公園など都市のオープンスペースのサステナブルな利活用について考えていくシリーズ「公園が変わる! 街が変わる!」。全3回にわたって、公園と地域をつなぎ、公園における市民の活動をサポートする「パークコーディネーター」の役割について解説していきます。第3回目となる今回は、パークコーディネーターとほかの専門スタッフとのコラボレーションについて、具体例を交えながらその必要性や意義について紹介します。

 パークコーディネーターが活躍するためには、公園管理の現場スタッフ全体が、その役割と重要性を認識し、足並みをそろえて業務に当たることが大切です。公園には施設や植栽管理、イベント運営やボランティア活動のサポートなど、様々な業務があります。これらの業務に当たる専門スタッフの例としては、自然に造詣の深いパークレンジャー、造園技術のあるランドスケープマネージャーやパークガーデナー、健康づくりを進めるスポーツコーディネーター、防災教育を行う防災コーディネーターなどがあります。また全体を統括するパークマネージャーとの連携も重要です。

 パークコーディネーターが各業務の専門スタッフと連携することで、質の高いパークマネジメントが実現し、公園の価値が高まり、市民との距離も近づいていきます。そうした事例をいくつかご紹介しましょう。

パークレンジャーとの連携で生物多様性が格段に向上

 都立浅間山公園(東京都府中市)は、全山が雑木林で覆われた約8haの公園です。ここには多くの絶滅危惧種が生息し、30年以上も前から地元の自然保護団体により保全活動が盛んに行われてきました。

住宅地の中にぽつんと浮かぶ緑の島のような都立浅間山公園。古多摩川の浸食によって数十万年前に削り残された残丘という古い地形で、固有種であるムサシノキスゲをはじめ95種類(2020年5月現在)もの希少種が生息している(写真:NPO birth)
住宅地の中にぽつんと浮かぶ緑の島のような都立浅間山公園。古多摩川の浸食によって数十万年前に削り残された残丘という古い地形で、固有種であるムサシノキスゲをはじめ95種類(2020年5月現在)もの希少種が生息している(写真:NPO birth)
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 しかし、20年前に策定された都の保全方針が現状にそぐわなくなり、学校や企業など複数の団体が管理に参加する中で、共通の指針が求められるようになりました。そこで、公園に関わる産官学民それぞれの団体が協働で保全管理を行う基準として「保全管理ガイドライン」を作成することとなりました。

 この作業には、「浅間山自然保護会」などの3つの市民団体、東京都、府中市のほか、アドバイザーとして東京農工大学植生管理学研究室が参画しました。事務局は指定管理者である西武・武蔵野パートナーズが担い、担当のパークコーディネーターが協働による保全管理のためのロードマップを作成。公園の自然環境を把握する専門スタッフであるパークレンジャーが連携し、丁寧な合意形成と検証を積み重ね、数年かけてガイドラインを完成させました。

ステークホルダーとの協働で作成した「都立浅間山公園 保全管理ガイドライン」。雑木林の将来像をイラストで示すことで、管理に携わる人たちが樹林の現状を自ら診断し、作業の内容や程度を加減することができる(発行:西武・武蔵野パートナーズ、企画・執筆:浅間山を考える会、NPO birth)(写真:NPO birth)
ステークホルダーとの協働で作成した「都立浅間山公園 保全管理ガイドライン」。雑木林の将来像をイラストで示すことで、管理に携わる人たちが樹林の現状を自ら診断し、作業の内容や程度を加減することができる(発行:西武・武蔵野パートナーズ、企画・執筆:浅間山を考える会、NPO birth)(写真:NPO birth)
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完成後もガイドラインが適切に運用されるよう、パークレンジャーがアドバイザーの先生、市民団体とともに調査や勉強会を定期的に開催している(写真:NPO birth)
完成後もガイドラインが適切に運用されるよう、パークレンジャーがアドバイザーの先生、市民団体とともに調査や勉強会を定期的に開催している(写真:NPO birth)
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 ガイドラインで定めたゾーニングに基づき、きめ細かい管理を市民団体が実践し、東京都が伐採・更新するなど、管理に関わる主体が連携しながら保全活動を進めた結果、目覚ましい成果が現れました。例えばムサシノキスゲは7290株から3万581株に、キンランは1786株から4331株に増加。草地を伴った明るい樹林が増え、多様な環境が整ったことで絶滅危惧種などの希少種の種数も確実に増えています。

都立浅間山公園の固有種であるムサシノキスゲ。東京農工大学による過去の調査結果を基に、草原型の雑木林管理ゾーンを設定。ガイドライン運用後、株数が4倍以上に増加した(写真:NPO birth)
都立浅間山公園の固有種であるムサシノキスゲ。東京農工大学による過去の調査結果を基に、草原型の雑木林管理ゾーンを設定。ガイドライン運用後、株数が4倍以上に増加した(写真:NPO birth)
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毎年恒例の「キスゲフェスティバル」は、府中市報にも大きく掲載され、数千人が訪れる人気イベント。企画運営には複数の団体が参加し、全体の調整をパークコーディネーターが担当。自然保護団体による展示や観察会、パークレンジャーによるガイドツアーなどが開催される(資料・写真:NPO birth)
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毎年恒例の「キスゲフェスティバル」は、府中市報にも大きく掲載され、数千人が訪れる人気イベント。企画運営には複数の団体が参加し、全体の調整をパークコーディネーターが担当。自然保護団体による展示や観察会、パークレンジャーによるガイドツアーなどが開催される(資料・写真:NPO birth)
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毎年恒例の「キスゲフェスティバル」は、府中市報にも大きく掲載され、数千人が訪れる人気イベント。企画運営には複数の団体が参加し、全体の調整をパークコーディネーターが担当。自然保護団体による展示や観察会、パークレンジャーによるガイドツアーなどが開催される(資料・写真:NPO birth)

