移住者へのプロモーションはNPOに任せる

 小豆島町や土庄町から移住・定住促進を委託されているのが、NPO法人のトティエだ。自治体単独では、担当者が異動すると継続性が失われてしまうため、民間に任せることにした。トティエは、ノウハウを吸収・蓄積しながら、転入希望者のニーズに合わせた移住プロモーションを提案している。事務局長の大塚一歩氏も、瀬戸芸で島を訪れたことがきっかけで移住してきた一人だ。移住希望者の気持ちや島の魅力をよく知る人物といえる。

トティエ理事・事務局長の大塚一歩氏。小豆島町に移住し、オリーブメーカーに勤務した後、現職(写真:日経BP総研)
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 トティエでは、ウェブサイトや説明会などを通じて興味を持った人を対象に、移住ガイドツアーを年間4回設定している。「島内を案内したり、空き家バンクの物件を見に行ったり、島の人と一緒に食事をしたりします。無料と有料のものがあって、初めての人はフルコースの有料を選び、ほぼ決めたという人は、交流に特化した無料プログラムを選ぶ傾向がある」と大塚氏は説明する。ガイドツアー参加者の人数は30人ほど。参加者のうち移住を決めた人が2割、継続して交流している人が6割で、大塚氏によると年々参加者の熱量の高まりが伝わり、移住のきっかけとしてのイベントとして手応えを感じているという。

 「地方移住を希望している人は他の地域と比較しながら移住先を決めていく。まず、自然などの環境が気に入るかどうかから始まり、次に手頃な住居があるか、仕事があるかを考え、さらには都市部から近いか、先輩移住者や地元の人たちとの交流ができるかなどの要素で比較している。小豆島は条件がいい方だと思う」と大塚氏。

 小豆島町空き家バンク登録物件一覧表を見ると、一軒家の売買価格は平家で70万円から、賃貸は二階建てで月3万8000円から物件が出ている。「高齢化が進み、自分の代で家を処分したい人が多いので売買価格も抑えられている物件もある。ただ、まずは賃貸でという転入希望者も多く、賃貸物件が足りていないのが現状」(大塚氏)。トティエでは、物件の所有者から相談があった場合は、住宅の持ち主に家賃収入が入るメリットを説明しながら、売買物件の賃貸化を提案する活動も行っている。

 こうして一定数の移住者が毎年来てくれるようになった。次の課題は移住者の定着だ。

 「小豆島の有効求人倍率は2.1倍であり、仕事自体はある。実際、小豆島の場合、島に移住する人の約9割が地元企業で働く。とはいえ、何の仕事でも良いという人はいないので、長く働き、楽しく島ぐらしをしてもらうためにも各人が納得する仕事をマッチングしてあげないと難しい」(大塚氏)。

 一方、カフェなどの飲食店の開業を目的に移住を考える人もいるが、「観光客は限られた時期にしかやって来ないので、年間を通して一定の収入を得るには、やはり地元の人に愛される必要がある。続いている転入者の店は、それぞれ新しい価値を提供することでリピーターを生んでいる。そういった現状を押さえ、相手の立場に立って相談に乗らないと、結局、定住は難しくなる」という。

 町では、移住者の定着率を5割に目標設定している。「少なくとも5割をキープできるようにして、さらにその上を目指して施策を打っていく必要がある。島内での交流を増やすこと、離職率を減らすことが定住を増やす鍵になる。福利厚生や休日の取得、ITの導入をはじめとした生産性の向上など、受け入れ先となる企業と一緒に働き方改革についても、取り組んでいかないといけない」と話す。