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地方で活発化する“人”への投資

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【加賀市】「米百俵」の精神で、IoT教育のモデル地域に

“人づくりの日本”を取り戻す――加賀市長 宮元 陸氏に聞く

河井 保博=日経BPクリーンテック研究所【2017.4.4】

――教育ということだと、産業振興に向けた取り組みとしては、息の長い話になりますね。

宮元 その通りです。人材を輩出できるまでには、ある程度の時間がかかります。施策としても地味ですから、教育を産業振興の優先課題に挙げる例は、これまでにもあまりなかったのではないかと思います。

 もちろん、他の産業振興の施策も考えていますし、これまでにも取り組んできました。例えば加賀市では、産業振興に向けた具体策を進めるために、観光戦略プランと産業振興行動計画を策定しました。観光戦略プランは、北陸新幹線の開通に伴って観光事業を強化するもので、2014年から2018年にかけての計画です。北陸新幹線がキーポイントでしたから、これはインバウンドや首都圏からの来客が年間20万人増えるなど、ある程度効果が見え始めています。

 問題はもう一方の産業振興です。加賀市には製造業が多く、製造業全体の売上高も増えています。これは人口が減っている現在でも変わりません。世界でシェア4割を誇る紡績機械の製造工場など、いわゆる「ニッチトップ」の企業もあります。これも決して悪くない。ただ、加賀市内の製造業は大半が部品製造で、完成品メーカーがほとんどありません。このために、地域の産業が構造的になりにくく、産業集積の状態に発展してきませんでした。

 地方の活性化は、結局、他の自治体との競争です。しかし、今の状況では、他の自治体との差別化は難しい。加賀市は県境にあって、県庁所在地でもありませんし、大学もありません。誘致しても、来てくれる企業や研究所はなかなか出てきません。であれば、自ら産業を興し、発展させていくしかありません。その発展を後押しする技術革新の波は急速に迫ってきています。それを先取りして仕掛けていく必要があります。だから教育・人材育成への投資に重点を置くわけです。

――そのテーマとして注目したのがIoTというわけですね。IoTより前から、ロボット関連にも力を入れていらっしゃるようです。

宮元 STEM教育と新産業の創出の観点で、最初にロボット産業に注目しました。元々は、ロボット産業については可能性のある話ではあるけれど、未来的なことだと捉えていました。ところが、そうではなかった。

 国が「2020年度開始を目途にした小学校におけるプログラミング教育の必修化」に取り組んだり、ロボット新戦略を打ち出したりと、いろいろな動きが見えてきた。技術もどんどん進化します。次第に考えを改めていたところに、たまたま開催したロボレーブ(RoboRAVE)大会の結果を見て、ロボット産業・ロボット教育への思いを強め、重要性を確信しました。ロボレーブというのは、国際的なロボットを使った教育プログラムのことです。

 その後、2015年に策定した「加賀市産業振興行動計画」に、ロボット研究の推進を盛り込みました。産業振興行動計画は2015年10月にまとめたもので、最重点施策として、医療、福祉、介護といった分野と、ロボット産業に注力することを骨子としています。ロボット研究の推進に向けては、計画に2つの事業を盛り込みました。地域の企業によるロボット研究開発事業と、ロボレーブ国際大会などを含めたロボット産業人材育成事業です。ロボット研究開発に関しては、電気、機械系など市内の企業10社ほどに声をかけて、ロボット研究会を立ち上げました。

 地元の産業界は当初、「ロボット産業なんて、何言ってるんだ」という感じで、興味を示しませんでした。それでも、あちらこちらで繰り返し重要性を伝え続けた。そのうち、新聞などでもロボットに関する話題が次第に増えてくると、少しずつ反応が変わってきました。最近では、加賀市でのロボット関連教育の話題に耳を傾けるようになってきています。

――ロボレーブ開催が一つの転機になったわけですね。

宮元 そうです。加賀市在住で海外のロボレーブに参加している方からの相談がきっかけでした。その方は、地域の子供達にロボットづくりを教えていたりする人で、なんとか加賀でロボレーブを開催できないかと相談されました。2014年のことです。

 地域との親和性があったわけではありませんが、産業を芽生えさせるきっかけになればいいと思い、地道な取り組みを想定して取り掛かりました。まずは1回、開催してみようと。米国から指導者を呼んで、市内だけの大会を開きました。するとどうでしょう。会場では多くの子どもたちが目の色を変え、ロボットやプログラミングに夢中になっています。それを目の当たりにして、「これだ」と感じました。

 ここまで来たら、考えることはロボレーブの国際大会です。日本で初めての国際大会を開催するなら、どうしても加賀市でやりたい。その後、ロボレーブの本部を通じて他の国に呼びかけ、2016年に第2回として国際イベントを開催しました。この国際大会で、さらに、戦略的な長期的人材育成の大切さを実感しました。IoT人材育成の発想は、このことが起点になっています。

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