「働きたくなる観光地」を目指して

 「日本を代表する温泉地」から「時代遅れの観光地」へと衰退していた熱海市は、2006年12月の齊藤市長の「熱海市財政危機宣言」によって、切実な“危機感”が、行政、企業、市民に共有され、痛みを伴う「行財政改革」が強力に推進された。さらに、その“危機感”を背景に、行政、経済団体、観光団体、市民の連携による観光プロモーションが実現して、熱海市は「熱海の軌跡」と呼ばれる脅威的なV字回復を成し遂げることができた。

2011年を底に宿泊客数がV字回復(資料:熱海市)
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 「熱海の奇跡」を実現した立役者は、行政、経済団体、観光団体、市民と、熱海市に関わるすべての人々であり、その人たちに本気で「熱海の再生」に取り組ませたのは、熱海市の現状や将来に対する「危機感」の共有だった。ただし、危機感を共有し続けなければ、これからの持続的な発展は難しいだろう。

 「今後を考えると、人口と税収が増える見込みはありません」と齊藤市長は語る。それでも地域間競争に勝ち残るっていくためには、観光に携わる優秀な民間人材を地元に供給し続ける必要がある。

 長谷川室長は言う。「民間の事業者に稼いでいただくことがすごく重要です。行政の仕事は、その方向性や土台作りによって、地元の民間事業者にやりやすさを感じていただき、市外の方々に『熱海に来れば何かやれる』と思っていただくことです」。

 齊藤市長はこう語る。「私は『熱海で働きたい』『観光業界で働きたい』と思ってもらえる『働きたくなる観光地』をつくりたい。例えば、海外に行って外国語やマーケティングを勉強してきた人が、戻ってこられる環境や職場を用意したい。地元の静岡県立熱海高等学校の卒業生が、地元の観光業界に就職できる、就職したくなるような環境を整えたい。まだ具体的な政策があるわけではないので、業界のみなさんと一緒に考えていきたいと考えています」。