免許証を自主返納した高齢者などの交通弱者を救うために、日本各地で取り組まれているオンデマンド交通などのさまざまなモビリティサービスは、主に自治体が運行主体となっている。売り上げは利用者からの運賃収入が主となるので、運用維持のための行政負担が大きく、その採算性に課題があった。愛知県豊明市が導入した「チョイソコとよあけ」は、愛知県を拠点する民間企業のアイシン精機が事業主体となり、自治体が抱えるモビリティサービスの事業継続性という課題を解決しようとしているのが特徴だ。

 愛知県豊明市は名古屋市に隣接し、同市のベッドタウンとして発展してきた人口7万人弱の都市である。高齢化(65歳以上)率は25.8%(2020年5月1日現在)で、愛知県全体の高齢化率を若干超えている程度だが、2009年の12.1%から2倍以上伸びるなど、年を追って高齢化率が高まっている。

2つの交通不便地域を対象に送迎サービス

(図1)豊明市の2つの交通不便地域(色付きのエリア)(資料提供:アイシン精機)
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(写真1)サービスを提供する車両には、8人が乗客として利用できるハイエースを使用(写真提供:アイシン精機)
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 こうした中、豊明市内の沓掛エリアと仙人塚・間米エリアと呼ばれる2つの交通不便地域を対象に、オンデマンドで複数の乗客を送迎するサービス「チョイソコとよあけ」が、道路運送法第21条第2項に基づく有償での実証実験を2019年4月から開始している(図1)。8人が乗客として利用できるタクシー用ワゴン(写真1)を2台使い、利用料金は1人1回200円(税込)。現金のほかに交通系ICカードやクレジットカードの利用も可能。利用者がエリアを跨いだ行き先を希望する場合は、計400円を払って2台を乗り継ぐことになる。

 サービスを利用できる会員資格は豊明市民に限定される。交通不便地域に関しては有償運行開始当初は18歳以上だったが、同年10月からは18歳未満の会員登録も認められた。なお、交通不便地域ではないエリアの住民の会員資格は、65歳以上に限定されている。

 利用者からの乗車受付はスマートフォンでの対応も可能であるが、利用者が高齢であることに加えて電話の方が柔軟に時間調整の交渉ができるという利点から、すべて電話で対応している(図2)。

(図2)「チョイソコとよあけ」が提供するオンデマンド交通サービスの仕組み(資料提供:アイシン精機)
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