2017年6月に、都市公園法、都市緑地法、生産緑地法等の一部を改正する法律が制定・施行され、これまでにも増して公園に民間活力を導入しやすくなりました。公園のみならず、緑地や都市農地においても、民間セクターの活動・活躍により、良好な都市環境の維持・保全、活力の創出などを促進する仕組みの導入が進んでいます。

この連載では、民間の力を利用した、都市のオープンスペースのサステナブルな空間利用について考えていきます。まずは4回に分けて、今回の法改正の背景や内容について解説していきます。

料亭や茶屋、旅館があった場所が、明治時代に「公園」になった

 近代都市公園制度は、1873年(明治6年)の太政官布達に端を発しています。「公園」という言葉、概念すらなかった明治維新直後のことです。

写真1●日比谷松本楼本店
この建物は3代目となる。日比谷公園がオープンした1903年(明治36年)に同公園内に開業し、今も人気のレストランだ(日経BP総研)
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 当時は、都市に様々な効用を発揮するために必要な公共施設として、オープンスペースを税金で設置し維持・管理するという考え方はありませんでした。もともと「群集遊観の場所」だった空間を、「公園」として指定していったのです。このため、大阪の浜寺公園や奈良の奈良公園などのように、公園内に料亭や茶屋、旅館などが存在したという記録は少なくありません。その後、東京市区改正事業で1903年(明治36年)に誕生した日比谷公園においても、公園が誕生した当初から、レストラン「日比谷松本楼」(写真1)などの民間商業施設が存在していました。

 太政官布達当時、「公共施設としての公園」という概念が存在していなかったわけですから、明治新政府の府県の中には、公園の維持・管理予算など想定すらしていなかったケースもあったようです。実際、民間施設との連携によって維持・管理費を生み出していた公園もあります。例えば、当時の東京府では、上野公園の中の料亭や浅草公園の茶屋、貸借に付された土地などの土地使用料・賃借料等の収入を、公園の維持・管理のためだけでなく、その後の新規の整備(公務員の人件費も含む)にまでも充当していました。税金を使わない公園経営が、第二次世界大戦前まで行われていたのです。

 このように、公園内に飲食物販の施設が存在する事例が全国で多く見られたこともあり、1956年に制定された都市公園法には、公園管理者の許可を受ければ、公園管理者以外の者が公園施設を設置できる「設置管理許可制度」が設けられたのです。

 だたし、当初は、公園施設を設置できるのは「自ら設け、又は管理することが不適当又は困難であると認められるもの」に限定されていました。つまり、地方公共団体以外による公園への施設設置は消極的に解されていたといえます。

「設置管理許可制度」が拡大――2004年の法改正

 その後2004年の都市公園法の改正では、「公園管理者以外の者が設置した方がその公園の機能の増進につながると認められる場合」についても施設の設置が許可されるようになりました。しかし、民間活力を積極的に導入して公園施設を設置しようという機運は、大きく盛り上がることはありませんでした。その背景について、国交省都市局公園緑地・景観課の町田誠課長は次のように解説します。

 「あくまで一般的な傾向としてですが、公用(共)の財産と、民間の経済活動が混在するという概念は、現代の社会通念上、許容されにくい風潮が戦後、醸成されて行ったと考えています。歴史的な経緯から公園の中に許可されていた『私権』は、時代の経過とともに『制限(滅失)』されていったと言えます。民間企業からの提案があったとしても、地方公共団体に求められる『中立・公平・公正』『透明性・説明責任』などの行動規範が、民間事業の参入を容易なものとしなかったという傾向はあると思います」

 とりまとめて言えば、明治初期に生まれた公園は、現在とは質的にはかなり異なっており、民間の施設などと共に存在していましたが、時間の経過と共に現在多く見られるような公園の姿、すなわち、「公的な土地の上では民間の営業的な施設が存在することは好ましくない」という認識の下で管理・運営されている公園の姿に至ったと言えるでしょう。

 しかしながら、様々な課題に直面する地方公共団体では、民間の知恵やノウハウ、資本の活用に積極的に取り組む公園も出てきています。その一例が、大阪市からの設置管理許可を得て、近鉄不動産が整備・運営している天王寺公園「てんしば」(写真2)です。7000m2の芝生広場を中央部に据え、周囲に飲食店、宿泊施設、フットサルコートなどを配し、賑わいを生み出しました。近鉄不動産は、2015年10月1日のリニューアルオープンから約2年半で、総来園者数が1000万人を超えたと発表しています。群集遊観の場所にふさわしい姿ですね。

