民間の力を利用した、公園など都市のオープンスペースのサステナブルな空間利用について考えていくシリーズ「公園が変わる! 街が変わる!」。第5回から第7回は、大小53公園の管理を一括して民間の指定管理者に委託した西東京市の取り組みを、当時、西東京市みどり公園課長として市立公園における指定管理者制度の導入に中心的に携わった高井譲氏が解説します。最終回は、公園ボランティアが主体となって公園の管理運営を行っている事例などを、指定管理の公園以外も含めて報告します。

市民による市民のためのサービス

 西東京市の公園ボランティアは、約900人います。市民が主役となって、市立公園で花壇の維持管理や清掃活動など、様々な活動を行っています。その成果として、「東京都公園協会賞」や「みどりの愛護功労者国土交通大臣表彰」を市内のボランティア団体が受賞しています。今回は、主な公園ボランティアの活動について、指定管理の公園以外も含め紹介します。

(1)雑木林の若返りに取り組む公園ボランティア <西原自然公園を育成する会>

ボランティア主体によるイベント「山仕事体験会」の様子(写真:高井 譲)
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 西原自然公園は、面積約2haの雑木林中心の公園です。一時は、樹木が鬱蒼(うっそう)として暗く、子どもや女性は入ることを敬遠するような公園でした。しかし、伐採を含めた植生管理をボランティア団体「西原自然公園を育成する会」と行政の二人三脚で取り組みました。その結果、公園は明るくなり、保育園児も含め子供たちが楽しく遊べる公園として再生しました。

 さらに、ボランティア主体によるイベント「山仕事体験会」は、植栽管理に効果的な取り組みです。これは、市内外のボランティアが、マイヘルメットやマイチェーンソーを持参して、せん定や樹木の伐採を行って、伐採した材木を薪用に持ち帰ってくれるというものです。

 親子で参加者を募り、手のこぎりで、樹木の伐採を体験してもらうイベントもボランティア主体で行っています。子供たちにとっては、のこぎりを使って樹木を切る機会が最近はなかなかないので貴重な体験の機会となっています。

「山仕事体験会」では、ボランティアがせん定や樹木の伐採を行う(写真:高井 譲)
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子供たちにとっては、のこぎりを使って樹木を切る貴重な機会となる(写真:高井 譲)
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(2)コミュニティガーデン「保谷町ローズガーデン」 <西東京花の会>

 保谷町ローズガーデンは、2016年3月に開園した、NPO法人「西東京花の会」の市民ボランティアが維持管理しているバラ専門のコミュニティガーデンです。約280m2の公園で、宅地開発に伴いつくられました。

 バラの栽培については、ボランティアスタッフが一から自分たちで勉強して、今ではプロ並みの知識と技術を身に付けています。バラの花が奇麗な季節には、市民のみならず、市外からの見学者も後を絶ちません。

バラ専門のコミュニティーガーデン保谷町ローズガーデン(写真:高井 譲)
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(3)市民主体の「みどりの散策マップ」の作成と「みどりの散策路めぐり」 <西東京 自然を見つめる会>

 西東京市内には、公園や緑地など素晴らしい緑がありますが、市民にあまり知られていない場合もあります。そこで市民団体「西東京 自然を見つめる会」の企画提案事業として始まったのが、「みどりの散策マップ」の作成です。市民が下見を行い、協議しながら、市内の公園や緑地を巡るコースと地図を作りました。地域を熟知している市民が検討して、現地に何度も行って決めているため、みどり豊かで、しかも散策者にとって歩きやすい素晴らしいコースです。

 その地図に書かれたコースを市民と一緒に散策するのが「みどりの散策路めぐり」です。

 市民ボランティアが先導し、参加者である市民を案内します。要所では、市民ボランティアによる解説やガイドも行います。もちろん、主人公は市民ボランティアです。多いときには、100人近くが参加します。ここでは行政はサポート役に徹し、救急箱を持参して安全管理に気を付けます。

みどりの散策路めぐりの様子(写真:高井 譲)
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(4)公園ボランティアのリーダーによる高校の課外授業

 近隣の都立高校の課外授業の一環として、西原自然公園を維持管理するボランティアのリーダーに、課外授業の講師として登壇してもらいました。高校生にとっては人生の大先輩であり、リアルな社会活動やボランティア活動の経験から出る言葉には、多くの学びがあったようです。

