民間の力を利用した、公園など都市のオープンスペースのサステナブルな空間利用について考えていくシリーズ「公園が変わる! 街が変わる!」。第9回と第10回は、米国ニューヨーク市公園局に勤務する島田智里氏が、公民連携による公園管理の取り組みをリポートします。第10回は、民間企業や地域団体、ボランティアなど様々な組織が規模や裁量に応じて関わる多彩な公民連携の姿について解説します。

 前回は戦略的パートナーシップによる、公園管理運営団体とニューヨーク市(以下、NY市)公園局との関係性について解説しました。そのような大きな組織以外にも多くの支援団体が存在し、それらを対象とした公民連携があります。例えば、戦略的パートナーシップの団体より規模が小さい団体、取り組み内容をさらに限定した団体、または公園管理に特化しない団体、学校やその他の地域団体などがこれに当たります。長期的に公園・緑化空間の管理を支援するネットワークや、リーダーを育成し、必要な知識やスキルを提供することで様々な規模の団体や学校、企業なども参加できる公民連携の公園管理方法です。ここでは、そういった団体の形成、支援、育成、増加、拡大のための公民連携の取り組みを紹介します。

NY市公園局による多様なパートナーシップの例(資料:島田智里)
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NY市とNPOによる共同運営「パートナーシップ・フォー・パークス」

 戦略的パートナーに属さない団体との公民連携を取り扱う一つがパートナーシップ・フォー・パークス(Partnerships for Parks、PFP)です。1995年に始まり、行政と市民の仲介者として様々な公園のプログラムを提供するNPOであるシティ・パークス・ファウンデーション(City Parks Foundation、CPF)とNY市公園局による共同運営で、スタッフも各々の団体から半々で雇用しており、民間と行政から資金を得ています。戦略的パートナーに特定されていない団体の窓口にもなっており、それぞれの団体と連携して様々な活動を行います。

 PFPは、公園の支援団体の形成や、積極的に対象者の居る場所に出向いて公園支援を働きかけるアウトリーチ、公園空間を通した地域社会への奉仕活動などに特化しています。具体的には、公園の美化活動、清掃、ボランティアイベントの運営、さらには資金確保の支援、スタッフ養成などによって、ライセンスを持たない団体の支援をしています。民間としての機能もあり、PFP主体や協賛の活動や高度な技術を要しない活動であれば、NY市公園局の専門員なしで独自にイベントを実行することができます。

PFPが協賛する支援団体”Parent Child Relationship”主催による「It's May Park Volunteer」イベントの案内例(Partnerships for Parksのウェブサイトより)

既存の団体や個人を対象とする「スチュワードシップ」

 スチュワードシップ(Stewardship)はNY市公園局のプログラムで、2007年に当時のマイケル・ブルームバーグ市長により開始されたNY市公園局の「100万本の植樹プログラム」(MillionTreesNYC)と、それ以前に存在していた旧自然エリアのボランティアチームが合併してできた比較的新しいプログラムです。公園局のスチュワードシップに参加する組織は、ライセンスを持たないコンサーバンシーやBID、その他のNPOなどです。PFP同様に公民連携で公園の管理運営を行いますが、運営主体は基本的にNY市公園局になります。

 NY市には、NY市長オフィスが運営するニューヨーク・シティ・サービス(NYC Service)という機関があります。ニューヨーク・シティ・サービスはボランティア活動を斡旋し、市民がボランティアに参加できるよう支援するために2009年に設立されました。スチュワードシップでは、ニューヨーク・シティ・サービスのような市の機関を通じて民間からスタッフを雇用することがあります。

 スチュワードシップがPFPと異なる点は、支援団体の形成などは行わず、既存の団体や公園管理を支援する個人を対象として、緑の管理に必要な技術提供や技術サポートに特化している点です。そのため、スチュワードシップの活動は専門性を持つ公園局員が先導します。スチュワードシップは、2007年にはじまり、予定より2年早い2015年に目標を達成した「100万本の植樹プログラム」を通じて、多くの支援団体や個人のボランティアと長期的な協力関係を築くことに成功しました。2019年の現在も更に継続、拡大しています。ここ2~3年は、安定して毎年8000人以上のボランティアが参加しており、公園管理業務を支える人材を育成しています。

 個人を対象としたユニークな制度もあります。専門性を習得して継続的に活動するボランティアを認証するスーパースチュワードの制度です。局員指導の下では局員レベルの活動ができ、他のボランティアを監督することができるのもユニークで、人気があります。

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スチュワードシップ主催の植樹ボランティアイベントに参加するブルームバーグ(Bloomberg L.P.)の社員(左)。セントラルパーク脇の5番街通りで街路樹ケアをする高校生たち(右)(写真:島田智里)

 これに加えNY市公園局には、コミュニティガーデンを専門とする「グリーンサム(Green Thumb)」と呼ばれる部署、市の他局や州や国との連携を専門とする部署、行政が関与する政策を手掛ける部署、公共アートを担当する部署などがあり、活動内容や規模、必要なスキルに応じて専門性をもつ職員が適切に対応できるようになっています。

