人が出掛けたいと思う動機をつくる

 デマンド型交通サービスも利用者が増えれば1人当たりの輸送コストも下がっていくが、人は必要がなければ移動しない。一方で、高齢者の生活形態や活動形態も変化し、以前と比べて老後も健康で、興味があることは積極的に取り入れるようになった。そこで、アイシン精機では買い物や通院だけでなく、できるだけ利用者に出掛けたいと思わせるイベントを告知している。豊明市の場合はもともと高齢者が利用対象となっていたので、市の健康長寿課などと一緒に高齢者向けイベントの開催をPRし、イベント開催地の近くに停留所を設置した。

 さらに、アイシン精機は独自イベントを企画するなどコトづくりに力を入れている。独自企画は、アイシン精機のスタッフが豊明市周辺をリサーチして利用者に対してアンケートを行い、人気が高い企画から実現させている(図4)。

(図4)アイシン精機が独自に企画したイベント例(資料提供:アイシン精機)
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 こうした企画を、「チョイソコ通信」というニュースレターにして会員に発送している。最初はメールで配信したが、一度開封したメールは見返さない。そのため、コストはかかるが自治体ごとに紙に印刷して郵送している。「冷蔵庫などに貼ってもらって、今日は何があるかなあと見てもらえるようにマグネットもつくった。封筒には協賛会社の広告も入れられる」(加藤氏)。

移動手段の提供だけでなく新たなソリューションも創出

 アイシン精機は今後、移動手段の提供だけでなく新たな価値を生み出す自治体向け事業を創出しようとしている。例えば、「チョイソコ」の車両を活用したリアルタイムでのデータ収集だ。豊明市では車両に付けたさまざまなセンサーを使って、道路の破損などの路面情報を検知している。さらに、カメラや大気汚染センサーなども使い、道路標識の劣化や二酸化炭素濃度の検出までを行っている。2021年度からは塾に通う児童を送迎したり、「チョイソコ」が営業していない時間帯を使った、農作物集荷サービスの実証実験などを行おうとしている。

 その他にも、オンデマンド交通だからこそ可能になるサービスもあるという。「医療施設が行う送迎は病院と自宅の間しか運行できない。チョイソコならば病院でリハビリをした後にスーパーやカラオケなどに連れて行くなど、高齢者の行動範囲を広げてあげることもできる」(加藤氏)。

 さらに、異業種企業との連携によるサービスの創出としてトヨタファイナンスとの協業で、小学生が「チョイソコ」を利用した際に顔認証システムによって本人確認を行い、その記録を両親に送信するような試みも計画している。