移動、食事、消費、気くばり。4つの力の習得を支援

――次々の新しい事業を始められていますね。5番目の事業所となったその名も「五番館」という施設はどういうものですか。

村上 親に頼らずに暮らせるよう、自宅での生活力をつけるための1泊2日の短期宿泊訓練を行う家です。利用者は買い物をしてごはんを作ったり、お風呂の準備をして入浴したり、布団を敷いたり、といったことを練習するのです。日常生活に必要なことを身につける機会をつくりたいと思って、包装センターの大家さんに相談したら、平屋の一戸建てを建ててくれました。驚いたけど、本当にありがたかった。この取り組みがやがて大分市の公的サービスになり、今では他の法人も宿泊訓練を行っています。

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「ファミール中尾」は、同じ建物の中で、グループホームとケアホームの支援を行う。障害のある人が住み慣れた地域で暮らすことが目的だ(写真提供:シンフォニー)
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短期宿泊施設「五番館」。短期宿泊により家庭で暮らす力を養う。この事業は、大分市独自の地域生活支援事業の一つとして公的なサービスに発展した(写真提供:シンフォニー)

――村上さんは障害のある人がつけたい力として「4つの力」を挙げていますね。

村上 自力で目的地に行く「移動の力」、空腹になったら飲食店などを利用する「食事の力」、必要なものを購入する「消費の力」、社会のルールやマナーを守る「気くばりの力」です。働いて得たお金を持って、休日にバスに乗って街に出掛けて食事をしたり、買い物やカラオケを楽しんだり。帰宅後や余暇の時間の使い方を学べば、地域での生活をより楽しむことができます。生活に必要な力がつくよう支援していくと「分からないときは誰かに聞く」という力もついてきました。

――喫茶店を手掛けることになったのはどういう経緯ですか。

村上 文化ホールや会議室などを備える大分市の複合施設、コンパルホールで喫茶ネバーランドを98年から運営しています。人がたくさん集まる場所なら、より多くの方と出会えると考え、市の募集に手を挙げました。とはいえ、喫茶の経験はありませんから、説明会の後にあるコーヒー会社に行って「喫茶店はどうやったらオープンできるんですか」と教えを請いました。

――すごい行動力ですね。お知り合いの方ですか。

村上 いえ、また職業別電話帳を見て連絡したんです。ここのコーヒーはわりとよく飲んでたな、というノリで選びました(笑)。

――コーヒー屋さんに教えてもらって、喫茶店事業を始めるんですね。

村上 調理をはじめ、素人がなんでもできるわけではないので、経験のある方に従業員として入ってほしいと思い、知り合いに聞いたら見つけてくれたんです。喫茶店経営の実績があってスタッフ教育もできる、願った通りの方に来ていただけました。

――どうやって初対面の人から力を貸してもらうんですか。合意形成のために、心を砕いていることはありますか。

村上 何もないです。ただ正直にありのままの状況を話すだけです。すべてを包み隠さず話して、頼る。私が頼ったら相手も「この人、一人じゃできないな」って思うのか、助けてくれるんです。