべてに民意が反映されるとは限らない。公共空間やサービスの内容については、利用者である市民がもっと主体性を発揮してもよいのではないだろうか。

例えば、「全米で最も住みよいまち」として知られるオレゴン州ポートランド市では、市民運動に端を発して、高速道路を廃止して公園(トム・マッコール・ウォーターフロントパーク)をつくるという取り組みが実現した。パイオニア・コートハウス・スクウェアでは、資金調達も市民主体で行った。百貨店の高層駐車場の計画を却下して住民主導の開放的なデザインを実現するため、購買者の名前を刻んだ建設資材のレンガを販売して、資金の一部にしたという。ポートランド州立大学ハットフィールド行政大学院行政学部長の西芝雅美氏は、「ポートランド市民が『こんなまちにしたい』と動いた成果だ」と説明する。

日本でも、住民投票などで公共施設の計画が白紙に戻った例はいくつかあるが、ポジティブに市民発案で実現された公共空間にはなかなかお目にかからない。資金調達に関しては、クラウドファンディングなどの活用も進んできており、以前より共感さえ得られれば実現可能な環境は整ってきているといえる。これからは、「こんな(公共的な)施設やサービスが欲しい」と考える市民が主導し、行政と連携するようなプロジェクトがもっと生まれてくることを期待したい。

■関連情報
・ポートランドの取り組みについては、「住民がポートランドを『全米で最も住みよいまち』に育てた」(新・公民連携最前線)を参照のこと。また、市民の意見を反映させる仕組みとしては、静岡県沼津市や千葉県流山市で「1DAY Republicアイディアコンペ」(公共R不動産)のような試みも行われている。