写真1■大阪市西区の木津川左岸に、「木津川遊歩空間」の遊歩道部分が2016年3月にオープンした。「一次供用区間」として先行供用した部分で、延長は240m。階段や腰掛けなど、様々に機能するひな壇状の構造物を各所に設けた(写真:生田 将人)
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写真2■オープンスペースとその下流側の遊歩道。既存護岸の天端幅を拡幅したうえで、鉄筋コンクリート造の“上部構造”を増設。各所に様々な寸法のひな壇構造物を設けた(写真:生田 将人)
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 川沿いの遊歩道を進むと、ひな壇状の構造物が連続する広い空間が現れた(写真1、写真2)。転落防止柵のワイヤ越しに、川面を泳ぐ小魚の群れが見える。大阪府西大阪治水事務所が大阪市西区の木津川左岸に整備中の「木津川遊歩空間」で、この3月に他に先行して供用スタートしたエリアだ。

 遊歩空間全体は遊歩道(延長240m)とその中間に位置する広場で構成(図1)。先行供用したのは遊歩道と、広場から連続する三角形のような平面のオープンスペースだ。

図1 ■ 平面図
大渉橋から松島橋の左岸側で計4300m2の範囲に、遊歩道と広場を整備。岩瀬諒子設計事務所と大阪府西大阪治水事務所の資料をもとに日経コンストラクションが作成
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 一帯の護岸は、2010年度に同事務所が耐震補強工事を完了。遊歩道は、この護岸を土台にして整備したものだ。既存護岸の天端を一部撤去し、新たに片持ち梁形式の“上部構造”を増築して一体化。護岸天端を最大5.4mに拡幅したうえで通路を確保した(図2)。オープンスペースは面積約600m2。元々は広場の方向に堀が続き、オープンスペースは堀と木津川の接続部を埋め立てた箇所。独特の平面形状の由来だ。

図2 ■ 断面図
岩瀬諒子設計事務所と大阪府西大阪治水事務所の資料をもとに日経コンストラクションが作成
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ランダムに配置したひな壇
交流スポットとして多彩に機能

 遊歩道を設けた区間は、既存護岸からセットバックした形で高さ3m程度の防潮堤があり、改修前は一般の人は水辺に近寄れなかった(写真3)。府が実施したコンペを経て、遊歩道などをデザインした岩瀬諒子設計事務所(東京都台東区)の岩瀬諒子代表は、「段々畑のようにひな壇構造物が連続する空間で、希薄になっていた人と水の関係を緩やかにつなぐことを考えた」と話す。

写真3■改修前。府が2009年度から10年度に護岸を耐震補強した(写真:大阪府西大阪治水事務所)
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 遊歩道とオープンスペースには各所にひな壇構造物が幅や高さを変えて連続し、階段や腰掛け、ときには児童の遊び場としても機能する。訪れた人ごとに様々な形の“居場所”を提供することが、デザイン上の狙いだった。

 ひな壇構造物には花壇も配置。周辺住民などが植栽の維持管理に関わるソフト面の仕組みを取り入れることで、地域社会のコミュニケーション活性化を期待した仕掛けだ。

 概略・詳細設計はセントラルコンサルタント。同社大阪支社技術第2部環境水工グループの木下高副技師長は次のように説明する。「ひな壇が連続するデザインは複雑で、岩瀬代表と膝を突き合わせて何度も協議した。既存護岸は構造物を載せることを想定していなかったので、遊歩道を3区間に分けて安定計算し、積載許容値を割り出した」。

 岩瀬代表が関係者とのイメージ共有で用いたのが、50分の1の模型だ。「座りやすい位置はどこか」、「近隣から植栽はどう見えるか」など、模型を介して検討を重ねた。

 7月上旬に訪れた現地では、日が暮れた後にも散策する人の姿が目についた。腰掛けてピザをほうばりながら“夜のピクニック”を楽しんでいた若い女性たちに感想を尋ねると、「夜でも安心して戸外でくつろげる公共空間ができた。ここは静かで気持ちがいいですよ」と答え、快活な笑顔を見せた。

ベースは2003年の「再生構想」

 大阪市は河川面積が10%を占める。大阪商工会議所や国、府、市など、官民で構成する水の都大阪再生協議会は2003年、「水の都大阪再生構想」をまとめ、これをベースに河川沿いの遊歩道や水辺公園づくりを進めてきた。

 同再生構想に基づく水都再生事業の一環として府は04年、木津川の河川遊歩道整備に着手。整備の計画で対象とする範囲は延長約1800m分に及ぶ。このうち、今回オープンしたエリアを含めて、現在までに延長約840m分が完成済みだ。

 「木津川遊歩空間」でメーンの出入り口となる広場は、まだ整備中。府が舗装仕上げなど市民の意向を確認したうえで設計に反映してから、残工事に着手する予定だ。今年度中の全面供用を目指している。

 遊歩道とオープンスペースという先行供用部は今後、花壇の植栽への散水などを地元の任意団体「木津川遊歩空間を楽しむ会」が担う。同会は遊歩空間を舞台に「あおぞらヨガ」のイベントも開催(写真4)。同会の事務局を務めるNPO法人トイボックスの栗田拓代表理事は、「遊歩空間は時間がゆっくりと過ぎていくような場であり、その価値を広めていきたい」と話す。

写真4■7月に「木津川遊歩空間を楽しむ会」が開催した「あおぞらヨガ」。今後も様々な催しを実施予定だ(写真:木津川遊歩空間を楽しむ会)
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この記事は「日経コンストラクション・ウェブサイト」2016年8月18日付の記事の一部を転載したものです。
全文は日経コンストラクション・ウェブサイトでご覧いただけます。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/15/434167/082600044/