 また、登壇した公園ボランティアのリーダーにとっても、未来のある若者に今までの多くの経験や社会活動、ボランティアの意義を伝えられることは貴重な経験でもあり、また嬉しいことでもあります。

講師として登壇する公園ボランティアのリーダー(写真:高井 譲)
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(5)ボランティアと小学校、市の連携事業 市の花「コスモス」プロジェクト

 市の花「コスモス」プロジェクトは、近隣の小学校と連携した事業です。先生が児童に「コスモスを植えなさい」と言ってやらせるのではなく、児童たちが公園や緑地、オープンガーデンを見学したり、ボランティアの話を聞いたりしながら、子供たちが自主的に取り組む機運を盛り上げるのが特徴です。

 まず、みどり公園課の職員が学校に赴き「公園とみどり&ボランティア活動について」をテーマにした出前講座など行います。その際に職員から、市の花「コスモス」プロジェクトについて提案すると、児童たちは進んで協力を申し出てくれました。

 当日は、高齢者中心の公園ボランティアの指導の下、児童たち全員が一生懸命に取り組みました。主人公は児童であり、指導する公園ボランティアです。行政はサポートに徹しました。

 ちょうど公園ボランティアのメンバーの孫が、児童として参加していました。前段で実施した学校での説明では、ボランティアでもある祖母が檀上から講師として草花のことを説明します。孫は、きっと祖母の素晴らしい一面を見たことでしょう。

 このように児童たちとボランティアとの様々な交流の中で、このプロジェクトを通じて、小さいながらも様々なドラマが生まれました。このプロジェクトでは、中心となって活躍した児童も満足していましたが、子供たちを指導した公園ボランティアもとても充実した時間を過ごしたことでしょう。

市の花「コスモス」プロジェクトでは、公園ボランティアと児童が協力してコスモスを植える(写真:高井 譲)
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市の花「コスモス」プロジェクトの様子(写真:高井 譲)
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(6)公園でボール遊びを! <おもいっきり遊び隊>

 ここからは、公園をフィールドに市民協働で活動したケースを紹介します。

 多くの自治体で課題となっているのが、公園におけるボール遊び問題です。都市部の市立公園は、住宅地に囲まれていることが多いため、近隣の住民から苦情も多く、ボール遊びは基本的には禁止です。

 しかし、母親たちから「子どもが自由にボール遊びをできるようにしてほしい」「公園で子どもにおもいっきり遊ばせたい」との強い要望がありました。そこで、青空の下、公園で市民懇談会を行いました。青空懇談会ともいえます。しかも、保護者の母親だけでなく、子供たちも含めて話し合うことにしました。

 そこで生まれたのが、地域の母親たちが主体のグループ「おもいっきり遊び隊」です。さらに「おもいっきり遊び隊」主催のミニプレーパークを公園で行うことに発展しました。母親たちが主体となって管理運営することで、苦情が出ないように近隣の住民に配慮しながら、子供たちは自由にかつ大いに楽しむことができました。2018年4月には、「逃走中」という人気テレビ番組にヒントを得た鬼ごっこゲームを行い、大いに盛り上がり、子供たちは大喜びでした。

「おもいっきり遊び隊」の活動の様子(写真:高井 譲)
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(7)小規模公園活用プロジェクト <ひばり日和。>

 全国の自治体で課題となっている小規模公園の活用について、西東京市では市民主体の小規模公園活用プロジェクトが生まれました。市民がメンバーのプロジェクトチーム「ひばり日和。」です。

 市民を中心に、市内にある武蔵野大学の伊藤泰彦研究室も加わり、指定管理者が支援し、市がサポートするという構図です。そして地域のアクティブな農家とも連携しています。企画の立案からその実施まで、全て市民主体で行います。

 プロジェクトチーム「ひばり日和。」による第1回小規模公園活用プロジェクトでは、最初に公園の維持管理に協力して、除草や清掃活動を行い、「小さな野菜市」という名称で、地域の農家と協力して野菜の直売をイベントとして開催しました。

 公園の付近には、スーパーなど小売店がないので、地域のお年寄りも含め、近くで新鮮野菜が安く買えると大喜びでした。また、地域の農家も、多めに持ってきたつもりだった野菜が完売するなど、売れ行きも満足できるものでした。

