どぶ川の再生が、まちの再生には欠かせなかった
――「川の再生が、まちの再生のカギを握る」と考えたのは、なぜでしょうか。
森山:設立当時、マリンシティ運動の流れの中で、駅と港を結ぶ軸づくりの段階にきていたのですが、その軸上を流れる御祓川の汚さに愕然としたんです。それまで御祓川は、県内でも一、二を争う汚いどぶ川でした。でも実はこの川こそが、都市文化の課題を象徴する存在ではないかと気づいたんです。高度成長とともに負の遺産を流し、川は汚れてきました。でもそこに住む人たちは、この川が汚くても、違和感も、問題意識も持たない。それはまちへの思いと比例するのでは、と。ここから目を逸らしたら七尾は復活できない、そう思ったんです。
技術的に川をきれいにする方法はあるけれど、それでは根本的な問題解決にならない。大事なのは、「市民と川との関係」を取り戻すことです。誰かがきれいにした川ではなく、市民が浄化に関わることで、川の問題を「自分ごと」としてとらえてもらうことが重要。川の調査や清掃に市民が参加できるようなワークショップを開催、循環型浄化システムを手作りし、そこで育ったクレソンを使ったケーキも販売しました。クレソンケーキには、“普段口にするものを通じて、食べ物が育つ環境と自分の体はつながっている”ということに気づける商品でした。
――地域の人たちに当事者意識を持ってもらうための“仕掛け作り”が大切だと。
森山:2006年に参加した「地域リーダー養成塾」(主催:一般財団法人地域活性化センター)で、「経済的豊かさと幸せ感のギャップを埋めるものは、住民自治の充実度であり政治への参加度である」という調査結果(『幸福の政治経済学―人々の幸せを促進するものは何か』(ブルーノ S.フライ、アロイス・スタッツァー著・ダイヤモンド社)を知り、大いに共感しました。政治とはこのまちをどうするかを決め、実行すること。どんなに素晴らしい計画でも、それを実現するプロセスに自分たちの声が反映されていなければ、幸せ感は得られません。当事者意識をもって「自分のまち」をよくしたいと考える人が増えることが、地域をより輝かせると思うんです。