MaaS導入に先行し、乗り合いタクシーなどラストワンマイル対策も

 日立市では、MaaS導入に先行して既に様々なラストワンマイル対策を進めている。

 同市の内陸部には、日立製作所の工場に勤務する従業員の社宅として、昭和50年代に13の団地が作られている。世代交代が行われなかったことから、現在これらの団地に残っているのはほとんどが2人、もしくは1人暮らしの高齢者である。以前はここから通勤する人も多かったが、今では住民の外出目的のほとんどがスーパーでの買い物か通院になっている。こういった地域に対しては、公共交通シップ事業として「地域住民」「交通事業者」「日立市」の3者がパートナー協定を結び、いくつかのラストワンマイル対策を進めている(図2)。

(図2)日立市の公共交通パートナーシップ事業(出所:日立市)
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 また、団地地区よりもさらに内陸に入った過疎化が進む地域では、郊外型公共交通導入エリアとして10年ほど前から乗り合いタクシーが運行されている。乗り合いタクシーも長く続けていると、導入前には想定できなかった様々な課題が見えてきた。

 例えば、病院や買い物の移動については、他人と一緒には乗りたくないという声があるという。日立市都市建設部都市政策課長の長山靖氏(写真6)は、「自分の病気が、見ず知らずの他人に知られてしまう可能性がある。また、買い物で利用する際も、バスのように広ければ気にならないが、乗用車だと買い物したものが見られてしまうのが嫌だという声もあった」と説明する。

 ほかにも、乗り合いタクシーの利用は事前に予約が必要だが、同市都市政策副参事兼地域交通係長の小林利行氏(写真7)は、「病院などの利用では、往路はいいが、復路は診察終了時間が分からないので予約がしにくいという声もあった」と話す。

(写真6)日立市都市建設部都市政策課長の長山靖氏
(写真7)日立市都市政策副参事兼地域交通係長の小林利行氏
(写真8)茨城大学研究・産学連携機構准教授の酒井宗寿氏
(写真:3枚とも元田光一)

 今回のMaaS実証実験に関しても、実際に運用してみると様々な課題が見えてきそうだ。今後の日立市の取り組みの中で想定される、心理面の課題や法的な課題、知的財産権の問題などについては、日立市新モビリティ協議会の中で茨城大学が検証する。

 茨城大学研究・産学連携機構准教授の酒井宗寿氏(写真8)は、「MaaSの仕組みが実際に社会に導入される際には、知的財産権の侵害や独占禁止法に抵触しないかなども考慮しなければならない。狭い空間で他人同士が乗り合わせる不安に対して、心理学的な面からどう解決策を導けるのかについても、学内の様々な識者が協力していろいろとソリューションを提供していたい」と実証実験で検証すべき内容を説明する。