これからはもっと「福福連携」を進めたい

――「ゆいま~る」のような場所を自分の町にも作りたいと思ったら、何が必要なのでしょうか。

近山 単純です。熱心にやっている人が「1人いるかいないか」だけ。1人でいいです。できれば地元で、よその人だったら住み込みで成功するまでは定住する。「通い」ではだめですね。もちろん、3人くらいいればいいけど、本当に一生懸命な人が1人いればできると思います。

――一生懸命な人が1人いればできると。でも、ゆいま~る那須は近山さんだから出来たのではないですか。

近山 いいえ、私に力があると思われがちですが、それは違います。私だって30年前は親の介護と自分の暮らしのことで悩み、困っていた人間だから。私は「ないものは作る」ということをやってきただけです。

――「ゆいま~る」は全国に10カ所ありますが、その共通項はありますか?

近山 あるとも言えるし、ないとも言えます。なぜなら「共通項を作って効率化しよう」ではなく、人や時代、地域のニーズに合わせてやってきたからです。ただ、これまでに10カ所つくってきて、先の3パターンのように再生モデルの試みはほぼできたので、これからはその共通項を生かしたものができていくと思います。

――今後のビジョンをお聞かせください。

近山 「ゆいま~る那須」は過疎地を活性化するためのものですから、これからは100年コミュニティの一環として、環境共生型の町づくりをさらに進めていこうと考えています。仕事をつくり、高齢者・障がい者・働きにくい若者もそこで働けるようになり、まち全体のなかに位置付けられるといいと思っていました。

 私たちのやり方はまず地産地消、そして自給力アップ、そして「福福連携」です。福福連携というのは、高齢者が高齢者のサポートをする、障がい者が障がい者のサポートをするというような、これまでサポートされる側だった人がサポートする側になるということ。今後はさらに福福連携を浸透させていきたいと思っています。

 今、ゆいま~る那須から車で約10分のところにある、廃校になった小学校を利用して、地域の人も集まり、多世代交流ができ、つながりを持てるような「那須まちづくり広場」を作っています。校庭には介護重視型のサービス付き高齢者向け住宅と多世代型のシェアハウス、障がい者のグループホームを新しく建てて、校舎にはカフェ、マルシェ、配食サービス、統合医療を目指したマッサージや鍼灸、ボランティアでやるよろず相談所、移住促進センター、高齢者住宅情報センター、楽校(がっこう)の講座、音楽など多様な事業社が入ります。4月27日のオープンに向けて、今、改修も最終段階。とても楽しみですね。

廃校になった小学校を利用した「那須まちづくり広場」が4月27日にオープンする。(写真:大槻純一)
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 私はこの広場もみんなで話し合いながら、必要なものを「作り続ける」ようにしたいと思っています。「勝手にガウディ方式」と言っているんだけど(笑)。ずっと作り続ける、完成しない。面白いでしょ。そのときにここにいる人で「より住みやすい暮らし」を作り続けていく。

 高齢になってくると、心配事も増えるかもしれません。でもあまり心配してもしょうがない。何歳まで生きるかわからないのだから。それなら、今を豊かに生きたほうがずっといいと思います。

インタビューを終えて

ふと、2045年に自分は何歳になるのだろうかと計算したことがあります。私は1962年生まれなので、83歳になります。今、故郷の秋田で一人で暮らす母と同じ年齢です。母は地域の方々の支援もあり元気に暮らしていますが、自分は、どこで誰とどうやって老後を過ごすのだろうと思うと、急に心もとなくなりました。そのときに、近山さんたちが作った「ゆいま~る」があれば、世代や立場を超えて支え合う仕組みのあるまちがあれば、安心だと思いました。しかし、それは誰かが作ってくれるのを待つのではなく、自分たちが主体的に参画し、必要なものを作り続ける意思が大切なんだということを取材を通じて改めて気づかされました。いよいよ多世代交流の場である「那須まちづくり広場」もオープンします。今後も近山さんが描く100年コミュニティを追っていきたいと思います。

麓幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研 フェロー
麓幸子(ふもと・さちこ) 麓幸子(ふもと・さちこ) 1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。06年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年執行役員。18年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。文部科学省、内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。