保安要員が必要になるかどうかは今後の検討課題

 セッションの締めくくりとして、名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授の中川瑠華氏がモデレータとなり、「ゆっくり自動運転」など限定地域における無人移動サービスを社会実装する場合の課題について、登壇者によるディスカッションが行われた(写真)。

(写真)パネルディスカッション「限定地域における無人移動サービスを社会実装する場合の課題」の様子(写真:元田光一)
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 限定地域での無人移動サービスについては、2018年4月に政府が決定した「自動運転に係る制度整備大綱」で、当面は実証実験の枠組みを事業化の際にも利用するという方針が示されている。例えば、自動車の技術に関する道路運送車両法関係に関しては、一部の保安基準を適用しない基準緩和制度が使われる。道路交通法関係では、遠隔型自動運転走行システムの公道実証実験のためのガイドラインが設けられ、所轄警察署長による道路使用許可を活用していくことになっている。

 中川氏は、こうした実証実験の枠組みを事業化に利用した際の問題点に触れ、道路運送車両法関係では名古屋大学COIの実証実験においても問題が生じたことがあると話す。「適用する必要のない保安基準の洗い出しと、統一基準の策定が必要と考えている」(中川氏)。

 一方、道路交通法関係では実証実験に関するガイドラインで、有人サービスの場合は運転免許証を持っている人が必要で、常に監視を行い必要な場合は操作を行う必要があると書かれている。この点については、「事業化に転用した場合も車両保安員に運転免許証が必要で、常時監視義務や操作履行義務も負うのであれば、タクシーやバスと変わらないし、事業として合理性があるのかが問題になってくる」(中川氏)。

 この意見に対して警察庁 交通局 交通企画課 理事官の渋谷秀悦氏は、「常時監視義務や緊急時の操作履行義務については、今後技術が進んでいけば自動運転が担っていくことが見込まれている。そうなった時に、本当に保安要員が必要になるかどうかは今後の検討課題になる」と話す。

 赤木氏は「ゆっくり自動運転」の導入に関して触れ、現時点でのロードマップとしては、当初は監視員が乗車した状態でサービスを開始することを想定していると言う。「利用する人も、自動運転は初めてなので、特に高齢者などは人間によるコミュニケーションが必要になる。技術的にも、安全性確保のためには長い実験時間が必要なので、サービスイン当初は監視員を置くことが必要」(赤木氏)。

 一方で中山氏は、地域における自動運転のニーズを考えると運転手不足は深刻であり、5年後には多くの路線バスが運行できなくなるといった課題を提起。レベル4の自動運転は遠隔操作型ではなく、遠隔監視型での無人移動サービスの社会実装を進めていくことが必要とする。

 「遠隔操作型は、遠隔操作者がドライバーになるため当然運転免許証が必要である。一方、遠隔監視型はシステムが常に周辺を監視しており、いざとなったら自動的に止まらせる。遠隔監視者は、なにか異常があった場合だけ確認するような運用方法である。人と自動車の対応を、1対1から1対nに移行しない限り、日本の人口減少、高齢化、運転者不足には対応できない」(中山氏)という。