福岡県北九州市にある「有限会社ゼムケンサービス」は、男性中心の建設業界にあって、社員8人中6人が女性というユニークな会社だ。女性の生活者としての視点や細やかな感性を生かした設計力、そして顧客の価値を空間デザインに落とし込むブランディング力を武器に「繁盛する場づくり」で実績を上げている。また、ワークライフバランスを尊重する働き方の工夫によって時間的制約のある女性にも活躍の機会を広げ、2014年には経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」を受賞した。代表の籠田淳子氏に、建設業における女性の強みとその生かし方について聞いた。

籠田淳子(こもりた・じゅんこ)
滋賀県立短期大学工学部建築学科卒業。ハウスメーカー勤務やヨーロッパ留学などを経て、1993年に実家であるハゼモト建設株式会社に入社。2000年に有限会社ゼムケンサービス代表取締役に就任し、女性ならではの感性や視点を生かした設計・施工と、女性の活躍機会を広げる働き方の工夫や人財育成に取り組む。09年に「北九州市ワーク・ライフ・バランス表彰」市長賞、13年に内閣府の「女性のチャレンジ賞」受賞。一級建築士、管理建築士、インテリアプランナー。法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科在学(写真:大槻純一)
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中洲で働く女性たちを応援する場所にしたい
オーナーの思いからビル工事を受注

――こちらはゼムケンサービスが手がけている建設現場とのことですが、福岡市博多区の中洲川端駅からすぐ近くですね。商業ビルでしょうか。

籠田代表(以下、籠田) はい。今年1月から本格的に着工して、7月に完成予定の8階建てのビルです。私たちは北九州市の会社ですので福岡市の現場というのは珍しいのですが、ビルのオーナーさんからご指名いただきました。

 中洲は九州有数の歓楽街ですが、このビルは中洲を訪れる男性のためというよりも、中洲で働く女性たちを応援するような場所にしたいというオーナーの思いがあり、女性の視点を強みとするうちの会社に声をかけてくれたそうです。入居するテナントの開発にも協力していて、例えば託児所が入ったりしたらいいなと考えています。

――単に建物を建てるだけではなく、そこをどう生かすかといったコンサルティングまで行っているんですね。ゼムケンサービスの事業内容について詳しく教えていただけますでしょうか。

籠田 特定建設業、一級建築士事務所として、北九州市内を中心に建築の設計や施工を行っています。社員8人のうち女性が6人で、内訳は一級建築士が4人とデザイナーが2人。男性2人は技術者で、社員全員が営業とデザイナーを兼務しています。

 売り上げの中心はオフィスや店舗、病院、福祉施設といった、多くの人が集まる「店づくり」で、一般的な建設会社には珍しいブランディングやVI・CIといった空間のプロデュースも手がけているのが特徴です。最新の事例では、北九州市小倉南区に2016年12月にオープンした「菓匠きくたろう」の設計・施工を担当。店のコンセプトづくりからクライアントと一緒に行いました。

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福岡市中洲の建設現場にて。ユニフォームの肩の部分には経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」のロゴマークを付けている(写真:大槻純一)

徹底したヒアリングにより
クライアントの価値を空間全体で表現

――「菓匠きくたろう」は白を基調としたシンプルな空間で、いわゆる和菓子屋のイメージとは全く違いますね。カフェも併設し、平日でも女性客で大変なにぎわいです。

籠田 同じオーナーが経営する「スイーツショップ FAVORI PLUS(ファボリプラス)」を2009年に手がけたのが縁で、今回も発注していただきました。

 当社は女性の感性の鋭さを生かした「五感設計」が強みです。例えばFAVORIでは、焼きたてのバウムクーヘンの香りが食欲をそそるような換気構造にして、店内は焼き菓子の焼き色から小麦粉の白までのグラデーションをメインの配色に取り入れました。団塊世代の母とその娘、孫の3世代が立ち寄りたくなる店を目指し、狙い通りのお客様に支持されています。

