DMOを設立し、マーケティングに基づいた戦略を策定

 観光地としての市民の意識の醸成や観光商品づくりとともに、市が進めたのが、市、商工会議所、観光コンベンション協会がそれぞれ実施していたプロモーションやマーケティングなどの重複をなくすことだった。

 2016年、気仙沼市はDMOの先進地であるスイスのツェルマットに視察団を送り、翌年5月、ツェルマットの組織をモデルに、気仙沼市や市内の観光、産業、経済団体などによる気仙沼版DMO「気仙沼観光推進機構」(代表者は気仙沼市長の菅原茂氏)を設立している。DMOでは、市が地区戦略やハード戦略、商工会議所・商工会が人材育成や食の開発を、観光コンベンション協会が誘客営業や受け入れ案内と役割を明確化、各組織が持っていた観光サイトも「気仙沼さ来てけらいん」に一本化した。

一本化した観光サイト「気仙沼さ来てけらいん」。ちょいのぞき、ツアー、宿泊、モデルコースなど、旅のアイテムを網羅する

「各組織の代表が集まり、総合的な観光施策の意志決定を行い、市の観光予算の戦略的な張り付けも行う。そこで重要になってくるのが、観光客の行動や消費の把握とデータ化だ」と畠山氏。

 これを担うのが、前述の気仙沼地域戦略だ。観光客へのアンケート、宿泊動向、物販施設の利用者数などの各種データの収集、分析、編集を行う。理事長は、商工会議所会頭の菅原昭彦氏が兼務する。

 マーケティングデータの収集のために導入したのが、地域ポイントカードの「気仙沼クルーカード」だ。50数軒から始めた加盟店は、2月末現在、飲食29、物産21、宿泊7、アミューズメント2、暮らし・その他11、ECサイト2に拡大。会員も1万7299人まで伸ばした。

 前年のクルーカードの利用データを分析して、プロモーションの時期や商品を決める。例えば11、12月は近隣から観光客が来ているのが分かり、仙台と一ノ関に集中的にメールやチラシを配布して割引キャンペーンを打った。「ちょいのぞき」のプログラムにも、冬場に人気のある酒蔵見学などを売り込むなどした結果、販売金額は市民が前年の210%、市外在住の会員も124%に伸びたという。

気仙沼クルーカード。ポイントカードとして使え、市民、観光客、地元出身者、ボランティアなど、気仙沼とゆかりのある人たちのデータを一元化。ダイレクトマーケティングにも活用(写真:日経BP総研)
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 「いつ、どこで、何を売ればいいか、データを見れば分かる。売れない2月にいくらプロモーションしてもやはり売れないことも分かった。データを駆使して、商品のレベルを上げる、それを担える人をつくる、この仕組みをブラッシュアップして、進化させていきたい」と菅原氏。

 気仙沼市ではスイス・ツェルマットへの2回目の視察旅行を2019年度の市の予算に組み入れ、約780万円を計上した。

 「今回は、DMO関係者のほか、これからの気仙沼を支える地元の高校生にも参加してもらう。ツェルマットでは、観光データを商品企画、販売戦略、誘客のためにどう活用するか。観光ガイドの育成をどうするか、などのノウハウを収集してくるのが目的」(畠山氏)。気仙沼のDMOは次のステップに進み始めた。