まち・ひと・しごと創生総合戦略の目玉として、高齢者向けコミュニティのCCRC設立を挙げる茨城県笠間市。CCRCを中心に健康都市を実現し、首都圏に比較的近い立地を生かして移住、あるいは二拠点居住を促して、活性化につなげる考えだ。具体的な取り組みや今後の方針について、山口伸樹市長に聞いた。

(撮影:北山宏一)
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(撮影:北山宏一)

――地方創生総合戦略の地方版を策定なさっていると思います。笠間市では、どのようなことを考えていますか。

 どの自治体も、国が地方創生と言い出す前から、人口減少への対策や街の活性化、雇用の創出などには取り組んできています。笠間市でも、「ひとづくり、まちづくり、ものづくり」という考え方に基づいてまちづくりを進めてきました。

 例えば英語教育に力を入れるなどの人材育成、中核となる駅周辺への施設集約を含めたコンパクトな街づくり、そして焼き物や石材などの産業の振興、企業誘致といったことです。国が言っている「まち・ひと・しごと」と考え方は同じですから、3本柱に基づく全体の方針はこれまでと変わりません。これらの施策との整合を取りつつ、新たな策とうまく組み合わせて、笠間の地域性を生かした街づくりを目指します。

――地域性を生かすというと、具体的にどのようなことでしょうか。

 笠間らしさという点では、例えば東京から電車でも、クルマでも1時間半といった首都圏からの近さがあります。これをアピールして人々を笠間に呼び込み、東京圏からの移住、あるいは2拠点居住を進めたいと考えています。これを推進する施策の目玉が、CCRC(Continuing Cared Retirement Community)の設置です。

 他の多くの自治体と同様に、笠間市も人口減少を少しでも食い止めなければならない状況にあります。その対策として、実は地方創生の戦略を考えるよりも前から、CCRCに着目してきました。

――なぜCCRCに着目したのでしょう?

 背景は二つあります。一つは、杉並区が静岡県南伊豆町に特別養護老人ホーム(特養)を設置するなどの動きから、首都圏の高齢者対策が一つの大きな課題になっていくだろうという見通しを持ったこと。そして、そんな折に、米国にCCRCというコミュニティがあると聞きました。要介護度が高い人の受け入れは厳しいものがありますが、アクティブなシニアを受け入れるものなら、地元にとってもメリットがあるだろうと判断しました。

農地付きの貸し別荘の取り組みで移住の可能性が見えてきた

 もう一つ、徐々にですが、笠間に移住してくる方々が出てきていたことも後押し材料でした。笠間では15年ほど前から「笠間クラインガルテン」という、農地付きの貸し別荘を営んでいます(最低契約期間は5年。クラインガルテンとは、元々はドイツの賃貸型市民農園のこと)。週末だけ来て過ごすといった方々が多いようですが、実は最近、このクラインガルテンの契約満了後に、近隣に家を建てる人が出てきました。いまでは14〜15棟まで増えました。これを見ていて、60歳前後のアクティブな人たちなら、相当数が笠間に来るのではないかと考えた。これがCCRCを人口減少対策の一つにしようと考えた2番めの理由です。

 CCRCというと、介護施設に入れずに困っている“介護難民”の受け入れ施設のように誤解されることが多いのですが、それは違います。つい最近も、ある集まりでそんな話をしました。「受け入れ対象は60歳代後半までの元気な高齢者。そして、施設を整備するのは市ではなく民間の事業者なんですよ」と。1人でも転入してくれば、市内での消費活動は増えます。60歳で転入してきても、多くは75歳まで元気なら、15年間も消費活動を支えてくれる。その経済効果は決して小さくありません。

 そういう人たちもいずれ介護認定を受けるかもしれませんが、それは元々笠間に住んでいる人たちも同じです。65歳以上で介護認定を受ける人の割合は15%ほど。その分の社会保障費が増えるとはいえ、移住に伴う消費活動の経済効果はもっと大きいと考えています。