写真2●設置管理許可により民間事業者が整備した大阪市の天王寺公園「てんしば」
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芝生広場を整備して人気の「てんしば」。リニューアル後2年半で1000万人以上が来園した(写真・資料:国土交通省)

アメリカ山公園に見る新しい公園の姿――立体都市公園制度

 2004年の都市公園法改正では、立体都市公園制度も創設されました。これは都市公園の区域を立体的に定める、他の施設と都市公園を一体的に整備することで、土地の有効活用を図り、都市公園の効率的な整備を図ることが目的です。

 これは公民連携という観点からも活用可能な制度です。この制度を活用した横浜市のアメリカ山公園(写真3)は、横浜高速鉄道みなとみらい線「元町・中華街駅」駅舎の上部空間と隣接する公園用地を一体的に都市公園として整備したもので、市が公園用地内に駅舎と一体となる建築物を新築しました。2009年に一部オープン、2012年に全面オープンしました。

写真3●立体公園制度を活用したアメリカ山公園
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施設上部を公園にした横浜市のアメリカ山公園。右の断面図のように、公園区域の施設に保育施設や結婚式場などのテナントが入る。管理・運営は、アメリカ山公園パートナーズ(代表企業:西武造園、構成員企業:横浜緑地)が行っている。(写真・資料:西武造園)

 なお、この公園は管理許可制度を用いて管理運営事業者を公募しています。公園下となる建物の3階、4階は公園施設としてテナントを募集。賃料収入を得て、市には所定の公園使用料を納付しますが、納付にあたっては公園の管理に必要な経費は差し引かれるという事業スキームとなっています。

公園面積の約5割が指定管理

 都市公園への民間参入促進に大きな影響を与えたのが、2003年の地方自治法改正により設けられた指定管理者制度です。これにより、地方公共団体ではなく、民間企業やNPO法人などが公園の管理全体を行えるようになりました。従来は、地方公共団体と地方公共団体が出資する法人(いわゆる外郭団体)に限定されていた公共施設の管理が、指定管理者制度によって、一般の法人その他の団体にも開放されたのです。

 指定管理者制度の対象となっている公共施設は様々あります。種類としては、公営住宅、集会所・コミュニティセンター、図書館、公民館、高齢者施設、児童館・学童クラブなどいわゆる箱モノ系の施設が多いのですが、その中で都市公園は、道路や河川など、いわゆる社会資本グループの中で、指定管理の導入数が突出して多い施設となっています。

 その数は年々増加し、数にして全国の都市公園の12%に相当する1万3000カ所。面積ベースでは約50%が指定管理者制度による管理が行われています(2015年度末)。特に近年では、民間事業者が指定管理者となる都市公園が増加していることも特徴です(図1)。

 当初は特に、運営コストの削減が主な導入目的である場合も多かった指定管理者制度ですが、民間事業者などの創意工夫を活かした自主事業やイベントなどを公園で実施することにより、都市公園の賑わい創出はもちろんのこと、行政から得る指定管理料以外の自主的財源確保に取り組む例も増えてきています。

図1●都市公園における指定管理者制度の活用状況
(資料:国土交通省「都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用ガイドライン」)

 なお、PFIは公園施設の公民連携手法としてはあまり採用されていません。都市公園においては、先に述べたとおり、公園管理者である地方公共団体が、地方公共団体以外の者に公園施設の設置および管理(運営、経営)を許可できる制度が、法律の制定時より存在していたこともあり、手続きが複雑なPFI制度をあえて採用する動機は薄かったのかもしれません。

 ただし、水族館、プール、総合競技場など、比較的財政負担の大きい大規模施設の建設および管理運営には、PFIが比較的よく活用されています。競技場のように収益性が低い事業はサービス購入型PFIが、水族館のように収益性が高い事業は独立採算型PFIが採用される傾向にあります。

 このように、日本の都市公園はすでに様々な形で、民間活力を導入し、公民連携を図る仕組みが備わっていたのです。では、今回(2017年)の法改正のポイントはどこにあったのでしょうか。次回はその点を中心に解説していきます。

ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/。4月24日に都内で設立記念シンポジウムを開催する(会場:内田洋行ユビキタス協創広場CANVAS)。

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/032600001/