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新・公民連携 円卓会議 2016

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地方創生を本音で徹底議論する

新・公民連携 円卓会議 2016

構成:守山 久子=ライター【2017.3.31】

個性と制度のはざまで現況を打破するには

――建築もそうだが、農業も外から人が行くと警戒されるのではないか。

小池(ベジタリア) 隈氏が語ったように、外部の人間が地域に入り込むことは簡単ではない。私も農業を始める際に苦労した。

 現在、全国には約42万ヘクタールの耕作放棄地があり、後継者が不足している。こうした実態を踏まえると、農地は簡単に借りられるだろうと思っていたが、そう甘くはなかった。背景には、外からやってきてすぐ離農してしまう人が少なくないという現状もある。時間を掛けて溶け込んでいく努力をして、ようやく地元に受け入れてもらえた。

――その後、ICTを活用した農業支援サービスを展開していくが(*3)、やはり現場に入らないと開発できないものなのか。

小池 私たちは地元の生産者らと組み、収集した圃場のデータを農作業の品質向上や効率化に生かす支援システムを開発してきた。

 自然を扱う農業を対象とするので、理論に基づいてプログラムを構築すればよいというわけにはいかない。実際に作業してみないと分からない点が多い。新潟市や北海道余市の開発拠点では、地域で農作業もしながら開発作業を進めている。

*3 例えば農業用圃場環境モニタリングシステム「フィールドサーバ」は、収集データ(温度・湿度・日射量や農場の映像の記録など)により、データに基づいた栽培管理が可能とする。スマホやタブレットでデータ確認もできる。水稲向けの水管理支援システム「パディウォッチ」(写真・設置イメージ)は、センシング技術を使って水田の管理作業を効率化する。
(写真:ベジタリア)

 このように地域密着の仕事をしていると、外部からやってきた我々も、次第に自然をはじめとする地域の多様な“お宝”を実感するようになる。

 都市から移住すると不便なことも多いが、都会とは違う価値観を見つけ出し、それを楽しんでいる自分に気付く。生活と仕事が充実した先に、明るい未来の社会を描くことができる。自分自身がそこに住んでハッピーになりたいという気持ちが地域活性化の原動力になっている。

 結局、「地方創生」は、外から言われてするものではなく、やりたいと思った人が主体となって進めるものなのではないか。

――地方創生の主体は誰か、という話になったが、地方を拠点とする挾土さんの意見を聞きたい。

挾土(職人社 秀平組) どの街にも、5年から10年を掛けて本物をじっくりつくっていくプロジェクトが1つぐらいあっていいのではないか。

 イベント型の仕掛けを試みても、一時的な効果しか生み出さない。地域ごとに蓄積してきた技と、その技が生み出す本物の景観こそが、人を呼び込む大きな武器になる。

 しかし、その景観をつくってきた職人はどんどん減っている。職人が残っている今のうちに本物を積み重ねていく作業を行う必要がある。

――職人の技術の継承は、かなり危機的な状況なのか。

挾土 職人の仕事を地道に続けていくには根性が必要で、弟子を育てることは難しい。特に最近はテレビやスマホが普及して多くの情報が出回るようになったため、若い職人の関心がほかのことに移りやすい。そういう環境の下で、後継者をどう育てていくのか、頭を悩ませている。

 また、外国人と日本人のどちらを対象にするかで、まちづくりの方向性は変わる。外国人観光客が増えると、地域の店も外国人仕様になっていくからだ。すると目の利く日本人は離れていってしまう。彼らを呼び戻すために、地元の良い場所を1泊2日で回ってもてなすルートをつくるなど、まちづくりの在り方を改めて検討することも必要ではないか。

 もう1つ、地域でユニークな取り組みをしようとすると、既成の法律の制限があって動けないことも多い。ずっと取り組んでいる「歓待の西洋室」(*4)でも、そうした理由で進まない部分もある。

