自動運転用3Dマッピングデータを主婦などが作成

 今回の塩尻市における自動運転実証実験でユニークな点は、子育て中の地元の主婦などによって作成された高精度な3Dマッピングデータを活用したことだ。いわゆる、「地産地消化」の取り組みである。

 民間企業とともに「塩尻市における自動運転技術の実用化に向けた包括連携協定」を締結した塩尻市振興公社は、行政と民間の協働によって塩尻市における都市環境の整備改善、都市機能の向上や地域産業の振興に関する諸事業に取り組む一般財団法人である。その事業の一環として、地域経済の維持に不可欠な労働人口を確保する取り組みがある。

 市内に在住する働く意欲はあるがフルタイムでの就労が難しい主婦や介護者、障がい者などが、好きな時間に好きなだけ働ける、「時短就労者を対象とした自営型テレワーク推進事業」だ。東京や名古屋などの都市圏からの塩尻市振興公社が仕事を受注し、就労希望者に業務委託する(図5)。現在、約500人がワーカーとして登録しており、年間約2億円の売り上げがある。

(図5)塩尻市振興公社の事業概要(資料提供:塩尻市)
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 今回の実証実験では、塩尻市振興公社が市内の複合ビルにワークスペースとして設置したテレワークセンターで、主婦やパソコン初心者の女性が時短労働者として自動運転用の高精度な3Dマッピングデータを作成した(写真4)。地図の製作を発注したアイサンテクノロジーも塩尻市振興公社のクライアントの1つであり、「もともと地図作りの仕事を受注したことがきっかけで、今回の自動運転の実証実験に繋がった」(太田氏)。

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(写真4)塩尻市内にある塩尻市振興公社のテレワークセンター(出所:塩尻市)

 MaaSの仕組みを実装していくにあたっては、今後もさまざまなサポートやオペレーションが必要になってくる。塩尻市ではそれらの事業を、市外の企業ではなく地元の事業者や住民にも依頼したいと考えている。それによって、持続性が確保できる体制を構築することも、今回の実証実験の目的の1つであるという。

 「塩尻市振興公社で育ったワーカーが、自治体や学校のデジタル化を担う人材としても成長してもらいたい。地域の課題を自治体と市民が一体となって解決する。そうしたビジョンを作っていきたい」(太田氏)としている。