<しごとの復興>産業の観光化&観光の産業化の取り組み

気仙沼市魚市場の観光ツアーも「ちょいのぞき気仙沼」の人気プログラムだ(写真:日経BP総研)
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 気仙沼は、日本一の遠洋マグロ船の基地であり、カツオやサメの水揚げも国内トップシェアを誇る水産都市だった。ところが、2011年の震災で海沿いにあった水産業関連に施設が壊滅的な打撃を受けた。魚市場の水揚げ量は、前年の2010年の約10万3600トンから翌年は約2万8000トンに激減。それを受けて同年策定した復興計画に重点事業として、市が盛り込んだのが「観光」だ。それまで細々とやってきた景観や食を売り物にした観光を、水産業と並ぶ産業に育てようと動き始めた。

「2月には三陸沿岸道路の仙台—気仙沼間も開通する、遠くてもきてもらえるように引きのあるものを用意していきたい」と語る気仙沼市観光課の畠山勉氏(写真:日経BP総研)
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 2012年に市は、有識者や地元関係者を集めた「気仙沼市観光戦略会議」を設置。ここで議論を重ねて「観光に関する戦略的方策」を取りまとめ、中核となる2大戦略として、「気仙沼ならではのオンリーワンコンテンツを活用した誘客戦略」「水産業と観光産業の連携・融合による付加価値創造戦略」を打ち出した。

 「いままでは観光チラシを配っていればよかったが、会議では、気仙沼独自の観光商品の開発や誘客のためのマーケティングの必要性が官民で議論されました」と、気仙沼市観光課の畠山勉氏。

 震災の年には4万人を切った気仙沼の観光客の宿泊者数だが、その後、官民挙げて観光に力を入れ、2016年にようやく震災前の20万人を超えた。その後も右肩上がりが続いている。

 市が、観光の産業化をどう推し進めたのか。2013年に民間を主体に市も参画する形で「一般社団法人リアス観光創造プラットフォーム」を設立(現在は一般社団法人気仙沼地域戦略に改組)。さらに民間企業や市民も参加する「観光チーム気仙沼」も同法人が組織して、観光商品の開発に乗り出した。ここで生まれたのが、市民の力やアイデアを活用した新しい観光プログラム「しごと場・あそび場 ちょいのぞき気仙沼」だ。2015年から同法人が運営している。

 魚市場の見学や牡蠣筏体験、カツオの解体ショーといった水産業のプログラムから始まり、シーカヤックやSUP(スタンドアップパドルボード)を使ったアクティビティ、酒蔵見学、気仙沼いちごの農家体験など、気仙沼ならではの資源を活用したプログラムが人気を呼び、この3年で6000人超える観光客を獲得している。

サメの解体ツアーは、サメの解体現場から箱詰めまで見学できる「ちょいのぞき気仙沼」の人気プログラムだ(写真:日経BP総研)
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気仙沼魚市場に水揚げされたメカジキ。官民挙げて気仙沼ブランドに育てていく(写真:日経BP総研)
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 また、水揚げ量で圧倒的な国内シェアを持つメカジキを気仙沼独自のS級グルメに育てようと、気仙沼メカジキブランド推進委員会を設置。生産者や飲食店に呼びかけ、「メカしゃぶ」「メカすき」「気仙沼メカ×カレー」など、誘客につながるメニュー開発も進めている。