空前のアリーナブーム到来? 本当にそんなに人が来るの??

解説:ライフサイクルを通じてサステナブルな計画を

政府は、未来投資戦略 2017(2017年6月9日閣議決定)において、2025 年までに 20か所のスタジアム・アリーナの実現を目指すことを具体的な目標として掲げ、スポーツ産業を我が国の基幹産業へと発展させるとしている*1。アジア初のラグビーワールドカップが盛り上がりを見せ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控える今、そうした機運が高まるのは当然ではある。

だが、オリンピックなど大きなスポーツイベントの終了後、そのために建てたスポーツ施設が閑古鳥――。そんな施設も国内外で散見される。数千人規模のアリーナや数万人規模のスタジアムは、果たしてこれからの時代の地方都市にどこまで適合するのだろうか*2

施設設計も従来通りというわけにはいかない。ライフサイクルコストを考慮し、ローコストで、かつ、来館者(特に有料入場者)に満足してもらえる空間をつくる必要がある*3。そのスポーツ施設ならではの特徴もほしいところだ。

欧米のプロスポーツの複合スタジアムやアリーナ運営における成功事例が注目されることも多い。スポーツでの集客を、飲食や物販など他産業と組み合わせることで、より広がりのあるエンタテインメント空間とし、より地域経済にインパクトを与える仕掛けとするボールパークなどの取り組みだ*4*5

日本でも、ライブエンタテインメント市場は右肩上がりの成長を見せており、今後も伸びが期待できる。また、オリンピックで世界中の人を迎え入れる経験は、多くの都市にとって市民とスポーツのつながりをつくるチャンスにもなるだろう*6。この機をとらえ、スタジアムやアリーナ単体としてはもちろん、飲食・宿泊、観光等を巻き込んで、シビックプライドを高めるような、地域活性化の起爆剤とすることができるかもしれない。

むしろ、それができなければ、巨大で空疎なハコを次世代への莫大なマイナス資産として地域に残すだけ、ということになる。華やかな世界ではあるが、甘い夢ばかりではなく、人口データ、興行データ等ファクトに基づき現実的な目線で精査することが重要になってくる。

■注釈
*1 経産省やスポーツ庁では、モデル事業を公募したり、「スタジアム・アリーナ改革ガイドブック」を作成するなどして後押ししている。
*2 観客席なしで、合宿需要などを見込んだ宿泊施設併設のバレーボール専用施設「オガールベース」(岩手県紫波町)のようなやり方もある。オガールプロジェクト全体の賑わいや、宿泊施設のビジネスホテル需要なども計算したうえで、施設をつくりあげた。
*3 国内では、例えば吹田サッカースタジアムが、コストを抑えながら観客の満足度を高める工夫をしたスタジアムとして知られる(関連記事)。
*4 日本でも、プロ野球の横浜ベイスターズや北海道日本ハムファイターズが「ボールパーク」を核とした街づくり構想を進めている(関連記事123
*5 米国の先進的な取り組みを見てみると、「稼ぐ」だけでなく「環境配慮」さらには「地域貢献」にも積極的だ(関連記事)。
*6 秋田県美郷町では、2020年東京五輪・パラリンピックでタイのバトミントン・ナショナルチームの事前合宿地になったことをまちづくりの1つの契機に活用しようとしている(関連記事)。