 菓匠きくたろうは、1950年の創業当時に販売していた名物のかりんとうを復活させることを命題として店づくりが始まりました。苦労したのが、昔ながらの和菓子屋のイメージを大切にする団塊世代のオーナーと、時代に対応する要素も取り入れたい次世代の現場マネージャーの思いをどう一つにするかという部分。最終的には、はちみつレモンやわさびといった新感覚のかりんとうとも違和感なくなじむように、和モダンな空間づくりを提案しました。

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北九州市の「菓匠きくたろう」。スタイリッシュな和モダンの空間。併設しているレストランは女性客でにぎわっていた(写真:大槻純一)
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09年に手掛けた「スイーツショップ FAVORI PLUS」。女性の感性の鋭さを生かした「五感設計」が強みが生かされている(写真:大槻純一)

――FAVORI PLUSの山田啓玄マネージャーにお話を伺ったところ、「オーナーと自分の双方の話をヒアリングし、まとめていただけたのがゼムケンさんの素晴らしいところ」と言っていました。また、「情緒的な価値を理解し、色や空間、動線といった様々な要素に気を配りながら一緒に作り上げていく籠田さんの手法が、ほかの社員にも行き渡っている」とも。

籠田 クライアントへのヒアリングはまさに社員教育で力を入れている部分です。メモを取るだけでなく、相手の第一声、何回も出てくる言葉、そして仕草などから本人もまだ気づいていないプロジェクトへの思いを引き出すことを大切にしています。

 当社の経営理念は「オモイをカタチに 建築は統合芸術」。女性社員の人材育成のノウハウを生かし、クライアントに対しても女性リーダーの育成とブランディングの浸透を同時に行っています。例えば東京の老舗そば店の新規出店の際には、新店の女性リーダー候補と設計施工会社の担当者、当社でチームをつくり、2カ月にわたってブランディングワークショップを行いました。建物は完成した時がゴールではなく、利用され、繁盛してこそ意味がある。特に女性が生き生きと働く店や会社が増えることは、地域の活性化にもつながります。

――女性ならではの強みを打ち出す「女性建築デザインチーム」の活動もされていますね。

籠田 はい。自社のブランディングとして、女性建築士やデザイナーが窓口となって家づくりや店づくり、街づくりを行っています。ネーミングをわかりやすいものにし、「Jポーズ」で笑顔を見せる生き生きとした女性技術者の姿をSNSで発信したり、街づくりのイベントを行ったりすることで、会社の知名度がぐっと上がりました。

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丁寧なヒアリングでクライアント本人も気づいていない思いを引き出す。籠田さんが最も大事にしていることのひとつだ。右写真はファボリのマネージャー山田啓玄さん(写真:大槻純一)

ワークシェアリングで
会社も時間制約のある女性も共に成長できる

――そもそも、ゼムケンサービスはどのような経緯で生まれた会社なのでしょうか。

籠田 父がハゼモト建設という総合建設業を営んでいて、営繕工事を担当する関連会社として1993年に創業しました。当時は母が代表取締役を務めていましたが、99年に父が亡くなり、2000年に私が代表に就任。生まれたばかりの長男を抱えながら、社員の採用も行いつつ事業を拡大してきました。近年は特定建設業になったことで大型物件の工事が受注できるようになり、13年に初めて売り上げが2億円を突破。今年は4億円を超える見込みです。

――籠田さんはなぜ建築業界に進もうと思われたのですか。やはり家業の影響でしょうか。

籠田 子どもの頃から職人たちの膝の上で遊び、彼らが現場で働く姿を見て育ちました。時代の変化とともに仕事が減っていくのを目の当たりにして、「大好きな職人さんのために仕事を取ってきたい」と思うようになったんです。父は「女が建築の道に進んで何になる」と猛反対でしたが、母が「これからは女も手に職の時代よ」と応援してくれたおかげで、短大で建築を学ぶことができました。

 その後も父は私のことを認めてくれませんでしたが、一級建築士に合格すると態度が一変。実家に帰ってこいと言われて、今に至ります。

亡き父である櫨本春夫氏がハゼモト建設を創業。母喜代子さんが初代社長だったゼムケンサービスを受け継いだ(写真:大槻純一)
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――これまでを振り返って、キャリアの転機となった出来事は何でしょうか。

