公園など都市のオープンスペースのサステナブルな利活用について考えていくシリーズ「公園が変わる! 街が変わる!」。今回から全3回にわたって、公園と地域をつなぎ、市民が公園で生き生きと活動できるように様々なサポートを行う「パークコーディネーター」の役割に着目します。東京都内の71の公園で指定管理を行い、各公園にパークコーディネーターを派遣しているNPO birthの佐藤留美事務局長が、豊富な事例を交えながら解説します。

 東京都の都立公園では、2006年度から指定管理者による管理が行われており、毎年9月に管理運営状況の評価結果が公開されます。評価は4段階(S、A+、A、B)で示され、最近公表された2018年度の評価結果では、94施設中6施設が最高評価のSを獲得しました。評価は、管理の履行状況、安全管理、法令順守、サービスの利用状況、利用者満足度、行政目的の達成といった観点から行われますが、昨今は特に地域との連携状況に重きが置かれていると感じます。

 その意味で、今回S評価を獲得した6施設のうち、武蔵国分寺公園(国分寺市)、野山北・六道山公園(武蔵村山市)、陵南公園(八王子市)の3施設にパークコーディネーターが配置されていることは、注目すべき点といえるでしょう。これらのパークコーディネーターは、各公園の指定管理者の構成員で、筆者が事務局長を務めるNPO法人NPO birthに所属しています。

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S評価を得た都立武蔵国分寺公園では、パークコーディネーターが常駐し、地域連携によるイベントが次々に開催されている。写真は「Picnic Heaven」の様子。「家族や友人みんなと公園で楽しく過ごす1日」をコンセプトに、30~40代のお父さん世代が企画。DJセレクトのBGMやライブ、ストリートスポーツ体験などが行われ、1日に数千人が来場している(資料・写真:NPO birth)

 公園が様々な地域課題を解決するプラットフォームとして期待され、多様な人々が関わりあう「まちづくりの中核」として機能させるために、パークコーディネーターはこれからの公園運営に欠かせない人材です。

 本コラムでは、全3回にわたってパークコーディネーターの役割をお伝えしていく予定ですが、今回、まずは1回目として、パークコーディネーターの基本的な位置付けや在り方について、解説していきたいと思います。

公園と地域をつなぐパークコーディネーター

 パークコーディネーターは、地域や市民との連携で公園づくりを行う専門スタッフです。公園があることで人々の暮らしが豊かになり、夢を実現するステージとして市民が公園を使いこなすために、様々なサポートを行っています。日本ではまだ珍しい職種ですが、欧米など海外の公園には配置されている例が多く見られます。

 パークコーディネーターが必要となった背景には、市民ニーズの多様化、公園予算の減少、少子高齢化などの社会的課題があります。これらに応えるために、多方面からのリソース、すなわち人材や資金、情報などを集めて調整し、活用するという一連のマネジメントを担う役職が求められるようになったのです。

NPO birthのパークコーディネーターは、地域の様々なリソースを集めて編集し、公園を拠点としたまちづくりを推進する(写真:NPO birth)
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 NPO birthは公園緑地を拠点としたみどりのまちづくりを目指すNPO法人です。現在、都立公園3グループ(17公園)と西東京の市立公園(54公園)の指定管理を行っており、公園グループごとに、担当のパークコーディネーターを2~6名ほど配置しています。都立公園では指定管理者側からの提案で配置していますが、西東京市立公園では市民協働担当者の配置が仕様書において必須条件となっています。

 パークコーディネーターの人件費は指定管理料で賄い、事業費は自主事業収入と指定管理料の一部、協賛金などで賄っています。その業務は、地域や市民と連携してのイベントやセミナーの企画、ボランティア活動の立ち上げや活動支援、学校の総合学習の受け入れ、大学の研究者による社会実験、企業の社会貢献活動、福祉施設との連携、ステークホルダーとの協議会の運営など幅広く、産官学民の様々な主体との連携を創出しています。パークコーディネーターは、公園と地域のポテンシャルを最大限に発揮させ、人々をつなぎ、新たな活動や事業を生み出す役割を果たしているのです。

公園の楽しみ方を提案するフリーペーパー「パークライフマガジンvol.10(企画:NPO法人NPO birth、発行:西武・武蔵野パートナーズ)」より。ボランティアやイベントを市民とともに企画運営する専門スタッフとして、パークコーディネーターを紹介している。URLはhttps://musashinoparks.com/magazine/(資料:NPO birth)
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「あったらいいな」をみんなでつくる公園プロジェクト

 パークコーディネーターの存在が、公園の使い方を変え、地域をも変えている事例を紹介しましょう。武蔵国分寺公園など武蔵野地域の都立公園では、「『あったらいいな』をみんなでつくる公園プロジェクト」が行われています。これは、公園をもっと魅力的な場所にするために、公園に「あったらいいな」とワクワクすることを、みんなで考えてつくり、みんなで楽しむためのプロジェクトです。

 それぞれのやってみたいテーマに賛同した市民が集まり、プロジェクトチームを立ち上げ、企画会議が開かれます。パークコーディネーターは、公園の特性やルールに照らし合わせながら、企画内容を一緒につくり上げていきます。主催者は公園管理者であり、安全管理や占用の許可申請など、市民が苦手とするところをカバーします。

 武蔵国分寺公園ではこれまで、子育てやアートなどをテーマに「Picnic Heaven」や「ぷっぷフェス」、週末のコミュニティカフェ「Sunday Park Cafe」など、5種類のプロジェクトを実施しました。武蔵野公園では市内のまちなかで行われていたイベント「はけのおいしい朝市」を公園に誘致。小学校の跡地に設置された六仙公園では、公園をコミュニティの新たな拠点にしようと、防災や地場産小麦をテーマにしたイベントを開催し、多くの来場者が訪れています。