*4 仲間たちだけの手で、当時と変わらない技能で現代の良さと融合させた復元を目指す。プロジェクトは十数年におよび、現在も進行中だ。挾土氏の自邸もまた、技術の粋を集めた空間だ(写真)。こちらは「和」をテーマとしている。
(写真提供:挾土秀平)

 地域に見合った「小特区」や「極小特区」をつくるなど、個性とエネルギーを持ったやる気のある人を許容する制度はできないものかと思う。

 地方創生では特に、個人をベースにした取り組みが重要になる。組織的な動きが色濃くなると、相性が合わない部分が出てくる。

井熊 最終的に大切なのは人だ。魅力を持つプロジェクトであれば、どこかにその価値を理解してくれる人がいる。その人を見つけると、道が開けていくのではないか。良いプロジェクトを企画することが先にあり、法や制度は後から付いてくるものと考えている。

――個々のプロジェクトから現状を変えていく一方、制度をいかに突き動かすかという役割も民間にはある。森ビルはこれまで再開発に合わせて制度提案を試みてきた。

河野 六本木ヒルズ(2003年開業)の都市計画原案ができたのは、1992年。スマホもない時代だ。開業の11年も前に計画して世の中に出る頃には、技術進化とともに、ライフスタイルもビジネススタイルも大きく変化している。法律や制度はこうした時代の変化に適応していない。

 技術革新がさらに加速する中、特区を活用したり、条例も法律も緩和する運用を取り入れたりするなどして、変化を広く受け止められる柔軟性や可変性ある都市計画や建築制度が必要だ。そうすることで、新しいビジネスや文化が生まれ、雇用も創出できる。

涌井(東京都市大学) 昨今は官と民の癒着に対する目が厳しくなり、省庁が民間企業と話をするテーブルが無くなっている。それでも、民間の率直なニーズをぶつけることで法律が変わる場合もある。これから国会に提出される予定の都市公園法の改正案はその一例だ。

 国内にはこれまで総面積12万ヘクタールの都市公園が整備されてきた。ところが行政側は量的水準の達成で満足し、財政収縮が求められると、公園をできるだけ使わせないように様々な行為を禁止する。その結果、価値のない場所がまちなかに残されるという状態を生み出した。

 民間企業から見れば、これほどもったいないことはない。公園を明るく整備してカフェでも設ければ、人が集まる楽しい場所になるだろう。ところが現状の都市公園法には屋外広告物規制などがあるため活用が難しい。そこで私たちは、「公園はいったい誰のためのものか」という原点に立ち戻って法を見直すよう提起した。それにより都市公園法は、民間の活力を大幅に導入する方向で改正案がまとまった。

赤池(ユニバーサルデザイン総合研究所) 行政に働きかける際には、市場でユーザーを動かす手法を具体的に示すと効果的だ。

 例えば、林野庁による国産木材の振興策といえば、大規模な木工団地や林道の整備という供給者向けのプロジェクトが中心だった。それに対して私たちは、商流の末端にインセンティブが付く、「木材利用ポイント」の補助事業を提案し、制度設計をサポートした。その結果、3年間で約1800億円の経済波及効果を生んだ制度が実現した。さらに、より先導的な木材活用モデルを顕彰する、「ウッドデザイン賞」(*5)というアワードも生まれた。

*5 ウッドデザイン賞は2015年に創設された(林野庁の補助事業)。2016年は、外板やフレーム、内装などに木を使ったトヨタ自動車のコンセプトカー「SETUNA」が大賞を受賞。
SETUNAの外観(写真:トヨタ自動車)

 ポイントは、市場に大きなインパクトを与える大企業との連携の道筋を描くことだ。「木材利用ポイントを立ち上げれば、大手ハウスメーカーが国産の地域材を用いた住宅商品を積極的に企画販売するようになる」というシナリオを提示すると、行政も納得して動きやすい。

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