アイデアやノウハウを提供してほしい? 対価なしで?

解説:民間に企画を出させるなら、そこには対価が発生するはず

まちづくりの専門家から、こんなぼやきを聞いたことがある。

「<情報交換><意見交換>ということで呼ばれてみると、情報や意見を出すのはこちらだけ。<交換>するんじゃなかったの? もちろん、<時間>というコストへの対価もない」

最近、サウンディング型市場調査(以下、サウンディング)を実施することで、民間事業者との対話を通じて、参入意向を探ったり公募条件の整理に活用したりする自治体が増えている。公民連携事業を促進させるひとつの手法として定着しつつある。

一般的にサウンディングは、そこでよいアイデアや意見を伝えても、公募の際にインセンティブが与えられることはない。その意味では、<情報交換><意見交換>に近い面もある。

サウンディングにおける民間事業者の“対価”は、「行政の担当者と直接意見交換することで、文書だけでは得られない“感触”を把握できること」だとされる。公募時の募集要項に提案内容が採用されれば、有利に働くこともあるだろう。

しかし、やるべき事業の方向性がしっかり定まっていないままに行政が「対話」を行っても、民間事業者はそこから有益な情報を引き出すことはできないだろう。双方にメリットのある「対話」として成立しなければ、民間事業者はアイデアやノウハウを無償で提供するだけ、ということになってしまう。

また、各自治体がサウンディングを実施し、その件数が増えるほど、民間事業者は対話の準備に掛ける時間や手間のコストが増えることになる。

すべてのアイデアや意見に対して、行政が金銭的な対価を支払うことは、今のところ難しいかもしれない。しかし、クリエーティブな作業や計画のプロセスへの配慮がしっかりとなされることで、民間事業者側から出てくる提案や意見の精度や密度は、より高まるのではないだろうか。

■関連リンク
最近では、対話に先行して民間に情報を提供する動きや、提案が採用された事業者には公募時に加点したり、よい提案はそのまま民間提案制度に移行したりといったインセンティブをサウンディングに取り入れる自治体も出てきた。例えば以下のような取り組みである。こうした工夫は、民間事業者のモチベーションの向上につながり、公民連携を推進するきっかけの一つになるだろう。

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