豊明市では60カ所のエリアスポンサーが集まる

(写真2)エリアスポンサーの一覧は、市役所などに掲示される(撮影:元田光一)
(写真2)エリアスポンサーの一覧は、市役所などに掲示される(撮影:元田光一)
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 豊明市で運行している「チョイソコとよあけ」を例にとると、2021年1月時点で約60カ所のエリアスポンサーを集めている(写真2)。サービス開始の当初からそれだけの数を集めるのは難しい。サービスを継続することで徐々にエリアスポンサーが増えていくが、アイシン・エイ・ダブリュ ビジネスプロモーション部部長兼アイシン精機イノベーションセンター主査の加藤博巳氏(写真3)によると、「例えば自治体から70万円/月を負担してもらう場合、最初は全額負担してもらう。そして、スポンサーが20万円くらい集まったら、以降の月は50万円/月を負担してもらうことになる」という。

 エリアスポンサーからの収入は、運営費への充当ではなくサービス向上のために使うことも想定できる。「例えば月曜から金曜まで運行している場合、エリアスポンサーの増加によって増えた収入を土曜日の運行に充てるといった選択肢も提案している」(加藤氏)。

 また、アイシン精機が豊明市での実証実験で力を入れているのが、到着予測時間の精度向上だ。実際に到着した時間をビッグデータで蓄積し、それらのデータを時間や曜日、天気、運転手の違いなどの属性を元に分析して到着予測時間の精度を上げる実験をしている。一方、予約受付センターでは、人間のオペレーターが利用者の目的地を見て配車を判断している(図3)。

 例えば、病院に寄ってから駅に行く予約をした利用者に対しては、オペレーターは利用者が病院に寄った後に電車に乗ることを前提に、少し早めに駅に到着できる車を選ぶことがある。病院も歯科医院や整形外科医院といった事前予約が必要な診療科と、そうではない診療科などを考慮しながら配車の時間を推薦しているという。「こうしたオペレーターの対応は、3年間の運用で積み上げたノウハウになっている」(加藤氏)。

 地域のゴミ集積所を停留所として利用しているのも、「チョイソコ」の工夫の1つだ(写真4)。ゴミ集積所は基本的に自治体か自治会が管理しているので、利用許可が取りやすい。「公道に停留所の目印を立てる場合は、警察への届け出が必要になる。ゴミ集積所ならばパネルを貼り付けるだけ。停留所は住民からの意見を聞いて場所を変えていくので、そういった変化にも対応しやすい」(加藤氏)。

(図3)オペーレーターが利用者の状況に応じて配車を判断(資料提供:アイシン精機)
(図3)オペーレーターが利用者の状況に応じて配車を判断(資料提供:アイシン精機)
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(写真3)アイシン・エイ・ダブリュ ビジネスプロモーション部部長兼アイシン精機 イノベーションセンター主査の加藤博巳氏(撮影:元田光一)
(写真3)アイシン・エイ・ダブリュ ビジネスプロモーション部部長兼アイシン精機 イノベーションセンター主査の加藤博巳氏(撮影:元田光一)
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(写真4)ゴミ集積所に設置された停留所(撮影:元田光一)
(写真4)ゴミ集積所に設置された停留所(撮影:元田光一)
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地元のタクシー会社やバス会社とも親和性を高める

 こうしたデマンド型交通サービスの運用コストには、燃料費や通信費、オペレーターの人件費などもあるが、最も負担が大きいのが車両の運行委託費だ。ほとんどの自治体が、車両の運行を地元のタクシー会社に委託している。「チョイソコ」のようなデマンド型交通サービスは、タクシー会社にとって競合する存在と見られることが多いが、実際の事業モデルは必ずしもそうではない。

 地元タクシー会社への「チョイソコ」の運行委託にはいろいろな形態があるが、例えば、平日の9~16時まで7時間車両を運行する場合、1日当たりの運行収入を2万円/台と設定・保証する。例えば乗車運賃が200円の場合、1日に10人が乗車したら2000円の現金収入がタクシー会社に発生するが、アイシン精機からも1万8000円が支払われる。すなわち、乗客数にかかわらず平日に20日運行すれば、月40万円の収入が必ず保証されることになる。ほかにも、搭乗実績に応じて月100人以上乗ったら1時間あたり〇円、101~150人なら〇円などといった従量制を採用する自治体もあるという。

 さらに、タクシーは「チョイソコ」の運行時間帯以外は、通常の営業ができる。「タクシーが最も利用される朝や夕方、夜に営業できる。コロナ禍の影響で収入が厳しくなってきたタクシー会社としても、この条件を出せば興味を示してくれるところが多い」(加藤氏)。

 「チョイソコ」は、タクシー会社だけでなくバス会社とも親和性を高めている。例えば、ある自治体では地元バス会社の運行管理者が「チョイソコ」のオペレーションも引き受けている。これに対しアイシン精機はバス会社にオペレーター委託費を支払い、共存を目指している。。