 様々な立場のステークホルダーが保全活動に関わる場合、互いの考えの違いや情報不足などで、統一した目標設定が難しいことがあります。浅間山公園では、パークコーディネーターがワークショップ形式の会議や共同調査などチームビルディングを促す機会を積極的に作るとともに、専門知識を持つパークレンジャーが客観的な情報提供を行うことで、合意形成が促進されました。

 なお、完成した「保全管理ガイドライン」は、協働型の雑木林保全管理モデルとして他地域で活動する人々にも参考になるとして、2019年5月にお披露目を兼ねたイベント「テーマはまちなかの雑木林!みどりの市民活動現場視察&交流会」(主催:特定非営利活動法人Green Connection TOKYO、一般財団法人 セブン-イレブン記念財団、東京都)を行い、大きな反響を得ています。

防災コーディネーターとの連携で地域防災力がアップ

 都立六仙公園(東久留米市)は、2006年に一部が開園した整備途中の公園です。小学校の廃校跡地が公園となったことで、卒業したOBの方より、「小学校廃校とともに薄れていった地域のコミュニティーを復活させたい。何かイベントができないか」との相談がありました。公園は住宅地に囲まれており、安全に対しての意識も高かったため、OBや住民、東久留米市とともに防災をテーマにした公園懇談会を実施。会議の中で、世代を問わず誰でも楽しく参加できる防災イベントを開催したいという声が上がり、実行委員会が結成されました。

 パークコーディネーターが関係者の調整を進め、市の防災防犯課や消防署、青年会議所や防災マーケットチームなどが主体となり、公園の防災コーディネーター(防災教育普及協会所属)がアドバイザーとして参加。イベント名を「防災キャラバン」とし、「楽」「学」「遊」の3つのキーワードでプログラムを企画したことで、親子も気軽に参加できると大好評のイベントとなりました。

「防災キャラバン」は官民連携による実行委員会形式で実施。楽しく参加できる防災訓練や、防災にちなんだ雑貨や飲食販売、ワークショップなど、創意工夫あふれるプログラムが展開され、地域防災力の向上に貢献している(資料・写真:NPO birth)
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「防災キャラバン」は官民連携による実行委員会形式で実施。楽しく参加できる防災訓練や、防災にちなんだ雑貨や飲食販売、ワークショップなど、創意工夫あふれるプログラムが展開され、地域防災力の向上に貢献している(資料・写真:NPO birth)
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「防災キャラバン」は官民連携による実行委員会形式で実施。楽しく参加できる防災訓練や、防災にちなんだ雑貨や飲食販売、ワークショップなど、創意工夫あふれるプログラムが展開され、地域防災力の向上に貢献している(資料・写真:NPO birth)
アウトドアテントメーカー「キャンパルジャパン」から提供された大型テント。管理所のない公園のため、受付のほか、救護室、授乳室として活用できる。パークコーディネーターが地域の販売店に声をかけ、協賛を得ることができた(写真:NPO birth)
アウトドアテントメーカー「キャンパルジャパン」から提供された大型テント。管理所のない公園のため、受付のほか、救護室、授乳室として活用できる。パークコーディネーターが地域の販売店に声をかけ、協賛を得ることができた(写真:NPO birth)
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シヤチハタと東北大学災害科学国際研究所が共同開発を行った「防災・減災スタンプラリー」プログラム。災害時の避難行動を疑似体験でき、子どもも大人も楽しみながら防災を学ぶことができる。防災コーディネーターが所属する防災教育普及協会のネットワーク力を生かして実現した(写真:NPO birth)
シヤチハタと東北大学災害科学国際研究所が共同開発を行った「防災・減災スタンプラリー」プログラム。災害時の避難行動を疑似体験でき、子どもも大人も楽しみながら防災を学ぶことができる。防災コーディネーターが所属する防災教育普及協会のネットワーク力を生かして実現した(写真:NPO birth)
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 防災訓練というとお堅いイメージがあり、参加者の募集に苦労する自治体が多い中、六仙公園では年々参加者が増え続けています。駅からも遠く駐車場もない、アクセスの悪い公園に、2019年度は25団体が出展し、800人を超える参加者が集まりました。パークコーディネーターが地域のニーズを引き出すことで、市民が「自分ごと」として積極的に参加していること、また防災コーディネーターがアドバイザーとなることで、正しい防災知識を学べることなどが成功の要因として挙げられます。

 全3回にわたって、パークコーディネーターの役割と効果について紹介しました。まちづくりの視点に立ち、公園と地域の力を引き出すパークコーディネーターは、エリアマネジメントの領域にも活躍の場が広がっています。公園を媒介に、地域のリソースを結び付け、サステナブルな都市づくりに貢献する役割として、今後ますます活躍の場が広がっていくでしょう。

パークコーディネーターは、公園を媒介に地域のリソースを結び付け、循環・発展させることで、地域のサステナビリティーに貢献する(資料:NPO birth)
パークコーディネーターは、公園を媒介に地域のリソースを結び付け、循環・発展させることで、地域のサステナビリティーに貢献する(資料:NPO birth)
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ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/062400016/