福岡県北九州市にある「有限会社ゼムケンサービス」は、男性中心の建設業界にあって、社員8人中6人が女性というユニークな会社だ。女性の生活者としての視点や細やかな感性を生かした設計力、そして顧客の価値を空間デザインに落とし込むブランディング力を武器に「繁盛する場づくり」で実績を上げている。また、ワークライフバランスを尊重する働き方の工夫によって時間的制約のある女性にも活躍の機会を広げ、2014年には経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」を受賞した。代表の籠田淳子氏に、建設業における女性の強みとその生かし方について聞いた。
中洲で働く女性たちを応援する場所にしたい
オーナーの思いからビル工事を受注
――こちらはゼムケンサービスが手がけている建設現場とのことですが、福岡市博多区の中洲川端駅からすぐ近くですね。商業ビルでしょうか。
籠田代表(以下、籠田) はい。今年1月から本格的に着工して、7月に完成予定の8階建てのビルです。私たちは北九州市の会社ですので福岡市の現場というのは珍しいのですが、ビルのオーナーさんからご指名いただきました。
中洲は九州有数の歓楽街ですが、このビルは中洲を訪れる男性のためというよりも、中洲で働く女性たちを応援するような場所にしたいというオーナーの思いがあり、女性の視点を強みとするうちの会社に声をかけてくれたそうです。入居するテナントの開発にも協力していて、例えば託児所が入ったりしたらいいなと考えています。
――単に建物を建てるだけではなく、そこをどう生かすかといったコンサルティングまで行っているんですね。ゼムケンサービスの事業内容について詳しく教えていただけますでしょうか。
籠田 特定建設業、一級建築士事務所として、北九州市内を中心に建築の設計や施工を行っています。社員8人のうち女性が6人で、内訳は一級建築士が4人とデザイナーが2人。男性2人は技術者で、社員全員が営業とデザイナーを兼務しています。
売り上げの中心はオフィスや店舗、病院、福祉施設といった、多くの人が集まる「店づくり」で、一般的な建設会社には珍しいブランディングやVI・CIといった空間のプロデュースも手がけているのが特徴です。最新の事例では、北九州市小倉南区に2016年12月にオープンした「菓匠きくたろう」の設計・施工を担当。店のコンセプトづくりからクライアントと一緒に行いました。