「日経デジタルヘルス」2016年8月22日付の記事より
神戸市副市長の玉田敏郎氏
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京都大学 名誉教授・元総長で神戸医療産業都市推進協議会 会長を務める井村裕夫氏
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 これまで医療機器や薬剤、再生医療の研究に力を入れてきた「神戸医療産業都市」が、健康分野へと足を踏み出す。神戸市が2016年8月5日に開催した「神戸医療産業都市セミナー 『健康長寿社会の実現に向けて』」に登壇した同市副市長の玉田敏郎氏は「高齢化の進展を受けて、今後はヘルスケア分野の事業化支援や予防医療に力を入れていく」と明かした。

 その一つとして取り組むのが、日々の健康管理などによって病気の発症を遅らせる、いわゆる「先制医療」だ。京都大学 名誉教授・元総長で神戸医療産業都市推進協議会 会長を務める井村裕夫氏は「生きるうえで重要な予防のなかでも、先制医療は主要な策になるのではないか」と話す。

 疾患を予防するためには、まずは自分がどのような疾患にかかりやすいかを知る必要がある。これに関して井村氏が指摘するのは、「胎生期や生まれてからしばらくの若いときに受けた影響によって、その後病気にかかりやすくなることがある」点だ。

 その代表例としてオランダの「飢餓の冬」を挙げた。飢餓の冬とは、第二次世界大戦後半の1944年11月にドイツ軍の占領下におかれ、出入港が禁止されたオランダで起こった厳しい飢餓のこと。チューリップの球根を食べるほど食べ物に困り、たくさんの人が餓死したという。その後、1945年4月にオランダは解放され「救援隊が送られたが、飢餓の冬を経験した妊婦が生んだ子供の体重は、標準値より少なくとも200g少なかった」(井村氏)。

 オランダ政府は、胎生期に飢餓の冬を経験した人を対象に現在も追跡調査を行っているという。その結果、「20才になった頃に総合失調症やパーソナリティー障害を患う人が多く、40才頃というとても若い年齢で心筋梗塞や糖尿病、肥満になる人が多いことがわかった」(井村氏)。