 戦略的パートナーシップ(前回参照)の契約から、支援団体の形成やリーダーシップの育成まで幅広い内容をカバーしており、この多様な仕組みや状況や時代に応じて対応の形を広げていくのがNY市の公民連携のユニークさでもあります。

地域団体とボランティア

 公園支援者はこれだけではありません。例えば、ゴワナス・カナル・コンサーバンシー(Gowanus Canal Conservancy)は、ブルックリンにあるゴワナス運河近隣エリアで活動する地域ベースのNPOで、公園の管理運営団体ではなく、河川エリアの環境保護や、洪水や環境に関する教育、河川敷のオープンスペースの改善など、河川にまつわる様々な活動を行っています。通常の活動は河川敷が中心ですが、エリア内にある緑化空間の整備や美化活動のプロジェクトがある場合、公園局の活動を支援し、人材を提供します。

 このほか、自治体やボランティア、また特別事業を集中的に支援する団体があります。特定の公園を対象にした、フレンズ・オブ・サウンドビューパーク(Friends of Soundview Park)、フレンズ・オブ・バン・コートラント・パーク(Friends of Van Cortlandt Park)のように、住民の視点で地元の公園に対して継続的に安全対策や植生管理などを提供し、主に助成金やボランティアベースで運営する団体も多くあります。特別事業の支援例では、2015年から2016年に行ったNY市公園局の市民参加型の街路樹調査の支援に、単発的に1年間で70以上の支援団体および2200人以上のボランティアが集まりました。

NY市公園局のウェブサイトには、パートナーのリストが掲載されている。市全域、または区でリストアップされていて検索しやすい。名前をクリックすると団体のウェブサイトに移動する(NY市公園局のウェブサイトより)
NY市公園局とパートナー団体のボランティア活動の案内は定期的に更新され、検索や登録ができる(NY市公園局のウェブサイトより)

コンセッションとファンドレイジング 

 公園内でのサービス提供を許可する制度の一つにコンセッション(公共施設の運営権を付与する制度)があります。コンセッションには、ゴルフコース、アスレチッククラブ、ボートハウスなどのスポーツやアクティビティのサービス提供、マリーナのように所有地の一部レンタル、レストランやキオスクなどの飲食店などの運営などが含まれます。

 また、公園の支援を目的としたファンドレイジングや企業スポンサーもあります。多くの場合、パートナー団体、支援団体、または公民連携がファンドレイジングを実施し、スポンサーの窓口となりますが、公園局が受けるものもあります。その例として、全米プロバスケットボール協会のチームであるNY Knicks、高級スポーツクラブのEquinox、健康保険会社のBlue Cross Blue Shield、NY市に焦点を絞った民間財団で恵まれないNY市の若者に助成金を提供するHeckscher Foundation for Childrenなどがあります。

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マンハッタンのマディソン・スクエア・パーク内で午前7時半から午後11時まで開いているハンバーガー屋(Shake Store1号店)(左:夜の様子、右:昼間の様子)。2001年に公園のコンセッションとしてホットドッグカートとして始まり、その人気によって、現在では世界に拡散した(資料:島田智里)
市内15カ所にある公園所有地内のマリーナ。ロケーションはNY市公園局のウェブサイトに掲載されている(資料:NY市公園局)
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まとめ――より多くの人に参加してもらうことが大切

 NY市の公民連携による公園管理の特徴は、行政側にも民間側にも様々なプレーヤーが何層にもなって関わり、多くの関係者がそれぞれに見合う役割分担をすることで、一人や一団体ではカバーしきれない領域を総合的にカバーするよう努めている点にあるといえます。公園や緑化空間を良くしたいという思いを共通に持ち、必要に応じて生まれた仕組みや団体が時代と共に大きく育ってきました。

 当初は、そのような動きに対して手探りで対応してきた行政側も、現在は積極的にその拡大に励んでいます。全てのケースに適用できる一括システムではないため複雑に思えますが、経済的にも、地理的にも、文化的にも、特殊な環境にあるNY市にはこういった柔軟な対応が必要なのかもしれません。

 各々の地域やそこにある公園が異なるように、その対応も独自性があり、より多くの人に参加してもらうことが大切だと感じています。まだまだ挑戦すべきことや改善すべきことは多々ありますが、今後は市民、地域、NPOをはじめとする支援団体、公園管理者などが協力していく公民連携がますます必要になってくると考えています。

NY市が管理する都市公園の昼下がり。思い思いに人々が過ごしている(写真:島田智里)
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住宅街のプレイグラウンドで自由に遊び、戯れる親子の様子(写真:島田智里)
1856年に建設された砂糖の精製所跡地を再開発したドミノ・パークの芝生でくつろぐ人々(写真:島田智里)
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ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/050800011/