なぜ駅前? 駅からの近さだけに価値を置くのはもうやめよう

解説:街の魅力は駅前だけではないはず

電車を降りると広がるのは、どこも似たような駅ビルに、タクシーが溜まり、人が通り過ぎるだけの駅前広場。地上につながることなく、延々と伸びるペデストリアンデッキ……。数々の駅前再開発プロジェクトにより、のっぺりと無個性な駅前が増産されてきたが、そろそろ見直しの時期ではないだろうか。

スマホで道順が簡単にわかる今、駅から近いことだけが物件の価値ではなくなりつつある。個人商店が連なる通り、猥雑な雰囲気を残す横丁、隠れ家的なお店など、エッジの立った場所には、駅から多少遠くても人はやってくる*1

もちろん、グローバルチェーンがひしめく駅前の大型商業施設が賑わいをつくることもある*2。だが、よほど大きなターミナル駅でなくては、そもそも大型商業施設を維持できる集客は見込めないだろう*3

また、特に地方都市においては、交通の中心が鉄道から自動車に移ったことに伴い、かつて駅前にあった賑わいが、郊外へと移っていったエリアもある。交通の中心が鉄道から自動車に移った“車社会”では、郊外立地の大型ショッピングセンターが、品ぞろえや価格面、エンタテインメント性、利便性などにおいて、駅前の商業集積と比べて優位性を発揮し、人気を博していった。このように都市構造の変化が顕著なエリアなら、駅周辺は住宅街として位置付けるなど、商業以外の用途も検討しうるはずだ。

一方で、これは都市部・地方の双方に言えることだが、乱立するタワーマンションは、果たして人口減少後の数十年後にも需要があるのか。その時になって失われた街の魅力に気づいても遅いのである。横浜市や神戸市のように、主要駅周辺のエリアを指定し、あえて新規の住宅建設を条例で規制する動きも出てきている*4

駅前空間のつくり方は、それぞれの街の個性によって大きく異なるはずだ。いずれにせよ、駅前に立派な大規模商業施設を無批判につくろうとしていないかは、問い直すべきだろう。

■注釈
*1 公民連携のカフェなどを多く手掛けるバルニバービの佐藤裕久社長は「好立地じゃなくても賑わいはつくれる」と断言している(関連記事)。
*2 例えば、2008年11月に「阪急西宮ガーデンズ」がグランドオープンしたことにより、「西宮北口」は、各種「住みたい街」の調査でランキング上位の常連になった。JR大分駅ビル「アミュプラザおおいた」は2019年7月、開業から4年3カ月で来館1億人を突破した。
*3 滋賀県の県庁所在地である大津市だが、JR大津駅ビル「ビエラ大津」は、“身の丈”に合った2階建てにサイズを抑えながら、人気テナントが入居して若者を集めている。越直美・大津市長は「公金を入れて利用者数に見合わない過大な駅ビルを建てるわけにはいかない」とコメントしている(関連記事)。
*4 横浜市「横浜都心機能誘導地区建築条例」(2006年4月施行)、神戸市「特別用途地区(都心機能誘導地区)」にかかる神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例の改正(2019年7月4日改正・2020年7月施行)