(6)ソーシャル・キャピタルの形成を促す「時間消費型社会資本」へ

 朝起きて一番のコーヒーを飲む人を誘う朝陽が揺れるテーブル。既成の児童保育の概念から離れた子供たちが集う生活の広場。入院する人もお見舞いに来る人も清しさに包まれる緑の中の病院。雨の音を聞きながらPCに向かいリモートミーティングができるワーキングスペース。ケータリングやデリバリーのオーダー先として指定される公園の広場。人生の記念日のパーティーのためにシェアされるセミプライベートスペース――。 

 11万カ所、13万ヘクタール、国民一人ひとりに6畳間のレジャーシートの広さを同時に供給することができる公園のストックの効用を本気で高めるならば、24時間の生活の場の多くを公園は担えるはずだ。

 新型コロナが終息し、テレワーク普及などで働き方や都市の在り方が変わったとしても、「公園を使い倒す」発想を進化させることはいくらでもできる。公園は、新型コロナ現象の収束を経たウィズ・コロナのライフスタイルを成立させる空間量を、先人たちの努力によってつくり出してきたのではないのか。現行の枠組みにとらわれず、生活者が望むであろう時間の使い方のすべてを受け入れる空間の在り方を、先入観や偏見なしに追い求めてはじめて、求められる価値を提供しうる社会資本になるのだ。

 新型コロナ現象の中で垣間見られた、「室内にいることができなくなったから公園に行く」というようなパッシブな需要論に、公園管理者は一喜一憂していてはいけない。もっとアクティブな価値、今日的、未来的価値づけを公園の中に創出していくことが求められていると考えるべきだ。公園が目指すべきは、ソーシャル・キャピタルの形成を促す時間消費型社会資本となっていくことである。

 2017年の都市公園法の改正によって、公園の中に収益の上がる公園施設を民間事業者により設置し、様々な規制緩和とともに、収益の一部を公園の環境整備や再生整備などに充てるPark-PFI(公募設置管理制度)という新たな制度ができ、全国で100を超えるプロジェクトが現時点で動いている。もともと都市公園法の中には設置管理許可制度があり、民間による公園施設の設置運営(経営)の例は以前からあったとはいえ、新たにこうした施設を計画的に導入するという動きは、Park-PFI制度がきっかけになっていることは間違いない。飲食や物販を始め、アートやスポーツ、福祉、教育、宿泊、シェアスペース、園芸文化など収益が期待できる公園施設の幅は狭くない。バラエティ豊かな事例が、現実に全国各地に生まれつつある。

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東京都武蔵野市の井の頭公園。2012年全国都市緑化フェアで筆者がチャレンジした時間消費型の公園の姿(現在はない)(写真:町田 誠)
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 こうした動きを、公園の本質から離れたと解釈する向きもあるが、11万カ所、13万ヘクタールの公園の30年後、50年後、100年後の実態にリアルに思いを巡らせれば、「これまで通りで良い」という見解が全く無責任なものであることは明白である。Park-PFIだけでなく、公園の中に保育所の設置(占用)を可能にするような規制緩和も、公園の常識に、今後も大きな変化を引き起こしていくだろう。もっと多面的な公園の機能発揮のトリガーとなるはずだ。

 2017年の都市公園法改正は、一言で言えば「公民連携・パートナーシップ促進改正」である。様々な改正項目が、都市生活環境インフラとして貴重な公園を少しでも健全な姿で維持して、地域の価値向上、生活時間の豊かさを形成するための資源とするため、様々な試みをためらわずに実施することを可能にしている。

 公園がもっとユーザーに近い立ち位置で、生活インフラとして身近で欠かせない存在になるためには、2003年地方自治法の改正によりできた指定管理者制度の進化も必要だ。制度化以降、公園の管理においては、地方公共団体によって状況は違うものの制度導入が順次進み、いわゆる外郭団体である法人、次いで民間企業、NPO法人等が公園の指定管理者として誕生してきている。全体の傾向として地方公共団体の直営作業から外郭団体たる法人、民間企業・NPO法人へとウエイトが移ってきていると言ってよい。

 この動きも、官民のパートナーシップという観点からも無視できない大変大きな動きである。公共施設の管理を民間のセクターが行うことは、利用サービスの向上、社会資本の効用発揮という意味で大変大きな意味を持つのである。生活に密着した、また地域に密着した生活施設としての公園の効用発揮を促していくのは、これまでの公園管理の常識ではない。公物管理上課題とされる許認可等の公権力行使の権限までも検討の範囲に入れて、大きな公園から小さな公園までエリアの公園を一括して管理するなど、指定管理者制度をどんどん進化させていくべきだ。指定管理者制度の進化とPark-PFI制度のパッケージは、これからの公園の在り方を模索、実現していくうえで大きなブレイクスルーになると考えられる。

 ユーザーに近い立ち位置にいる管理者と利用者の間では、公園に関わる多くの情報の相互的供給(交換)がなされるだろう。そしてこの交換は、官たる公権力と民の私権が対峙する公物管理からは生まれにくい新たな関係性が、管理者とユーザーの間に築かれる呼び水となる。

 公園の管理に割ける公的リソースの実際(限界)、禁止看板ばかりになる管理者とユーザーの関係性、ほとんど利用されずに維持するのがやっとの小さな公園の存在――。まずは、そんな現在の公園の姿を共有する。そこを起点として、官民双方が一体となってマネージすれば高い効用発揮をするであろう「これからの公園」の姿についてのマインドを共有していく。そして、そこから構想を広げていくことによって、ソーシャル・キャピタルの形成を促す時間消費型社会資本としての公園の可能性は大きく開けていくだろう。

(7)おわりに

 新型コロナ現象の報道の中で気になることを、最後にもう1つ挙げておきたい。行動自粛を促す意図で流される、サーファーが海に浮かぶ映像、車が連なっている映像、水上バイクの映像など。「問題の本質は何なのか」という本質からずれていく。もしも、彼らが、飲食や買い物などを一切伴わず、増大する精神的なストレスの軽減を図るため、ドアから自然環境下へ、そして、自然環境からドアへと戻っていたら、感染症拡大のリスクは増大せず、社会経済の悪化のリスクの軽減に役立っている可能性もあるということだ。商店街などでは、自粛要請通りに営業時間を短縮して、環境を整えて営業を続ける店舗等に対して、非難する自警的活動があることも紹介されている。

 緊急的な事態ではあるが、〇か×か、白か黒か、ということを過度に社会が求めるようになることを助長するような報道姿勢は好ましくないと感じる。

 これから目指すべき、社会やコミュニティが豊かであるという状態は、ソーシャル・キャピタルが高く保たれている状態であると考える。公園は「ソーシャル・キャピタル形成社会資本」となりうる公共施設であるということをしっかりと認識しながら、これからの公園の在り方、そこに向かう具体的方策の議論を関係する多くの皆さんと進めていきたいと思う。

 それは、社会の利益の総和を確実に増大させていくことができる実行力の高いしなやかな専門性を、公園の世界の中に育てていくこと、と同義である。

ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/