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「ぷっぷフェス」は、子育て応援イベントとして、ママたちが中心となって企画。掃除や洗濯など日常の動作を遊びに変えて、アトラクションとして親子で楽しめる(都立武蔵国分寺公園)(資料・写真:NPO birth)
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「Sunday Park Cafe」は、まちづくりに携わるベーカリーから、公園でのコミュニティカフェ開催の提案があり実現。春と秋の毎週末に、地元野菜を使った食事を提供し、家族で楽しめるワークショップも実施。地域の居場所ができたことで、緩やかな人のつながりが生まれている(武蔵国分寺公園)(資料・写真:NPO birth)

 公園管理者が、市民との協働でイベントなどを企画するメリットは数え切れないほどあります。例えば、市民のネットワーク力により、多くの協力者や当日の参加者が集まります。運営に必要な資金はプロジェクトチームが協賛金を集めたり、当日の物品や飲食販売の収益で賄ったりできます。

 イベントに参加した人たちが「公園でこんなことができるんだ!」と驚き、「自分もやってみたい」と新たなプロジェクトを提案してくれることは、なによりうれしいことです。

 こうして市民企画が増えると、公園を身近に感じてもらえるようになり、普段の来園者も格段に増えます。すると自動販売機など自主事業の売り上げも伸びて、その収益をまた公園に還元することができるのです。さらに地域とのつながりが深まることで、一方的な苦情・要望が減り、建設的な意見やアイデアが寄せられるようになります。

 市民企画を通して生まれた人と人とのつながりは、地域へ広がり、まちづくりのイベントやコミュニティ・ビジネスの創出など、地域を活性化する事業に展開しています。武蔵国分寺公園の周辺は実際に人口が増え、子育て世代がぐんと多くなりました。

 市民の意欲がエンジンとなってつくり上げられたプロジェクトは、1日のみのイベントにとどまらず、様々な波及効果を生み出しているのです。

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「はけのおいしい朝市」は、小金井市を中心とした地域のカフェやフラワーショップ、料理教室などが市内で定期的に開催しているイベント。パークコーディネーターが実行委員会と協議を重ね、公園での朝市を実現した(都立武蔵野公園)(資料・写真:NPO birth)
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「麦の収穫祭~東久留米麦まつり」は、「柳窪小麦」など地場産穀物の魅力を伝えようと、地元の小麦農家やベーカリーが出店。石臼挽きやわら細工ワークショップなど小麦にちなんだプログラムを実施。駅が遠く、駐車場もない公園に、数千人が来場する地域イベントへと成長した(六仙公園)(資料・写真:NPO birth)

公園はコミュニティを育てるインキュベーター

 「あったらいいな」のプロジェクトを始めた理由は、「公園はなんでも禁止で、行ってもつまらない」「やってみたいことはあるけど、手続きが難しそうだし、許可されそうにない」という市民の声を聞いたからです。市民が主役のはずの公園が、そんな風に思われていては残念です。

 けれど、市民が自分たちで何か企画しよう、イベントを開催しようと思っても、様々なハードルがあるのは事実です。市民には、公園で何ができて何ができないのか、どうすれば実現へ向けて物事を進められるのか、見当がつかないでしょう。一方の管理者側も、個人や任意の団体に、大勢の人々が集まるような企画を任せるのは慎重にならざるを得ません。不慮の事故や事件が起これば、主催者の市民側も管理側も大きな責任を負うことになるからです。

 しかし、公園を生き生きと面白くさせるのは、一般市民のアイデアと行動力です。自分たちで考えた企画を運営することは、とてもクリエーティブでわくわくする体験です。来園者も喜んでくれて、次は一緒にやりたいと仲間が増えていく――。そんなプラスのスパイラルが生まれると、公園の捉え方が変わってきます。公園は「あるもの、使うもの」から「生かすもの、使いこなすもの」となり、そのプロセスで出会った人々のつながりは、やがて地域へとにじみ出していきます。公園というオープンスペースが、コミュニティを醸成するインキュベーターとして機能し、地域社会を豊かに変えていくのです。

 次回は、パークコーディネーターが市民とともに企画をつくり上げていくプロセスについて解説します。

前述の「Picnic Heaven」はKBJと名付けたチームが企画している。イベントをきっかけに仲間が集まり、国分寺駅南口にカフェレストラン「KBJ KITCHEN」を開店した(写真:NPO birth)
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「公園と絵本の日」は、公園に100冊の絵本が寄付されたことをきっかけとしたイベント。絵本を軸に地域の書店、フラワーショップ、ベーカリー、農家などが企画に参加。読み聞かせや絵本ワークショップを開催(都立武蔵国分寺公園)(資料・写真:NPO birth)
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「てのわ市」は「身近にある素敵なものたち」をテーマに、クラフト・食・音楽を楽しむイベント。19年度は地域のアーティストやレストランなど約90の出店者があり、7000人を超える来場者があった(都立武蔵国分寺公園)(資料・写真:NPO birth)
ランドスケープ経営研究会
Landscape and Business Development Association, Japan
2017年10月に一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会が設置した研究会。略称LBA。都市公園法等の改正を受け、Park-PFI等「ランドスケープ経営」に関心のある企業、団体、個人を募り、公園から始まるまちづくりのための公民連携方策の技術・情報交流、研究・提言を通じ、新たな時代の緑とオープンスペースにおけるビジネスモデルを構築することをミッションとする。収益施設のビジネスを得意とする民間事業者と、公園など造園/ランドスケープに関わる業界が集結することによって、多様な主体の協働による新たなまちづくりへの取組みを推進する。公式サイトURLはhttp://www.lba-j.org/

この記事のURL https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/032300072/121600013/