瀬戸芸が地域と島外を結ぶ

 瀬戸芸は2019年で4回目を迎える。香川県と岡山県の2つの沿岸部の港と12の島々が会場となり、国内外の現代美術家が参加する。この期間、会場を巡る船は増便され、受入側の島の事業者やボランティアの住民たちも大忙しとなる。今年の瀬戸芸の春会期(4月26日~5月26日)は、10連休の恩恵もあり、全会場で38万6909人と前回の1.5倍の来場者数を記録。夏会期(7月19日~8月25日)も、会期が前回より短かったり、猛暑や台風の影響があったりしたものの、1日当たりの来場者は前回を上回り、31万8919人が来場した。9月28日からは、秋会期が開催中だ(会期は11月4日まで)。

 瀬戸芸においては、小豆島は直島に次いで多くの来場者を集める島だ。「(インスタレーションが多い)現代アートは、展示期間が終わったら撤去されてしまうものも多い。だが、芸術祭の島という評判と大勢の転入者とが残った」と、小豆島町の松本篤町長は芸術祭の果たす役割について語る。

 瀬戸芸は、アートを媒介に地域と島外をつなぐことがテーマのひとつにもなっている。2013年の第二回の瀬戸芸から小豆島の拠点となる「福武ハウス」を担当してきた福武財団の大内航氏は、「地元では現代アートのことはわからなくても、地域に元気をもたらす起爆剤として期待は大きかった」と話す。

 福武ハウスは、廃校になった福田小学校を使ってアジアのアートを展示するほか、パフォーマンスイベントも開催する。芸術祭の準備やイベントの開催時には、地域住民をはじめ、島外に出た学生たちが戻ってきて、ボランティアとして参加する。

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福武ハウス(小豆島町福田)。今年は2階部分をアジア・ギャラリーとして展開(左)。右は体育館。福田アジア食堂としてアジアの料理を地域住民がふるまう(写真:日経BP総研)

 芸術祭はもちろん、それ以外の時期にも地元の子どもたちを対象に英語教室が行われ、地区の人たちがやアジアの人たちを巻き込んで運動会を実施するなど、福武ハウスを中心に、地域の連帯感を深める活動が行われてきた。

 福武ハウスのある福田地区は、関西からの玄関口である福田港がある。かつては良質の花崗岩の産地で石材業、海運業で栄えたところだが、時代と共にその賑わいも薄れ、人口も減っていった地域だ。

 「廃校になってからは、世代間交流の場が少なかった。そこで多世代が集まれるイベントが求められていた」と大内氏は話す。地域に芸術祭が根付くことで移住者も現れた。福武ハウスは、住民との交流を促す役割を担っている。