 通常は公園での収益事業というのはなかなか認められていませんが、指定管理者との共催事業という形態をとっているため、収益活動も可能です。

 イベントの後半は、交流会を兼ねた公園ピクニックを行い、大いに楽しみました。最後は、もちろん、清掃活動で締めです。公園が除草され清掃され、とれも綺麗になりました。

プロジェクト「ひばり日和。」では、「小さな野菜市」という名称で地域の農家と協力して野菜の直売を行った(写真:高井 譲)
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プロジェクト「ひばり日和。」では最後に清掃活動を実施した(写真:高井 譲)
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ボランティアとの連携・市民協働で大事なこと

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西東京市では公園配置計画を市民協働で策定した。上写真は公園の実態調査を市民主体で実施した時の様子。下写真の付箋紙がたくさん張られたボードは、市民と公園の活用について対話・懇談会を実施したときのもの。地図に公園に関する情報を付箋で書き込むよう依頼したところ、次々と貼られていった。市民が公園の現状や実態をとても良く知っていることを改めて思い知った(写真:高井譲)
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 公園に対する市民からの苦情や要望は、行政と市民の大切な出会いの場ともいえます。確かにクレーマーのような人もいますが、公園の活用や改善について、前向きに考えている人もたくさんいます。このような市民と懇談会を重ねていると、行政と市民が連携して一緒に公園を活用していこうとする機運が生まれていきます。

 その時に大切なことは、市民主体のまちづくりの視点です。地方自治体の“主人公”は市民です。そして行政に必要なことは、市民目線でのまちづくりを考えることです。市民の中へ入り、市民との対話を積み重ねていくことが大切です。市民は、お客さんでも委託業者でもありません。市民は、問題解決のパートナーです。

 市民協働で何かを行う場合、行政は市民の思いをきちんと理解する必要があります。市民は多様です。おのおの関心が強い分野、地域、課題などが異なります。そのことを踏まえ、公園の課題や活用についても、市民自身にできることを考えてもらうことが大切です。

 ボランティア活動とは、市民の自主的で自立した活動です。決して頼まれて活動するのではありません。

 様々な課題に取り組む市民のパワーはとても凄いものがあります。イベントの企画立案など行政職員がやるより利用者本位の素晴らしいイベントができる場合が多々あります。

 市民と協力して事業を行う場合は、市民との信頼関係づくりに努めながら、お互いがパートナーと認識して、活動する必要があります。公園を巡る課題解決については、市民と行政職員の二人三脚で、取り組んでいくことが大切です。そして、活躍するのは市民です。行政は、あくまで黒子のコーディネーターに徹することが大切です。

 市民主体の取り組みが発展することにより、公園や緑地を市民自らの自己実現の場として活用することが可能です。

 しかし、行政の市民への対応については、多くの課題があります。例えば、事業やイベントなどを開催するとき、行政は硬直した対応になりがちです。「市民にお願いしてやってもらう」か、もしくは「ほとんど決めてから市民に説明して文句や反対にあう」か――。悲しいことに、この二つしかありせん。そろそろ、第三の道を検討すべきときにきているのではないでしょうか。

 系統的・組織的に市民協働を推進するためには、仕組みや体制が必要です。職員の個人的な努力では、長続きしません。かえって行政内部では、「よけいな仕事」と認識され、疎まれる恐れさえあります。

 まずは、苦情や要望の処理状況と進行管理、課内での苦情や要望の情報共有が必要です。紙ベースでの管理は難しいため、西東京市では、既成のデータベースソフトを利用して職員が手作りした苦情・要望管理システムを活用しています。

 次に、連載第5回で説明したように「市民協働担当者」を置くことで窓口を明確にし、市民から見て分かりやすくすることが大切です。行政内部でも、「市民協働担当者」を、市立公園を管理運営する部署や事業課に設置して、業務として位置付けを明確化しておきます。

 地域コーディネーターでもある市民協働担当者を配属し、市民協働に関する業務を一本化することが重要です。これにより、公園ボランティアは、個々の案件や活動種類ごとに、別々の担当者と煩雑な相談をすることなく公園・緑地関係については、ワンストップで相談や協議ができます。

