患者の状態や環境に合わせたサポートが必要

 高齢者の「理解力」という課題も浮き彫りになった。今回の参加者は当初の想定よりも年齢層が高く、耳が遠かったり認知症があったりでオンライン診療についての事前説明がなかなか理解してもらえなかったという。こうしたことから、高齢者向けのオンライン診療では、看護師がきっちりと横についてサポートする仕組みが非常に重要であると考えられる。

 看護師の確保も今後の課題の1つとなっている。健康福祉部健康医療課副参事の西崎公康氏は、「地元のことをよく知っている地域の看護師が、こういった事業に参画できないか模索している」という。

 そういった人材不足の課題解決策の1つとして浜松市が期待しているのが、コミュニティナースの活用だ。コミュニティナースは、医療施設や福祉施設、訪問看護に従事する看護師と異なり、医療に関わる知識を生かして地域の中で住民とパートナーシップを形成しながら活動する医療人材である。「コミュニティナースについては、今年度は活用を検証し、来年度以降に確保していきたいと考えている」(西崎氏)。

 オンライン診療については、制度面の課題が見えてきた。対面診療と同じように診療の前後で準備が必要となるが、現状の医療制度ではオンライン診療は対面診療よりも診療報酬点数が低い。医師の負担も考えると、中山間地域で医師が不足しているからといってすべてをオンライン診療に置き換えるのではなく、数回のうち1回だけオンライン診療にするといった検討も必要だという。

 こうしたことから、浜松市ではオンライン診療の仕組みについて、どういう患者やシーンなら機能するのかなどについても検討をしている。2021年度も医療MaaSの実証を続けていくにあたっては、「患者の年齢や疾病の種類、医療機関の状況や通信環境の整備などによって、大きく4つのパターンのオンライン診療について検証することを予定している」(西崎氏)。

 例えば、通信環境が整っていて患者への補助も不要ならば、自宅でオンライン診療を受けることも可能だ(図4)。一方、過疎地域だと高齢者が多くて通信環境が整っていないケースも多い。その場合は、コミュニティナースが患者の自宅に行って支援しながらオンライン診療を実施する。

(図4)中山間地域におけるオンライン診療の可能性(資料提供:浜松市)
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 家に人を入れたくない場合は、今回の実証実験のように移動診療車を活用してコミュニティナースが患者の家の近くまで行き、車の中で支援しながらオンライン診療を実施する。他にも、地域外の大きな医療施設と連携し、患者が近所のクリニックに出向いて外部医師によるオンライン診療を受診したり、地域の集会所に医療スタッフが出向いて、クリニックにいる医師がオンライン診療を行う巡回診療所などを試すことも計画している。