市民や民間から始まった公共空間の改善

 様々なパートナーシップの制度を理解するために、その制度が生まれた経緯を少し解説したいと思います。

 1980年代、治安が悪い状況が続く中、公園を安全に使いたいという市民の要望が高まりました。1990年代に入ると、当時の市長ルドルフ・ジュリアーニ氏は犯罪の撲滅に尽力し、市全体で徹底的な街の再活性化に取り組みました。NY市公園局も長年放置されていた空き地の対応や公園の維持管理に努める中、公園改善を求める市民による地域グループが形成されます。後に組織となり、非営利団体(NPO)のコンサーバンシー(Conservancy)が誕生しました。その最初の例が現在セントラルパークを運営するセントラルパーク・コンサーバンシー(Central Park Conservancy、CPC)です。

 コンサーバンシーの多くは民間の申請により発足し、特定の公園運営を目的に、市から毎年管理委託費を受け取り、資金集め、企業や市民からの寄付、公園内での飲食店やプログラムによる収入などを得て公園運営を行う団体です。そして、これらの団体は公園局と連携して活動します。しかし、全てのコンサーバンシーの活動内容が同じとは限りません。CPCは自ら収入の75%を賄い、専門のガーデナーや清掃員などを含めて350人以上を雇用するNPOです。一方で、全員がボランティアで公園のプログラムのみを行う団体もあり、その契約形態はそれぞれの団体がもつ裁量や目的により多種多様です。

セントラルパークでは、年間88億円の経常予算を募るセントラルパーク・コンサーバンシー(Central Park Conservancy)が公園を運営する(写真: Central Park Conservancy)
セントラルパークでは、年間88億円の経常予算を募るセントラルパーク・コンサーバンシー(Central Park Conservancy)が公園を運営する(写真: Central Park Conservancy)
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ハンターズ・ポイント・サウス・パークでは、ボランティア中心のハンターズ・ポイント・パークス・コンサーバンシー(Hunters Point Parks Conservancy)が公園を運営する(Hunters Point Parks Conservancyの ウェブサイトより)
ハンターズ・ポイント・サウス・パークでは、ボランティア中心のハンターズ・ポイント・パークス・コンサーバンシー(Hunters Point Parks Conservancy)が公園を運営する(Hunters Point Parks Conservancyの ウェブサイトより)

 1990年代になるとBID(Business Improvement District )組織によるエリアマネジメントや、修復事業(Restoration Project)を手掛けたり、商業活動の斡旋・振興や地域の環境向上に努めたりするNPOが目立ってきます。公共空間の改善に、さらに民間が立ち上がったのです。

 BID組織は一般的に、一定エリアの商業活動の斡旋・振興活動を行うNPOであり、公園の運営に特化しているわけではありませんが、中にはブライアント・パーク・コーポレーションのように公園管理も行うNPOもあります。BID組織はNY市の中小企業局(NYC Department of Small Business)と契約を交わし成立しますが、公園も管理する団体は公園局とも別に契約を交わします。現在多数あるこれらの団体は、必要に応じて市民や民間によって形成されたもので行政はその形成に関与しておらず、各々の団体で管轄エリア、規模、裁量が異なります。