大分市、別府市のベッドタウンとして長い間活気を保ってきた大分県日出町(ひじまち)。合併をせず、町としての自立の道を選んだ人口約2万8000人の自治体だ。「ベッドタウンというだけでは将来展望は開けない」と積極的な地域づくりを進める工藤町長に話を聞いた。

(写真:山本巌)
(写真:山本巌)
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――町の中心部であるJR暘谷(ようこく)駅前、国道10号沿いの町有地に商業施設やホテルを集めました。

 この土地は、1997年にJR暘谷駅北側の大分県立日出暘谷高校が転出し、その跡地を町が取得したものです。もともとこの地域は住宅地として計画されており、高校跡地についても住宅地として区画整理事業を行う予定でした。

 2004年9月に私が町長に当選してすぐ、この土地利用を見直しました。第一種住居地域とされていたのを、2005年1月には商業地域に都市計画の変更を行いました。そして、ここに新しい町の中核的な施設を持ってくることにしました。これからは高齢化が進み、公共交通も重要になってくると考え、暘谷駅を中心に開発することにしたのです。

 今まではともかく、これからはベッドタウンというだけでは将来展望は開けません。商業施設、生活の拠点になるような施設を集め、生活用品、身の回りの品はある程度町内でそろうような町にしたい。これから人口が減っていき、いくつかの自治体が消滅するようなことになっても、商業的な機能があれば埋没せずに済みます。

 また、日出町は、豊前から豊後に入ってくるときの最初の町で、江戸から明治にかけては大変にぎやかな城下町でした。ここを近隣や国東半島のビジネスの拠点にしていきたいという思いもありました。

 商業地域に地目変更をした後、2008年4月に高校跡地の利活用について公募方式で提案を求めました。ところが折悪く米国のリーマンショックの余波を受け、民間企業からの応募はありませんでした。

 その後は随時応募提案を受け付け、土地の部分賃貸で、その都度事業者と協議しながら開発を進めてきました。まず、2011年に家電量販店のケーズデンキに入ってもらいました。2012年には、大分市に本社のあるアメイズ(旧亀の井ホテル)のビジネスホテル「HOTEL AZ」が開業しました。

 ケーズデンキは、周辺自治体に出店していなかったので、近隣からも来られるような量販店として来てもらいました。ホテルについては、宿泊施設が不足していたので、ビジネス、冠婚葬祭、あるいは町に本社を置く二階堂酒造がつくったフットサルの競技場「速見フットサルコート」との連携など、このホテルがいろいろな活動の拠点となってくことを期待しています。

――そして、日出町役場の近くにあったスーパーマーケット、トキハインダストリー(本社・大分市)が、メーンのテナントとして移転する形で、ショッピングセンター(BiVi日出)が15年6月にオープンしました。ここの2階に図書館も入っています(関連記事)。

 2013年に大和リースから事業提案があり、当初は平屋の商業施設のみの計画が進んでいました。ただ、町有地として最後のまとまった土地ということもあり、議会において公共施設の併設が議論されました。

 日出町の喫緊の課題として、給食センターの移転があります。低地に建っているので、津波対策で安全な場所に移転しなくてはならないのですが、ショッピングセンターの上に持っていくわけにもいきません。いろいろ検討した結果、老朽化して手狭だった図書館の移転、それから多目的室や一時預かりの保育室などを置き、交流拠点をつくろうということになりました。事業者の大和リースに、ショッピングセンターの2階に「交流ひろばHiCaLi」として併設してもらいました。

――町有地に定期借地で建物をつくった事業者に、町が賃借する形で図書館などが入居するという公民連携スキームを採用しています。

 日出町は、2004年に周辺市町村と進めていた合併協議会を離脱し、合併せずに自立することを選択しました。このため、合併特例債は使えません。また、過疎地にも該当しないことから過疎債も利用できません。

 2階床を事業者の大和リースから20年間の延べ払いで賃借したことで、初期費用を抑制し、支出を平準化することができます。建物を所有していないと様々な助成制度が適用できないというデメリットもあり、一長一短はあったのですが、今回の方式がよいと最終的には判断しました。

 2016年度中には、JR暘谷駅の駅舎が同施設寄りに移転開業する予定です。南北を結ぶ自由通路も開通することで、多くの人が集い、ふれあい交流する拠点としてさらに活用されればと期待しています。

 日出町の人口は2万8067人(2015年国勢調査・速報値)です。前回の国勢調査と比べて154人・0.5%ほど減ってしまいましたが、大分県内で人口が増えたのは大分市だけ。減少率が1%以内におさまっているのは中津市と日出町だけです。

 2013年に半導体工場が撤退した影響は大きかったですが、関連したベンチャーの製造業が今もがんばっています。また、大分や別府に通勤しやすいですし、土地もまだ安い。日出町の周辺整備が進めば、住みたいと思う人はまだまだいるはずです。人口が少し減ってしまったのでちょっと言いにくいのですが(笑)、引き続き人口3万人を目指します。これからが本番です。