「若者の移住が続く町」として注目を集める長野県諏訪郡下諏訪町が、今、さらに移住を加速するためのプロジェクトに取り組んでいる。運用停止となった施設「労災リハビリテーション長野作業所」の寮や職員用共同住など(延べ面積約5000m2)をリノベーションして、若者を中心とする移住者向けの住居として、新たなコミュニティ形成に利用する計画だ。このプロジェクトの取材を進めると、下諏訪が若い移住者を呼び込める理由が浮かび上がってきた。

リハビリ施設を移住者の住まいへリノベーション

 下諏訪町は、7年に一度開かれる御柱祭のメーン会場となる諏訪大社・下社春宮、下社秋宮がある諏訪湖のほとりに位置している。人口は1970年の約2万7000人からじわじわと減少し、現在は約2万300人だ(2018年10月1日現在)。一方で、10年ほど前から20代、30代の若い移住者が毎年のようにやってきて開業するようになり、かつて半数が空き店舗だった中心部の商店街では空き店舗ゼロまで復活してきた。

 この町の高台で厚生労働省所管の独立行政法人労働者健康福祉機構が運営していた「労災リハビリテーション長野作業所」が、2015年9月、運用停止となった。敷地面積約4000坪(約1万3200平方メートル)、建物延べ床面積約1600坪(約5265平方メートル)の大規模な施設だ。それから1年半後の2017年3月末、下諏訪町は、跡地を約5800万円で厚労省から取得、移住者施設「ホシスメバ」として再生させるプロジェクトを進めている。

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移住者居住施設「ホシスメバ」としてリノベーションが進められている「労災リハビリテーション長野作業所」。「ホシスメバ」の名は、施設が位置する下諏訪町星ヶ丘地区の「星(ホシ)」と、2017年2月に御田町商店街にオープンした下諏訪町の移住者相談施設「ミーミーセンタースメバ(mee mee center Sumeba)」の「スメバ」を合わせて名付けられた。(写真:佐保圭、以下同)

 施設の敷地は「第一種低層住居専用地域」に指定されているため、基本的に「住居」としてしか使えない。1966年に建てられた体育館や事務室などの本館は、現在の法規に則って使えるようにするにはコストの負担が大きく、リノベーションは現実的ではない。そのため、再利用するのは1994年以降に建てられた寮や職員用共同住宅などに限られる。町はここで、どのような入居者を想定し、どんな将来像を描いているのだろうか。

 2004年から4期14年にわたって下諏訪町長を務める青木悟町長はこう語る。

 「今の時代、技術力を磨いて、独立して商売したいという若者はたくさんいます。しかし、首都圏では、実力はあっても、自分の店舗を持つのは難しい。今はネット販売ができるので、技術力さえあれば、地方でも商売できる。クラフト作家でも、小説家でもいい。下諏訪に移住して、本当に安い家賃でホシスメバに住みながら、将来の夢にチャレンジする若者を募集したい」。

 ホシスメバでは、2018年10月31日に予定されるオープンまでに、ストックルーム(約7㎡)を含む約29㎡のワンルーム4部屋が用意される。家賃は、月額20,000円(共益費5千円を含む。入居する部屋の電気代は実費)。同等の部屋を下諏訪町で探すと、賃貸アパート(1K)の相場が約4万円、「築30年近く」など条件的に厳しいものでも約3万円なので、家賃はかなり安い。

 ただし、ホシスメバは「住みながら起業創業を目指したり、街を体感する中期的な滞在拠点」と位置づけられるため、入居条件は「下諏訪町内に本拠地を置いて起業・創業する人、あるいは、事業する事業主」または「下諏訪町内に移住を検討している人」で、入居年数は「1年~3年以内」となっている。

 また、2020(平成32年)度以降に工房や店舗として利用できるように、用途地域の変更の準備も進められている。

 2018年10月1日現在、まだ入居者は決まっていないが(※)、都市圏で一般企業や自営業で自立し、新たな活躍の場を求める30代から50代の問い合わせが多いという。

<追記>
※ その後、ホシスメバの居住募集に関して、4室の募集に対して11件の希望があり、移住希望者やクリエーターなど4組の入居が決定した。 [2018/11/05 8:50]

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下諏訪町の青木悟町長