籠田 20代の時に、北九州市内のあるケーキショップの施工を担当したときのことです。新鮮なフルーツと生クリームのケーキの店ということでしたが、店内のデザインがなかなかしっくりきませんでした。そんな時、オーナーの家で偶然「赤毛のアン」の本が目に留まり、「これだ」とひらめいたんです。「赤毛のアン」をモチーフにして、店内はプリンスエドワード島をイメージ。「大人になったアンたちへ……」というキャッチコピーや麦の穂を添えたラッピング、制服のデザインまで手がけて、一貫した世界観を作り上げました。これが大ヒットして、小さな1軒の店が30店舗を構えるまでに成長。いわゆるコンサルティングをやった最初の成功体験でした。父にも「お前がやっているのは建設業ではなくサービス業や」と言われました。

――地方では人材不足が深刻といわれていますが、こちらでは女性の力を生かすことに熱心に取り組んでいますね。出産や育児など、様々な制約のある女性に活躍してもらうためには何が必要でしょうか。

籠田 06年から女性技術者のワークシェアリング制度を導入、一級建築士とインテリアコーディネーターをパートで採用しました。パート社員が産休から復帰した際には、子育てと両立できるよう在宅ワークも取り入れました。

 ワークシェアリングは、物件ごとに2、3人でチームを組み、関わり方の度合いによって各人の売り上げと粗利額を按分するものです。年次ごとの各自の実績を見える化することで公正な評価を共有でき、モチベーションアップにもつながります。

 工事現場では、男女の現場監督がペアになってワークシェアリングをしています。例えば男性が朝早く現場に行き、育児中の女性は子どもを送り出してから10時ごろ現場に入って男性と交代。男性は別の現場に確認に行くといった形で連携しています。

 それぞれの事情や能力に合わせて働き方を工夫することで社員は成長できますし、それによって業績もアップさせることが可能です。

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同社は8人中6人が女性。ワークシェアリングなど、時間制約のある女性が活躍できる環境を整える。本社前で、みんなで「Jポーズ!」(写真:大槻純一)

――女性も現場監督をしているんですね。職人さんとのやりとりなどで苦労もあるのではないでしょうか。

籠田 女性がいると現場のコミュニケーションが活発になるというのは大きなメリットですが、職人に指示を出すとなると話は別で、課題も多いです。工期ギリギリの厳しい状況になると一生懸命さのあまり、つい感情的になってしまったり、職人にどなられて委縮してしまったり。私自身、20代のときはどうやったら職人さんに一目置いてもらえるかあの手この手を試して、失敗もたくさんありました。

 私が一つ女性社員に伝えているのは、「職人とは使っているボキャブラリーやメンタリティが違うのだと自覚する」ということ。女性は相手の気分を害さないように、自分が嫌われないようにと優しい言い方をしようとしますが、職人はむしろはっきり指示が欲しいものなんですね。そこをまず理解したうえで、少しずつ接し方を学んでいってもらっているところです。

「ビジョンを描く力」が
社員の能力と意欲を引き出す

――女性社員の育成に力を入れていると伺っています。1人あたり年間40万円の研修費をかけているそうですね。

籠田 最初の頃は「忙しくて時間がない」などといって、こちらの働きかけに乗ってきませんでした。

 もともと私は何でもできる人間を作ろうとしていたんですね。でもある時、社員から「私は代表のようにはなれません。代表といると、できない自分をすごく感じます」と言われてしまった。私はその社員のことをすごく優秀だと思っていたので、意外だったし、ショックでした。

 考え方が変わったのは09年、それまで私の子育てやプライベートなことをフォローしてくれていた母が病気になり、あらゆることが行き詰まってしまった時です。それまではフルタイムで仕事に全力投球してきましたが、仕事と母の看病で睡眠もとれない日々が続き、初めて夫にも弱みを見せました。自分が「敗北」を受け入れたことで、みんなやりたくてもできないいろんな事情があると、身をもってわかりました。

