公園など都市のオープンスペースのサステナブルな利活用について考えていくシリーズ「公園が変わる! 街が変わる!」。全3回にわたって、公園と地域をつなぎ、公園における市民の活動をサポートする「パークコーディネーター」の役割について解説していきます。今回は、東京都内の多くの公園にパークコーディネーターを派遣しているNPO birthの佐藤留美事務局長が、パークコーディネーターが市民とともに企画をつくり上げていくプロセスを紹介します。

公園特性と地域特性を把握し、そのポテンシャルを地域のパートナーとともに引き出すことで、公園の個性(オリジナリティー)が際立ってくる(資料:NPO birth)
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 パークコーディネーターが公園づくりを考える際、まず着手するのが公園と地域のポテンシャルを掘り起こすことです。それぞれの公園には特性があり、それは地域の特性と相互に関連し合っています。この「公園の特性」と「地域の特性」の2つを把握することで、公園づくりの方向性が明確になり、地域の様々な力を公園に呼び込みやすくなります。

 公園の特性としては、立地や面積、設置目的、施設の種類、自然環境、利用者の属性、ボランティア活動などがあります。地域の特性としては、公園を取り巻く土地利用、学校などの施設の有無、アクセス、ステークホルダーの種類などがあります。公園と地域のポテンシャル(潜在力)を、産官学民、多様なパートナーとともに引き出すことで、公園のオリジナリティー(個性)が際立ち、公園づくりの方向性が見えてきます。

公園がパートナーを求めていることを発信する

 パークコーディネーターが次にすべきことは、これらのポテンシャルをともに引き出してくれるパートナーを集めることです。しかし大抵の場合、市民は自分が主体的に公園づくりに関われるとは思っていません。公園は「ルールばかり多くて」「自由度が低くて」、自分が関わるには「ハードルが高い」場所だと思われているのです。ですから、公園を変える第一歩は、市民自身に、「公園に関わるのは難しいことではなく、楽しいことなのだ」と気づいてもらうことです。

 そのためには、市民も公園管理者側も、双方が意識を変えることが大切です。一方的に苦情を届ける/受ける、という関係ではなく、公園についてともに考え、ともに実践するパートナーとして認識し合うのです。

 公園管理者が、公園づくりの方向性を打ち出し、パートナーを求めていることを内外に示していくことで、状況は改善されていきます。公園側の考えや姿勢を、公園のパンフレットやホームページ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など様々な媒体を活用し、積極的に発信していきます。

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武蔵野地域の都立公園では、地域の産官学民の連携で公園の可能性を広げ、まちづくりに貢献することをコンセプトとし、パンフレットやWebサイトに記載している。このチラシは、指定管理者が目指す公園づくりの方針を紹介するパンフレットである。指定管理者は西武・武蔵野パートナーズ(西武造園、NPO birth、ミズノスポーツサービス、防災教育普及協会)(資料:NPO birth)

 また、市民主体のワークショップやボランティア体験など、市民が気軽に公園づくりのパートナーとして参加できる「取っ掛かり」をつくることはとても効果的です。公園スタッフと市民がたびたび顔を合わせることで、お互いに話しやすい関係づくりができて、新たなプロジェクトが生まれやすくなります。

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都立武蔵国分寺公園で行っている「ちょいボラDAY」。誰でも気軽に園内のガーデンや雑木林でのボランティア活動に参加できる。このプログラムに社員が参加したことをきっかけに、近隣のリオン株式会社が公園で定期的にCSR活動をすることにつながった。毎週の園内作業に加え、人工池の水質浄化など企業の技術を生かした活動にも広がっている(資料:NPO birth)

3つのステップで市民企画を実現

 パークコーディネーターは、(1)アウトリーチ、(2)マッチング、(3)コーディネート――という3つのステップを踏んで、市民企画の実現につなげます。

 まず「(1)アウトリーチ」活動として、積極的に公園外に出ていき、地域の中でネットワークを広げます。そこで得られた情報から、パートナーとなりそうな人たちを「(2)マッチング」します。プロジェクトチームが結成されたら、内容の相談に乗ったり公園のルールを説明したりなど、企画を具現化するための「(3)コーディネート」を行います。

 このようにして、市民から生まれた意見やアイデアという「種」を育てて芽吹かせるのが、パークコーディネーターの役割なのです。

パークコーディネーターは、地域のニーズを拾う「(1)アウトリーチ」、主体同士をつなぐ「(2)マッチング」、企画の具現化に向けた「(3)コーディネート」という3つの段階を踏んで、市民企画を実現する。写真は、まちづくりに関わる人々が集まるワークショップに参加し、公園の利活用について意見交換を行うパークコーディネーター(国分寺市「ローカルテーブル」にて)(写真:NPO birth)
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パークコーディネーターが活躍する場を広げる

 これからの時代は「共創」の社会と言われています。まさに、いま求められているパークマネジメントは、多様な立場の人たちとともに新たな価値をつくり出すことであり、その担い手となるのがパークコーディネーターなのです。しかし、パークコーディネーターが携わる公園はまだまだ少数です。今後、その活躍の場を広げていくための方策を3つのポイントに分けて解説します。

1.「中間支援組織」と連携する

 中間支援組織とは、社会課題の解決のために異なるセクター間に立って調整や連携を図る「コーディネート・マッチング機能」と、中立的な立場で最適解を導く「ソリューション開発機能」を持つ組織です。形態としては、NPOや第三セクター的なものなどがあり、各分野に卓越したコーディネート力を持つスタッフが所属しています。

