岩手県花巻市は、早池峰山や早池峰神楽、花巻温泉郷のほか、宮沢賢治や高村光太郎ゆかりの名所など観光資源が豊富で、県南地域では最も観光客の多いエリアだ。観光地点等入込客数をみると、2012年以降、200万人を超えている。同市の大迫(おおはさま)町では、老舗ワイナリー「エーデルワイン」が全国のワイン通にも知られるようになり、市はワインを目玉にした農業特区にも名乗りを上げる。“ブドウとワインの里”が新たな観光資源として育ち始めている。

こうした明るい話題がある一方、やはり人口減は頭の痛い問題だ。2006年の平成の大合併により、一時人口が10万人を超えたものの、2016年12月現在、約9万8000人と緩やかに人口減少が続いている。これ以上ブドウ農家が減少すると、地域の活力を奪いかねない。そこで花巻市は、担い手づくりのための施策を次々と打ち出している。

花巻市大迫町では、農地の土壌や気温に合ったブドウの品種を栽培。メルロー、リースリング・リオン、ツヴァイゲルトレーベ、シャルドネ、ピノ・ノワール、ナイアガラなど多彩。(写真:編集部)
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 大迫地区のブドウづくりは、台風で大きな被害を受けた1950年あたりにまでさかのぼる。視察に訪れた当時の国分謙吉・岩手県知事が、石灰石の土壌、雨が少なく朝晩の寒暖差が大きい気候を、「フランス・ボルドーに似ている」と評して、ブドウ栽培を推奨したのがきっかけとなったといわれている。

 「それから官民が連携して、山梨県などブドウ栽培の先進地に学びながら栽培技術を高め、生食用の大粒種の栽培、さらには醸造用の欧州系品種の安定生産が可能になった」と、花巻市蒲萄が丘農業研究所所長の藤根勝栄氏は、その歴史を紐解く。

 ワイン造りは、市場販売ができない屑ブドウ対策として始まった。1962年に大迫町(当時)と大迫農業協同組合が共同出資して、岩手蒲萄醸造合資会社を設立。そして県や市町村などが出資する第三セクターの「株式会社エーデルワイン」に生まれ変わったのは1974年からだ。

花巻市蒲萄が丘農業研究所所長の藤根勝栄氏。ブドウ栽培の技術指導から移住の世話まで行う。(写真:編集部)
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農業研究所の建物。生産技術の研究のほか、新規就農者の研修など営農支援も実施。(写真:編集部)
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研究所前にある大迫町ブドウ栽培発祥の地。老木のキャンベル・アーリーも現存する。(写真:編集部)
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