九州の西端・長崎県の南部に位置する長崎市は、遣唐使の派遣拠点となるなど古くから海外と交流があり、日本の「窓」として海外から様々な文化が入ってきた。それらの有形無形の文化が今では観光資産となり、日本有数の観光地として多くの観光客が訪れている。その長崎市が、新型コロナウイルス感染症の影響によって激減した観光客に再び長崎観光を楽しんでもらおうと取り入れたのが、ゼンリンが開発した、長崎観光をバスや路面電車といった公共交通機関での移動で支援するMaaSサービスだ。

観光客の回復を目指し、モビリティと観光を結びつけたサービスを提供

 長崎市は開港以来440年以上の歴史を有する国際交流のまちであり、江戸時代にも国内外を問わず多くの人々が訪れていた。そうした国際交流によって生まれた様々な文化や風習が、今では長崎市の貴重な観光資源となっている。一方で、2019年には約692万人だった観光客も、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年には63%減の約256万人になった。

(図1)2022年9月に開業予定の西九州新幹線(出所:JR九州)
(図1)2022年9月に開業予定の西九州新幹線(出所:JR九州)

 そうしたコロナ禍による落ち込みを回復させる、ビッグイベントがある。それが、2022年9月に予定されている「西九州新幹線」の部分開業だ(図1)。佐賀県の武雄温泉駅と長崎駅間(約66km)を結ぶ路線の開通によって、県外から鉄道で訪れる観光客の回復に期待している。

 人口約40万人(2022年5月1日現在)の長崎市は、多様な観光スポットが集約しているコンパクトシティだ。特にグラバー園や大浦天主堂、出島、眼鏡橋、中華街などといった有名な観光スポットは、時間をかければ歩いて回ることも可能な位置関係にある(図2)。バスや路面電車などの公共交通機関を利用して回れば、それぞれのスポットをよりじっくり楽しめる。

(図2)出島(写真上)、中華街(同下左)、大浦天主堂(同下右)などの有名な観光スポットは、比較的近くにあつまっている(地図:ゼンリンのアプリより切り出して作成、写真:元田光一)
(図2)出島(写真上)、中華街(同下左)、大浦天主堂(同下右)などの有名な観光スポットは、比較的近くにあつまっている(地図:ゼンリンのアプリより切り出して作成、写真:元田光一)
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 ところが、長崎市内の公共交通機関には複数の路線があり複雑なため、観光客にとっては目的地に行くための移動手段が分かりにくい(写真1)。

(写真1)長崎市での観光スポット巡りに欠かせない路面電車や路線バスは複数の路線があり、乗り換えも必要になるなど観光客には分かりにくい(写真:元田光一)
(写真1)長崎市での観光スポット巡りに欠かせない路面電車や路線バスは複数の路線があり、乗り換えも必要になるなど観光客には分かりにくい(写真:元田光一)
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(写真2)長崎市企画財政部長崎創生推進室室長の久保洋氏(写真:元田光一)
(写真2)長崎市企画財政部長崎創生推進室室長の久保洋氏(写真:元田光一)

 長崎市企画財政部長崎創生推進室室長の久保洋氏は、「これまでも、パンフレットなどでの路線案内には取り組んできたが、やはり外から来られた方に、『路面電車ってどこまで行けるのですか』とか、『何番の電車に乗ったらいいのですか』といった質問を受けることが多い。そこを、デジタルの力で解決したいと思っていた」と語る(写真2)。

 そうした課題を抱えていた長崎市が実証実験を開始したのが、ゼンリンから提案のあった観光型MaaSアプリ「STLOCAL(ストローカル)」だ。