 母は3カ月ほどで亡くなったのですが、その3回忌のときに、今度は夫が末期がんに倒れました。夫は庭師で、太陽とともに仕事をして日が沈んだらおしまいの人。子守が上手で、主夫としてずっと私を支えてくれていました。そんな夫がもう治療ができない状態だという。このときばかりは会社が赤字になってもいいから夫と息子と3人の時間を作りたいと思いました。でも会社は持ちこたえた。私がほとんど病院につきっきりになっていた時も、社員ができそうにないことをやり遂げて守ってくれました。

 それからは、社員の給料を2倍、3倍にする目標を描いて、社員の年収が300万円以上になるまでは、人財育成や働き方の仕組みを作り続けようと心に決めたんです。

 最初は100万円を超えないようにしか働かないと言っていたパート採用の女性一級建築士も、5年後には正社員になり、この目標を達成しました。現在、社員の給与は皆300万円以上になりました。今後も給料を2倍、3倍にする目標を描いています。

母そして夫が亡くなったことから仕事に対する考え方が変わったと籠田さん。「社員の給料を2倍、3倍にする目標を描いて、人財育成や働き方の仕組みを整えました」。実際パート社員から正社員となり収入が3倍になった女性も(写真:大槻純一)
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――人財育成の方法としては、具体的にどんなことをしているのでしょうか。

籠田 オリジナルの社員手帳を開発しました。きっかけは十数年前、初めて雇用した社員が、私が話すことを全部書き留めて、行き帰りのバスの中で読み返していたんですね。ある日そのメモの束が机の上に置いてあるのを見て、時間的に制約の多い女性でも自宅で学べるようにできたらと、手帳化することにしました。

 内容は、代表である私の方針や仕事の取り組み方、アイデアの発想方法、現場での職人への指示の出し方など多岐にわたっています。それぞれの「10年ビジョン」を書き込む欄もあって、毎年新年の会議で全員が共有しています。自分でどんどん書き込めるようなつくりになっているのも特徴で、経営方針も社員が各自で考えるようになっているんです。

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10年ビジョンが書き込めるオリジナルの手帳「ゼムケン手帳」を開発。社員の夢を描く力を育成している(写真:大槻純一)

――男性はキャリアを考える上で「10年後はどうなりたいか?」と上司に聞かれることはありますが、女性はほとんどないのが実情です。これはすごい手帳ですね。

籠田 社員とは毎月面談をしているのですが、以前「私は夫が健康で出世したらそれでいい。自分の夢は特にありません」と言った女性がいて、衝撃を受けました。

 そういう女性に「あなた自身が夢を持っていいのよ。私たちは自由なのよ」と伝えると、表情を一変させます。涙ぐむ人もいるし、顔をぱっと紅潮させる人もいる。そういうケースを何人も見てきました。

 私はビジョンを持てるようにしてあげることが大切だと思っています。「好きこそものの上手なれ」の言葉通りで、自分の好きなことだったらどんどん上達してく。ただ、本人のビジョンが会社の理念と合っていなければ辞めていくと思うので、まずは経営者が「こうありたい、未来をこうしたい」ということをきちんと言葉で表現していくことが必要です。

 最近は彼女たちの10年ビジョンがより大きなものに変わってきていて、「夢を描く力」が育ってきていると感じています。11年前にパートで入社し、その後正社員になって収入が3倍になった女性もおり、目標も達成できつつあります。

本社のボードには毎日社員へのメッセージを書く。インターンシップで女性にもっと活躍の機会を(写真:大槻純一)
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――街づくりのイベントも積極的に行っていますね。

籠田 私は、建築はまちづくりでもあると思っています。小倉駅近くの商店街「魚町銀天街」の魅力を再発見する「魚町の女神たち構想」では、地域の女性4人にマーケッターとなってもらい、彼女たちの声をもとに車椅子での買い物を体験するイベントなどを開催。「誰からも愛されるまち、魚町銀天街」というブランドアイデンティティが誕生しました。また、私の地元である片野地区では、高齢化が進む自治会と若い世代や飲食店経営者との交流を促し、一緒に地域を活性化していく「片野まちづくり講座」も行っています。

