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麓幸子の「地方を変える女性に会いに行く!」

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空き家の再生を通じて尾道の景観を守り、新たな人々とのつながりを生み出す

Vol.17 豊田雅子さん(NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事)

聞き手:麓幸子(日経BP総研フェロー)、取材&文:田北みずほ【2018.9.18】

瀬戸内海の港町として古くから栄えた広島県尾道市。尾道水道を臨む斜面地や狭い路地には明治から昭和にかけて建てられた古い住宅が数多く残っており、ノスタルジックな風景が広がる。しかし、高齢化にともない空き家が増加、老朽化も進んでいた。これを見過ごすことができないと立ち上がったのが、尾道出身の豊田雅子さん。「尾道らしい古い家や景観を守りたい」と2007年、空き家再生プロジェクトを設立した。物件の個性に合わせた再生の取り組みを続ける中で、街にも変化がもたらされていった。

豊田雅子(とよた・まさこ)
1974年広島県尾道市生まれ。関西外語大学卒業後、大阪の旅行代理店で海外旅行の添乗員として勤務。2002年、尾道市にUターン。07年に任意団体「尾道空き家プロジェクト」を設立し、翌年NPO法人化。これまでに20軒の空き家を再生、大家と借り手を仲介する「空き家バンク」事業では約100軒のマッチングを手掛けた。双子の男子の母(写真:大槻純一)
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空き家問題は地域コミュニティや景観を失う危機と直感

――尾道空き家再生プロジェクトがこれまでに再生させた物件は何軒になりますか。

豊田 法人として再生に携わったのは20軒です。イベントやワークショップの活動に使っている住宅もあれば、アーティストやものづくりの拠点となっている集合住宅、山手暮らしの体験ハウス、ゲストハウスなどさまざまです。「空き家バンク」事業として移住希望者に紹介して成約に至った物件は100軒くらいになりますね。

――尾道の空き家問題に興味を持ったきっかけを教えてください。

豊田 高校まで尾道で過ごして、大阪の大学を卒業後、海外旅行の添乗員をしていました。私はヨーロッパの街が大好きで、学生時代から何度も訪れています。尾道の港は来年で開港850年。平安時代、荘園の年貢米の積出港から始まり、江戸後期からは北前船の寄港地、その後は造船、観光と、時代に合わせて繁栄を重ねてきた。尾道はこうした歴史ある港町です。細い路地や山の斜面にいろいろな時代に建てられた古い家が多く残っていて、映画やドラマの撮影地になるような独特の風情がある。そんなところが、ヨーロッパの街並みと共通しているような気がして、いつかは尾道に帰ろうと思っていました。

 学生だった90年代から「尾道に空き家が増えている」という話は聞いていて、もったいないなと思っていました。気になったので、帰省のたびに空き家を見に行くように。これが空き家研究の始まりですね。旧市街地にある空き家は、車が入れない細い路地や斜面地に建っているので、不便だし、工事もしにくい。今の建築基準法だと建て替えもできない。高齢化や都会への人口流出という事情も加わって空き家がどんどん増えて、私が探し始めたころは、尾道駅から2キロ圏内に500軒以上の空き家がありました。空き家を通り越して、廃屋になっている家もいっぱいあったんです。

――空き家を探したというのは、ご自身で住むためにですか。

豊田 いえ、住むところは実家があるので、セカンドハウスを持てたらな、と。仕事ではなく、趣味の範囲で。だから、坂の途中にあるとか、海が見えるとか、尾道らしい家がいいなと思っていました。最初、不動産屋に足を運びましたが、古い空き家は商売にならない物件なので、扱っていなかった。そのとき、尾道市が95年から全国に先駆けて「空き家バンク」を始めているのを知りました。で、見に行ったら、エクセルの表があるだけで、写真も間取りもなくて。これは自分で歩いて探すしかないと思って、それから約6年間、いろいろな空き家を見て回りました。

――豊田さんにとって、空き家の何が問題だったんですか。

豊田 空き家が増えているということは、それだけ人口が減って、コミュニティが崩壊しつつある状態だということ。私は街の風景はもちろん、そこにある昔ながらの人が近い生活が尾道の魅力だと思うんです。それに気づいたのは都会に出たとき。尾道に帰ると、こぢんまりしたヒューマンスケールがホッとする。人の顔が見える生活の心地よさがある。もし、このまま空き家が増え続けたら、尾道らしいコミュニティや景観がなくなってしまう。なんとかしたいと思ったんです。

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空き家再生第1号物件となった通称「ガウディハウス」。「ガウディハウス」とは観光マップの紹介文にあった言葉で、いつの間にか通称に。ずっと再生工事をしていていまだに完成はしていないので、そういう意味でも「ガウディ」だという(写真:大槻純一)
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