まちづくりで問われるのは「思いの強さ」

――まちづくりのソフト面については、2012年4月に策定した第一次総合計画で「市民協働のまちづくり」を掲げています。

石川県野々市市は、石川県中部に位置し、金沢市、白山市と隣接する。人口5万1643人、世帯数2万2705(いずれも2015年12月末時点)。面積13.56km2は県内の市で一番小さい。2015年には大型量販店「コストコ」が北陸初進出したことでも話題になった
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コミュニティカフェを特集した市の広報誌(資料:野々市市)
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 野々市はよく、金沢のベッドタウンと言われます。しかし、この言葉は「家に寝に帰るだけ」というイメージで好きではありません。よい街をつくるために市民の参加意識をもっと高めていきたいと思っています。

 行政は市民が活躍できる舞台づくりをします。しかし、舞台をつくっても演じる人がいなければ何も始まりません。行政はどちらかというと公平性などの観点から規制をかけるという一面もあります。それはそれとして必要ですが、その枠を飛び越える元気さを主導できるのが民の力です。

 こうした民の力を引き出すために、町内会・市民団体や学生グループからまちづくりの事業提案を募って、審査を通過した事業に最大20万円を助成する「提案型協働事業」も実施しています。

 また、町内会で運営する「コミュニティカフェ」も、市内10カ所ほどの地区で運営されています。

 うれしいことに、地域の実情に合わせて、必要なことをみんなで協力してやっていくという姿勢が定着し始めています。実際、「コミュニティカフェ」ではコーヒーを提供するだけでなく、独居の高齢者に食事も提供するなど、それぞれが独自に設定した地域の重点課題にも取り組んでいます。これは、自慢できます。

 ただ、私がいつも言っているのは、「無理はしないでほしい」ということです。必要以上にがんばると続かない。コミュニティカフェも、毎日開いているわけではありません。でもそれでいいんです。

――こうした「舞台づくり」の場面では、民間企業に何を求めますか。

 一つは、例えば公共施設を整備しようとするとき、「なぜ、その施設をつくるのか」という思いを市民と共有していただきたい。もう一つ、民間企業としてそれまでの経験を通じて築いてきた信念とも言えるこだわりが感じられることも求められます。そうした思いやこだわりをしっかり持っている相手とは、安心して連携を図れます。

 まちづくりで目指す方向性は、どこもそう変わりません。違いがあるとすれば、まちづくりに取り組む行政や市民、そして民間企業、それぞれの思いの強さです。どれだけ強い思いを持ってまちづくりに臨むのか、そこが問われると思います。

粟 貴章(あわ・たかあき)氏
野々市市長
1960年、石川県野々市町(現・野々市市)生まれ。日本大学法学部卒。石川県議会議員などを経て、2007年6月に野々市町長就任。町長2期目の2011年11月に野々市市に移行し、初代市長に就任。現在、町長時代から通算3期目。