自分らしい暮らしは自分でつくるという当事者意識が大切

(写真:大槻純一)
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――ゆいま~る那須は、日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community:継続的なケアを受ける高齢者の居住地域)の先駆的な例と言われています。成功した要因はなんだと思いますか。

近山 最初は、那須町の別荘で暮らす人が高齢化し、滞在人口が減少し始めたことに悩んでいた事業会社の相談から始まったんです。そこで那須町の自然豊かな土地に高齢者住宅を中心とした、新たなコミュニティの地域拠点を創造する、「那須100年コミュニティ構想」を企画しました。その高齢者住宅が「ゆいま~る那須」なのです。

 ゆいま~る那須の総額費用は約10億円。大まかにいうと、そのうちの1億円は、高齢者居住安定化モデルに選ばれて国交省からいただきました。あとは、入居者の資金でまかなわれています。入居者が集まることがもちろん一番大切なのですが、心がけたのは、入居希望者と十分な話し合いを重ねるということでした。

 まず、コミュニティネットワーク協会に登録されている約1万3000人に、「こういう田舎暮らしができるけど、どうですか?」と呼び掛けました。そして月1回、イベントやセミナーを開催しました。それを繰り返すうちに、いつも参加する5人ほどの方たちが友達になり、そうなると全然知らない人とより「この人たちとなら仲良く住めそう」と思ってくれて、那須に住むイメージがどんどん具体的になっていったんです。

――セミナーではどんなことを話すのでしょうか。

近山 生活設計については、必ず話しましたね。「あなたはどういう暮らしをしたくて、ここに来ようと思ったのですか?」「お金は足りるんですか?」「家族や友達は賛成しているんですか?」「田舎暮らしをしたことはあるんですか?」など。他の人とワークショップすることで「自分の思っていることを言ってもいいんだ」「みんなも同じようなことを考えていたんだ」などと気が付くんです。だから自分の居場所や自分らしい暮らしは、誰かにつくってもらうのではなく「自分でつくるんだ」ということを意識できるんだなと思いましたね。

 入居希望者には何度も何度も那須に来てもらいました。5年くらいかけたでしょうか。そこで徹底的に話し合って、分かり合えたことがとても大きかった。住宅設計、管理方法、ケアの仕組み、食事のことなどなど、様々なことを話し合って決めていきました。入居者が暮らす間取りの検討には、月2回のワークショップを重ね、その結果20を超える間取りができました。このように入居希望者とスタッフがお互いに納得しながら仕組みを作っていったことが、よかったのでしょうね。

――2010年にスタートして8年になりますが、想定外だった課題は?

近山 都会から移住すると利便性が低くなりますので、ゆいま~る号という生活支援の車を運行しています。開設前の話し合いでは、月曜から金曜の運行でよいということだったのですが、暮らし始めて2年ほどして、毎日にしてほしいという要望が強くなりました。結果、毎日運行にしたのですが、土日の利用度は開設8年目になった今でもそう多くない。強く要望した方が、乗車しようがしまいが、毎日運行していることで安心が増し、ストレスがなくなるのだと言われたのです。なるほどと思いました。思い立ったときに行動できるということが大切だということを改めて教えてもらいました。ただ、その分の値上げはしませんでしたので、運行部門単体では赤字になりましたけど……。

 また、最初の設計から関わった人たちはどうしても結束が強くなっているので、あとから入居した人は、何か居心地悪いというか、慣れるまでに時間がかかることもありますね。ここに来る人は、それまで社会でもリーダー格の人が多く、そんな人が多数集まって、新しい暮らしを手探りでやろうということになるのですから、いろいろありますよ。だから馴染むのに、やっぱり2年くらいはかかると思います。

 いろいろ課題は出てきますが、居住者が話し合いや勉強会を続けながら解決していくのが、ここのやり方。その都度、みんなとともに解決策を考え話し合い、実践し続けていきたいと思います。