指定管理者と行政が協力して公園ボランティアと連携する。その際、指定管理者と行政の対応窓口が分かりやすいということが重要になる。西東京市では、指定管理者と行政の双方に「市民協働窓口」を設けた(資料:高井 譲)
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 また、市民からの苦情や要望について、市民自身に知人・友人を集めてもらい、懇談会を必要に応じて実施すことも大切です。市民との対話を通じで課題の解決や市民主体の公園づくりの出発点にもなります。

 さらに、公園を管理する部署においては、方針を明確にし、行政内部に徹底することも必要です。例えば、西東京市のみどり公園課では、年間目標(2016年)として以下の3点を掲げ、市民の視点を大切にしながら、市民協働の推進を大きな柱として取り組みました。

  • (1)公園の安全管理を第一優先
  • (2)苦情や要望への迅速かつ丁寧な対応
  • (3)市民協働の積極的な推進

「市民の自己実現のためのフィールド」という価値を提供

 市民協働を進めていく上で、行政は、様々な地域の人々との出会いを大切にしていく気持ちが大切です。

 その上で、先に述べた市民協働推進の仕組みを構築し、さらに発展させていくには、市民協働をベースにした官民連携の推進、連載第5回で解説したような市民協働推進型の指定管理者制度を導入することが効果的です。市立公園の活用・活性化、市民主体の公園づくり、地域コミュニティの再生ができます。

 市民協働の推進は、行政におけるマーケティングともいえます。懇談会や対話を通じて、市民=消費者の行動やニーズを徹底的に理解することから始まり、市民自身が気づいていない価値を市民主体の取り組みを通じて理解してもらいます。市民自らの企画立案・実施による市民サービスの提供を通じて、市民自身の自己実現と一般参加からの高い評価(参加者の喜び)によって、ボランティアは得難い体験や大きな感動を得ることが可能となるのです。

 公園・緑地などを通じて主体的に活躍する市民に対して、様々な感動の機会が提供できる――。これは素晴らしいことです。そして、公園や緑地などには、「市民の自己実現のためのフィールド」という、新たな価値が生まれることになります。

 すると、行政と市民の連携した活動を通じ、行政の新たなブランドが確立され、市民と行政の信頼関係が生まれてきます。「こんなに市民参加を行っている行政の部署はない」「この部署は、市民活動がやりやすい」と市民から評価されることになります。

 こうした価値の創造・連鎖は、当時担当者だった私も予想していなかったものです。おそらく、市民も予想していなかったでしょう。

 公園の運営・維持管理を通じて市民と行政の信頼関係を生むために肝心なのは、「行政がなんでも、やってくれる」ではなく、「市民の自らの活動がやりやすい」という評価を得るということです。あくまで、主役は市民なのです。

 さらに行政は、市民のニーズや要望、公園ボランティアの取り組みなどについて、官民連携事業を推進する上では、指定管理者などの運営事業者に丁寧に引き継いでいくことが大切です。

 指定管理者にもメリットがあります。市民ニーズや要望を理解し、さらに市民主体の事業とそれを主催している公園ボランティアであるアクティブユーザーを引き継ぎ、支援することで初めて、指定管理者の自主事業も充実し、事業の企画内容や集客も含め成功の確率が高くなるからです。

 西東京市は、指定管理者制度導入における公園条例改正の市民説明会、指定管理者の募集・選定における市民参画、指定管理者の導入のおける市民説明会などボランティアも含め市民に対する説明会・市民参画などを丁寧に取り組みました。

 さらに、連載第5回で解説したように、指定管理者に「市民協働担当者」を配置するよう求めています。行政側にも市民協働担当者を配置しているため、その両者が連携することで、市民協働がより促進され、公園における市民による市民のためのイベントや事業が発展していきました。

西東京市の公園における市民協働の体制(資料:原稿を基に日経BP社が作成)

 西東京市では、市民協働推進型の官民連携・指定管理者制度を導入することで、市民協働がより推進され、公園が活用され、公園の利用者やファンを増やすことができました。こうしたベースを構築したからこそ、市民主体の取り組みを進化・発展させていくことができているのです。

 公園における市民主体の取り組みをベースにした官民連携事業は、公園をキーワードにした街の活性化やこれからの公共施設の管理運営、エリアマネジメント、ひいては地方創生において重要な取り組みとなるはずです。

ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/

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