 みどりに特化した中間支援組織は日本ではまだ少数ですが、海外では公園管理者がこうした中間支援組織と連携するケースや、中間支援組織自体が公園管理を行う事例が多く見られます。これらの組織にはパークコーディネーターとしての役割を担うスタッフが所属しており、地域の市民や企業など様々な主体と連携しながら、イベントやボランティア活動の運営を担っています。またニューヨークなど、中間支援組織を創設すること自体をサポートしている自治体や企業も少なくありません。なぜなら、中間支援組織の存在によって公園緑地の利活用が加速し、地域の経済や安全、環境保全などに大きなインパクトを与えることが明らかだからです。

 前回(第11回)紹介した都立武蔵国分寺公園では、JV(共同企業体)である指定管理者の1つに中間支援組織が所属することにより、パークコーディネーターが配置され、公園と地域の活性化が飛躍的に発展しました。中間支援組織との連携は、エリアマネジメント活動の推進にもつながります。

ニューヨーク市の中間支援組織「Partnership for Parks」のコーディネーターは、パークボランティアのコーディネートや市民グループの立ち上げ支援などを担っている。左の男性が、ボランティアイベントで作業内容を説明するコーディネーター(ニューヨーク、イーストリバーパーク前の歩道橋)(写真:NPO birth)
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筆者も公園前の歩道橋のペンキ塗りのボランティア作業に参加。知らない人同士も一緒に作業することで仲良くなり、おしゃべりも弾む。コーディネーターの存在が参加者に安心感を与えている(ニューヨーク、イーストリバーパーク前の歩道橋)(写真:NPO birth)
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2.指定管理者の選定にパークコーディネーターの導入を条件とする

 パークコーディネーターを公園に配置することで、様々なリソースを公園に集めることが可能となり、決まった予算以上の効果が望めます。指定管理者の公募の際には、パークコーディネーターの配置を条件として盛り込むことが推奨されます。

 東京都西東京市では、市立公園の指定管理者募集の際に、「市民協働担当」を配置することを条件としています。この連載の第6回で取り上げた西東京市いこいの森公園では、NPO birth所属のパークコーディネーターが市民協働担当として、市民グループの支援や地域連携のイベント企画、小規模公園の活性化などを推進しています。

公園でのイベントは、パークコーディネーターがテーマに応じた連携先をチョイスしながら企画を立てていく。写真は、団地のエリアマネジメント組織と連携したマルシェ。地域の店舗やアーティスト、農家など、互いのネットワークを生かしたラインナップで、参加者も出店者も満足度の高いイベントとなっている(西東京市立ひばりが丘西けやき公園)(写真:NPO birth)
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「みんなで育てる小さな公園プロジェクト」では、小規模公園を利活用したいという市民の活動をパークコーディネーターがサポートしている。写真は、市民企画のイベント前に来園者を迎える準備として、ペンキが剥げたブランコの塗り替えをしている市民グループ「ひばり日和。」の活動の様子(西東京市立住吉町第三公園)(写真:NPO birth)
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3.行政側も連携促進の体制を整える

 行政側が公民連携のための支援やサポート体制を整えることは、指定管理者など民間の公園管理者にとって大きな力となります。前述の西東京市では、指定管理者側だけではなく、同市みどり公園課の内部にも市民協働担当を置き、双方の連携により成果を上げています。

 加えて、行政内の他部署間との連携も重要です。公園行政の守備範囲は、教育、健康、福祉、環境、経済、防災、まちづくりなど、軽々と縦割り組織を超えてしまいます。公園はいわゆる「公園課」だけでは担いきれない社会資本なのです。このことを踏まえたうえで、部署間連携を進めることができれば、分野を超えたパートナーが顕在化し、相乗効果が生まれていくでしょう。

 とはいえ、行政内部で体制を変えていくには時間がかかるのも事実です。そこで、公民連携の事業を進める際には、中間支援組織がプラットフォームとなり、パークコーディネーターが外側から行政内部の部署間の連携を図るという方法もあります。

 また、市民協働事業や民間事業者による提案制度なども、行政として公民連携の強化に活用できる施策です。仙台市では、市民協働事業提案制度において設定されたテーマ「まちの魅力を高める公園の利活用」に対し、NPO法人都市デザインワークスの提案する「西公園パークマネジメント社会実験事業」が採択され、成果を上げています。具体的には、市民協働推進課と公園課、市民活動団体、専門家が運営メンバーとなり、「西公園4WEEKS」を開催。園内に設置したパークハウスに、コーディネーター業務を担うパークマネージャーが常駐し、公募したパークキャストとともに多種多様なプログラムを展開しました。

仙台市での「西公園パークマネジメント社会実験事業」の様子(写真:NPO birth)
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 多彩なパートナーが公園づくりに参画し、公園の利活用が進んで多くの人々が集まるようになれば、地域全体の活性化に必ずつながります。パークコーディネーターの活躍の場が広がることで、まちなかの公園緑地がその価値を最大限に発揮し、ひいてはサステナブルな都市づくりにつながるのです。

 次回は、公園の現場で、パークコーディネーターがほかの専門スタッフとどのようなコラボレーションによってパークマネジメントを進めているかについて、具体例を交えながら紹介したいと思います。

ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/040600014/