 こうした活動は社員に積極的に任せ、いずれは別会社の事業として渡せればと考えています。社員全員の「のれんづくり」と言っています。

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まちづくりにも積極的。(上)小倉駅近くの商店街「魚町銀天街」では車椅子での買い物を体験するイベントを開催。(下)「女性力学び場 地域力みんなの幸せ」と題したイベント。「僕がわたしが市長になったら」をテーマに若い世代がプレゼン(写真:大槻純一)

――建設業は圧倒的に男性社会ですが、その中で女性が活躍するには何が必要でしょうか。

籠田 建設の現場に女性の視点を取り入れることが戦略として有効だと思います。私たちは「五感設計」や、4象限マトリクスを用いて課題をコンサルティングしていく「ダイバーシティ設計」といった手法で、建設業界の活性化を行ってきました。いずれはこれを理論化して、再現性のあるものにしたいと考えています。

 また、建設業にインターンシップを取り入れたいと考えています。「けんちくけんせつ女学校」と名付けて、今年11月に始める予定です。

 東京で働いていた女性が結婚などで北九州に戻ってきた時に、建設業で働くことを怖いと思ってしまうんですね。そこで、まずはeラーニングで現場の実習が見えるような勉強をした後に、インターンシップを2カ所くらい経験してもらい、相性が合えばそこに勤めてもらう。そういった仕組みがあれば、もっと活躍の機会が広がるのではないでしょうか。これについては大学院でも論文を執筆中で、女性の一級建築士が建設業を離れる原因を研究しています。

(写真:大槻純一)
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――行政に対して望むことはありますか。

籠田 14年の総務省労働力調査に基づく国土交通省の発表によると、建設業就労者505万人のうち、女性技術者は1万人、女性技能者は9万人です。一級建築士の女性合格率が年々増加し、建築に対する女性の関心が高まる一方で、女性技術者・技能者は97年の26万人をピークに減少し続けて歯止めがきかない状態です。

 国交省でも5年で女性技術者・技能者を5倍に増やす計画を打ち出していますが、現状では建設業に就職した女性がどのようなプロセスを経て働き続けているのか、あるいは辞めているのかは把握されていません。有効な施策を打ち出すためにも、職場や家庭の環境も含めた、正確な現状把握をしてもらいたいと思っています。

――今後の目標を教えてください。

籠田 いま力を入れているのは、職務をさらに細分化することと、社員に仕事の全体を知ってもらうことです。お客さまと出会って店づくりの第一歩がスタートしてから完成後に物件を引き渡し、お店がオープンした後に建物のメンテナンスをするところまでが私たちの仕事。その中で一番得意なのは何かを知り、どこができるようになりたいのかをマネジメントするのが私の役割だと思っています。

 地方では人材不足と言われていますが、それぞれの個性を生かす方法やワークシェアリング、ワークライフバランスなど、会社のほうが仕組みさえ変えれば活躍できる人材はもっといるはずです。経営者として自分がどんな人材を求めているのかを明らかにしたうえで、これからも仕事や未来に対するワクワク感を表現していきたいと思っています。

<インタビューを終えて>
地方の人手不足は深刻であると言われます。それに対して「そんなことはありません。環境が整っていないだけ。働ける仕組みをつくったら違うはずです」と籠田さんはきっぱりと否定しました。その言葉どおり、いち早くワークシェアリングを導入。子育て等で時間制約のある女性でも活躍できるような仕組みを作りました。そして、その育成ぶりもすごい。「あなた自身が夢を持っていい」「私たちは自由なのよ」と女性社員に熱心に伝えることで、女性たちが知らず知らずのうちにふたをしていた自分の可能性をも気づかせるこの手腕。働き方を変えただでなく働きがいも創出するリーダーであることを実感しました。
麓幸子(ふもと・さちこ)
日経BP総研 マーケティング戦略研究所長・執行役員
麓幸子(ふもと・さちこ) 麓幸子(ふもと・さちこ) 1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。06年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。16年現職。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。

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