2008年をピークにコミュニティバスの利用者が減少

塩尻市(しおじりし)
長野県中部(中信地方)で松本盆地の南端に位置し、県央部における交通の要衝 となっている。人口は6万6724人(2021年1月1日現在)。塩尻峠と善知鳥峠、鳥 居峠が太平洋と日本海への分水嶺となっている。

 長野県のほぼ中央に位置する塩尻市は、鉄道では東京方面に向かう中央東線と名古屋方面に向かう中央西線および篠ノ井線が集約する分岐点である。道路では国道19号線、20号線、153号線などの主要な幹線が交わる交通の要衝となっている。こうした立地を生かした物流・運輸企業の拠点をはじめ、精密機械や電気機械、一般機械などの企業が工場を構え、さらに明治時代から続いているワイン醸造などの産業が、主に同市の経済を支えている。

 一方で、幹線道路を軸に工業地帯や住居地域が形成されているため、国道19号沿線の郊外にロードサイド店舗の集積が顕著に見られ、JR塩尻駅周辺の中心市街地が空洞化しつつある。また、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計によると、塩尻市の統計人口は2005年の6万8000人をピークとし、2040年には6万人まで減少すると見られている。こうした背景から、他の地方都市と同様、公共交通機関利用者の減少とドライバーの高齢化などが課題となっている。

 そこで、同市は市街地だけではなく農村地域の暮らしも維持し、「まちなかの便利な生活」と「農山村地域のゆとりのある生活」を両立する「コンパクト・プラス・ネットワーク」の都市構築を目指している。今後の高齢化社会において、高齢者を中心とした交通弱者の生活を守り、高齢運転者による事故を防止するため、将来にわたって持続可能な地域交通の構築に取り組んでいる。

 塩尻市の公共交通機関はJR以外にはバスだけだったが、市内で運行していた民間の路線バスが1998年に撤退。代替交通手段として同市は、1999年にコミュニティバス「すてっぷくん」の運行を開始した。コミュニティバスの運行路線は当初6系統だったが、利用者ニーズへの対応などを背景に10路線まで拡大された。しかし、運行開始時より順調に増加傾向を示してきた利用者数も2008年をピークに減少に転じる。2019年の利用者数は、ピーク時から20%減少した約13万5000人となっており、今後もさらなる減少傾向が予測された。

(写真1)塩尻市役所企画政策部官民連携推進室係長の太田幸一氏(撮影:元田光一)

 コミュニティバスの利用者減の要因は、ロードサイド店舗が増加することで自家用車での移動への依存度が高まったことなどに加えて、「コミュニティバスの利便性の低さも、利用者減少の理由の1つになっている」と、塩尻市役所企画政策部官民連携推進室係長の太田幸一氏は語る(写真1)。「路線や時間帯によっては、運行が1時間に1本あるかないか。また、路線やバス停の一部は20年前のままなので時代の変化に追いつけず、誰も乗らないバス停も残っており、歩いた方が早いと思われる路線もある」(太田氏)。

 コミュニティバス利用者の減少傾向が続く一方で、塩尻市が負担する運行委託料は2008年の約6500万円から2019年には約9200万円と年々増加しており、利用者増加に向けた取り組みや運賃増額などの抜本的な検討が急務となってきた(図2)。また、10校・8路線を対象にスクールバスも運行しており、コミュニティバスとの併用など効率的な運行形態への転換も必要とされてきた。

(図2)塩尻市のコミュニティバス利用者数と委託料の推移(資料提供:塩尻市)
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